話して教わる。 | 金井勇太オフィシャルブログ by Ameba

話して教わる。

もう半年以上前になりますが今年1月、母校の中学校に講演みたいなものをしに行きました。


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というのは、自分が一年生時に経験した「職場体験」が今は少し趣を変えて、地元で働く大人を学校に呼んで小一時間ほど講演してもらうという「仕事の話を聞く会」なるものが毎年企画されているのです。

そこで7~8人呼ばれるゲストの1人として、卒業生でもあり少しばかり学生達に興味を持ってもらえる仕事をしているという事から声を掛けて頂いたわけでございます。

最初このお話を頂いた時は、いやいやいや自分こそまだまだ勉強中ですからそんな大層な!…なんて思ってもみたんですが、不肖ながらなにか母校のために役に立てるのならばとお受けしたわけです。
それにこういう前向きな形でまた母校の廊下を歩ける事が、心底楽しみで嬉しい気持ちの方が大きかったというのもありました。

さて教壇に立って「仕事」というテーマで子供たちに何を話してあげられるだろうと何週間も前から考えてみても、講演などまともにやった事が無いので易々とまとまるわけもなく。

ただ、今まで経験してこれた俳優という仕事の魅力を語りながら、そこからこれからの未来への明るい想像なり、夢の再確認なり、仕事への憧れなり、得体の知れない世界への興味みたいなものがワクワクと透けて感じてくれればいいなという心持ちだけは固まっていました。

そして自分が13才の時はどんな話が面白かっただろうか、また、そこから13年経った今でもまだ覚えている先生や友達との話はなんだろうかなんて訥々と考えていると、ポツリポツリ話したい事が浮かんでくるんですね。

そんなこんなでいざ!当日授業が始まってみると、司会役の2人の子が始まりの挨拶や僕の紹介など、プリントを見ながらぎこちないながらも一生懸命に進行してくれるのです。
早速そこで感動してしまってもうなんかニコニコが止まらなくなってしまい(笑)



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僕も少し緊張していましたが、彼らからしてみると、いつもの自分たちの教室に「知らない大人」が入ってくるというのは、自分たちのテリトリーに「異物」が侵入してくるのに近いようなものだろうから(少なくとも僕が中学生の頃はそうでした)むしろ彼らの方が緊張しているわけです。

それを見渡しているとなんだか微笑ましくなって、出来るだけ彼らの目線に近いところから話をしよう、し合おうという気持ちになって、とても穏やかに時間を過ごせたのです。

子供の頃から今に至る人生のターニングポイントを一通り話した後、彼らになにか明確な道筋を示そう、というよりは、今出来る身近な小さな事を意識してもらいたいなと思い、2つだけお願いをしました。
「出来るだけ沢山恥ずかしい思いをして欲しい」のと、
「なんで勉強しなくちゃいけないんだ、という事を色々な大人に聞いて欲しい」の2つ。

何か行動をした上でかいた恥というのは良い栄養だなと思うのです。同じように恥をかいてしまった他人に対して気持ちをわかってあげられるような人がどんどん周りに増えれば、大胆で活発な発想がのびのび育つ環境ってすぐ作れるんじゃないかなという想いから。

個人的には芝居するのがすごく恥ずかしい時期もありましたが、レンズの前では恥をかく事を求められているんだと思えるようになってからは、相手のために芝居の汲み取り方、受け方を丁寧にしようと意識したり、自分の中でリアルのねじが一本締まった気がするからです。

もう1つ、色々な大人に聞いてほしいというのは、これは別に「なんで勉強しなくちゃいけないんだ」という質問に限るわけではありませんが、縦(世代の違う人)の人と沢山話をして欲しいというのが大きいです。

横の人とは友達になるのも易しく気を遣わないでも話は出来ますが、縦の人と話す事は横の人と同じかそれ以上に自然と勉強になると思うからです。
なぜ勉強になるかというと経験談はもちろんの事、自分の事をはっきりと否定してくれるから。同世代や友達同士だとなあなあで済んでしまう事が多いですが、世代が違うとそうはいきません。
否定されるって悔しい。
若いって悔しいと思う時期が必ず来るその時に逃げないで乗り越えて欲しいと遠回しに願うのです。
だから大人や年上の人と話す事に慣れるために、誰にでも聞けるきっかけの質問の1つとして、「なんで勉強しなきゃいけないんですか」とぶつけて欲しい。

大人も子供からのその問いに希望を乗せて返せるようであって欲しいというのもあります。答えに迷ってる大人も沢山いるだろうがそこは遠慮なく情けないと思って欲しい。

ちなみに僕だったらその質問になんて答えるかと言うと、夢を叶えたいからと答えます。
夢は幸せになる事です。
(僕が何をもって幸せとするかはこっ恥ずかしいので書きまへん。子供たちには恥ずかしながら話しましたが(笑))

僕にとっての仕事とは夢を叶えるための手段で、仕事のために仕事をしているわけではないです。
僕の持つ「野望」は仕事に直結していますが、「夢」は仕事とは別のところにあります。

だから夢を叶えるための仕事が出来るように勉強したと言います。そしてまだ勉強中とも。


とまあこんな自分でも無事(?)に講演を終えられたのです(笑)

それにしても自分の考えてる事をわかりやすく伝えるために一旦掘り下げてからシンプルにまとめる作業というのは本当に勉強になりました。


相手が子供というのに限らず、例えば故黒澤明監督はこう仰っていました。

「難しく言うのがカッコいいように思うのは,違うんじゃないか,と僕は思うんだ.本当に理解していればこそ,簡略に平明に語れるんでね.こねくり回して,斜に構えてっていうのは説明してるというより,自己満足なんじゃないの」

ごもっとも。


子供たちの反応もつくづく嘘が無く、興味を持つ目、緊張している目、つまらない話を聞かされている目と表情がコロコロと変わっていくのがなんだかとても愛おしくて心が洗われる思いでした。

長くなりましたが、最後に子供たちから挙がった質問をいくつか紹介して終わります。

「女優さんはみんないい人ですか?」

「芸能人になるのに身長や家柄は関係ありますか?」

「生活は成り立ちますか?」



どう答えたかはご想像にお任せします(笑)