「君に届け」 2
漫画の原作を実写化するにあたって、難しい表現の一つに「人の距離感」があると思います。
漫画、映画、どちらもフレーム(コマ)の中で世界を作っていくのは変わりませんが、それが静止画、動画という話になると一筋縄では行かないんですなこれが!!
爽子と風早の距離感は言わずもがな。この二人の間から生まれる想いの力がこの映画の一番の力だと思いますが、撮影をしていて特に難しいと感じたのが爽子に対するリアクションの仕方。
原作を読んでいると自然と爽子や風早の気持ちになって物語に入っていくのが普通ですが、ちょっと視点を替えて、クラスメイトの気持ちになってみると…
「悪気は無いんだけれども避けてしまう」、「敵意は持ってないんだけれどなんか貞子みたいで怖いし…」
簡単に典型を挙げるとこんな感じでしょうか。
これを生身の人間が演じるとさあさあ難しインダヨー!!!
カメラから見た、爽子に対する体の向き。
爽子が発言した時、した後のびっくりのニュアンス。
好奇心はあるんだけれど……近寄れない感じ。
etc…
といった事をですね、自分一人じゃなくてクラス全体として周りとのバランスを考えながら芝居をしていくわけです。
誰か一人、(たとえそんなつもりで芝居していなくても)まばたきや俯きが爽子に対しての軽蔑や嫌悪感のようにカメラに映ってしまうと、風早の爽子への好意にもリアルを感じなくなってしまうかも知れないんです。
こんなに難しい学生役は初めてかもしれないというくらい注意深くやっていましたね。
それもすべて爽子という人間の溢れる魅力を実写でも存分に伝えたい、という熊澤監督や多部未華子さんはじめ現場に関わった全ての人の想いの表れだったんじゃないかと思います。
というわけでまずはこの映画の見所として、「人の距離感」を大事に撮りましたよ!という事が伝わればと思います。