華の金曜日。今日も遅出の仕事。
行きたくないなあ、と思いながら、
朝、台所に立った。

ゴーヤが少ししなびている。
じゃがいもには芽が出ている。
捨てるほどではない。
よし、茹でよう。
少し傷んだところや
芽の出たところをカットしていく。
料理というほどのことではない。

素材を眺めながら、
なるべくそのものの良さが残るようにと
思って手を動かした。

ゴーヤは塩もみし茹でておけば、サラダにできる。
佃煮にしてもいい。
じゃがいもは、芽を除いて皮ごと茹でてみる。
ホクホクと
気持ちよく湯気を立てている。
明日、じゃがバターにしよう。

そうそう、バターがあった。
冷蔵庫の奥から出てきた個包装のバター。

ずっと冷蔵庫に入っているし、
賞味期限もまだ先のはず。
と思っていた。
ところが、少し前に切れている!

なんとまあ。オーマイゴッド(古っ(⁠・⁠o⁠・⁠;⁠)!)
「まだ先」と思っていたものが、
いつの間にか過ぎていた。ショックを受ける。

時間というものは、音もなく過ぎていく。
待ってくれない。薄情だ。
こうやって
明日やろうと思っていることも、
そのうちやろうと思っていることも
気がつけば、ずいぶん先へ行ってしまうのかも
しれない。そんな事を思う。

だから今日は、今日できることを
しておこうと思った。

茹でる。
それだけのことなのに、少し気持ちが落ち着いた。
マインドフルネス。

素材を無理に変えようとするのではなく
今あるものを見て、状況を見て
できるだけ美味しくなるように
できるだけ自然に引き立つようにしておく。

人も、そうなのかもしれない。
誰かに褒められるために、
自分を作らなくてもいい。
誰かに評価されるために、
別の人間にならなくてもいい。
その人には、その人の持ち味があるのだから。

そんなことを考えていたら、
ふと、言葉が浮かんだ。

人の評価で自分を作るな。

そうだな、と思った。
仕事では
役に立ったか。認められたか。ばかり。

けれど、そればかりを気にしていたら、
自分がなくなってしまう。

私は今、余白が欲しい。
何か大きなことをしたいというより、
時間を、自分のために使いたい。

今日の私は、ゴーヤとじゃがいもを茹でた。
明日の私が少し楽になるように。
それくらいのことでいいのだと思う。

人生も、案外そういうものなのかもしれない。
今日できることを、今日少しだけしておく。
そして、明日の自分に余白を残しておく。
人の評価ではなく、自分の手で、
自分の人生を整えていく。

しなびたゴーヤと
芽の出たジャガイモに教わったこと。