ふと目にした昭和ドラマ。


あなたの魅力に惹き込まれたのは、
ほんの一瞬だった。
それだけで、
私は自分がどの時代にいるのかさえ
分からなくなった。

まだあなたが生きていた頃へ、
私はタイムスリップしていた。

そんな或日。あなたの夢を見た。

ある時は、お芝居の講義。
言葉は多くないのに、
一つひとつが胸の奥に残った。
演じている時より、ずっと寡黙な感じだった。

ある時は、お芝居。
はしゃぐように、全身で演じてみせる。
けれど普段は、静かな人だった。

そして、ある時。
あなたは船に乗って現れた。

港の空気は澄んでいて、
波の音だけが聞こえていた。
あなたは私の前に立ち、
封筒を差し出した。
中には、五千円札が何枚も入っていた。

「これは……私は……
受け取れません」

そう言う私に、
あなたは少し間をおいて、
私の顔を覗き込み、
真剣な顔で、笑った。

「せっかく出会えたんだから」

それだけを残して、
船は静かに離れていった。

夢は、そこで終わる。

けれど、
目が覚めて、私は気づく。
あの頃の私は、
苦しい現実と向き合っていた。
戦い疲れていた、
という言葉が一番近い。

夢から覚めて、ようやく分かった。
あれは、お金ではなかった。
自分の価値を、受け取れ
というメッセージだったのだと。

失くしていたものを、
もう一度、自分の手に戻すこと。

言葉を書くこと。
人情を、信じること。
たくさん、笑うこと。

私の時間は、
そこからまた、動き出した。

あなたの講義も、お芝居も、
私の琴線に触れ、
今も、離れない。