苺楓は、目を覚ますと、合わせ鏡を手に持って、庭にいた。繁造から聞いたことを忘れずに合わせ鏡をハンカチで包、リュックに入れた。ふと、横を見ると、父の彰ニに似た女性が苺楓を見ていた。そして、微笑むと苺楓に声を掛けた。

「こんにちは。何か御用事ですか?」

「あの、みつゐさんですか?」

「えっ?そうですが、貴女は何方?」

「私は苺楓です。信じられないかもしれないけど、

1997年から来たんです。みつゐさんの孫です。

みつゐさんに逢いにきました。」

「そうかい。私に逢いに来たのかい。不思議な話だけど、嬉しいね。ところでどうやって来たんだい?」

「爺ちゃんから貰ったこの合わせ鏡からです。」

「あら、かわいい鏡ね。取り敢えず家の中に入りなさい。これからお昼ご飯を作るから一緒に食べましょう。」

「ありがとうございます。」

みつゐと苺楓は、家にはいった。すると、家の中には

父の彰ニと叔母の玲美、祖父の繁造がいた。三人は、苺楓を見た。みつゐは、三人に苺楓の事を不信がらせないように

「この子は、苺楓ちゃん。私の友人のお子さんで、

2〜3日預かることになったから、仲良くしてあげてちょうだい。」

と紹介した。苺楓は、慌てて挨拶をした。

「苺楓です。宜しくお願いします。」

「さあ、苺楓ちゃん。ご飯を作るから手伝ってくれるかしら?」

「はい、お手伝いさせて頂きます。」

二人は、キッチンに入ると昼食の準備を始めた。

 繁造の家は、婦人服を作る仕事をしていて、みつゐと玲美は、一緒に仕事をしていた。彰ニは、サラリーマンをしていて、会社に勤めているが、今日は有休を家にいたのであった。

昔の家と今の家の違う所は、居間の外にに縁側があった。苺楓が生まれた時の写真には、この縁側がなかった。

 昼食の準備が出来ると、テーブルを皆で囲んだ。

みつゐの田舎料理ののっぺと漬物、味噌汁、焼き魚、白飯を食べた。のっぺは、繁造の田舎に連れて行って貰った時に初めて食べた。初めて料理の名前をします聞いた時、のっぺらぼうの略かと思った話をしたら、

皆は、?な顔をしたが、笑い出した。苺楓は、久しぶりに笑いのある食事が嬉しかった。いつも和世、彰ニ、繁造、私の四人で食卓を囲んでも無言で食べていたからだ。

 昼食後、苺楓はみつゐの仕事場を見せてもらい、

簡単な作業を手伝わせてもらった。みつゐは、左手が事故の後遺症で痺れがあり、思うように動かない事を苺楓に教えてくれた。また、人からも裏切られて、メンタルも壊れている事を苺に話してくれた。

苺楓は、明日には元の時代に戻らなければならない。

みつゐを助けれない自分が苦しくて、悔しくて泣きたくなるのをグッと我慢した。