司法書士・行政書士の山口です。
IT化の推進・AI化が進むことで、士業の仕事が無くなると言われてるのはご存知の通り。
2015年の野村総合研究所とオックスフォード大学の共同研究によると、2030年にかけて日本の労働人口の49%が就いている仕事は人工知能やロボット等で代替可能になると言われています。
つまり、これから10年も経てば「仕事が無くなる」「仕事を変える」可能性がある人が2人に1人はいるということ。
もちろん、士業もそれは一緒です。
(AIによる代替可能性のある士業ランク)
1位:行政書士(93.1%)
2位:税理士(92.5%)
3位:公認会計士(85.9%)
4位:社会保険労務士(79.7%)
5位:司法書士(78%)
6位:弁護士(1.4%)
7位:中小企業診断士(0.2%)
うーん、、5位まではそんなに大差がない。
10年経って士業の仕事が簡素化できるAIが出ても、運用側のスキルの問題を考えれば、もう少し後にはなるでしょう。
そんなIT化のあおりを受けた士業が、海外ではもう現れています( ;∀;)
そして、ヨーロッパのエストニアでは、税理士や会計士が激減したと言われています。
エストニアという国は小国ながら、IT化は世界でも最先端。
税制度に限らず、医療、教育、選挙に至るまで、生活手続きの多くがインターネット上で完結。
法人設立や銀行口座の開設も、ネットで完結。
紙媒体での手続きで残ってる主要なものは、結婚、離婚、不動産売却くらいのようです。
もっとも、これには「エストニアだから」という理由もありますが。
1.人口
エストニアの人口は約130万人程度。
政令指定都市で1位の人口を誇る横浜市の人口が377万人。
その1/3程度しかいません(ちなみに、人口2位は大阪市で275万人)。
人口が少ないということは、「それだけ管理しやすい」「協力を求めやすい」という背景があります。
2.国土面積
エストニアの国土面積は約45000 km²。
横浜市の国土面積は、437km²。
エストニアのほうが圧倒的に広い。
つまり、人口は少ないのに国土は広いので、IT化しないと管理が難しいという側面もあります。
我々の、近くの役所に行って手続きするというスタイルが、こうした国では難しいのです。
3.税制度がシンプル
法人税は配当を出す場合は20%の課税、出さなければ0。
内部留保への課税はなく、配当を出す場合のみに課税。
税制を個人でも理解できるようにシンプルにしたというわけです。
さらに、相続税や贈与税の制度もないので、個人向け税理士の必要性がないのです。
4.電子化政策
エストニアでは、「X-road」というデータ交換レイヤーを採用しています。
いわゆる、高性能なデータ連動システムですね。
例えば、オンライン上の各行政サービスには、独自の情報システムが存在してますが、これら全ての情報システムを連動させて、国民の個人データを紐づけさせます。
国民は、個人情報を1度提供すれば、他の機関に提出不要で手間もかからない。
預金残高まで把握されてらしいので賛否両論はあると思います。
でも、その金銭管理を国家に委ねることで、課税額の自動計算が容易になるというメリットもあるのです。
納税者は、自動計算された納税額を確認・承認するだけで、確定申告と納税が完了する仕組み。
国家を信頼できるなら、非常に良いシステムかもしれません。
この1~4を、日本ですぐに実現できるか?というと、なかなか難しいのは分かると思います。
しかし、例えば、Freeeなどの会計ソフトが今後10年でもっと精度を高めれば、節税対策がほとんどできない税理士は不要になるでしょう。
また、商標登録のできるCotobox。
こうしたものも、世間の認知が進めば弁理士の仕事は減るかもしれません。
全士業、共通で言えるのは依頼人の気持ちを「いかに」手続きに反映できるのか?ということ。
考えることのできる、思考力の高い士業。
コミュ力があり、人間性が高い士業。
受け身で言われたことしかできない士業は難しい。
また、差をつけられない業務。
例えば、行政書士として単に届出をして終わってしまうものや、司法書士の単純な登記業務はニーズはないでしょう。
・資格をとれば仕事がある(30~40年前)
・資格を取っても仕事があるかはその人次第(20年前~現在)
・ただの士業ではダメ。それ以外に何ができる?(10年、20年先)
というイメージでしょうか。
そして、士業の手続き以外に、周辺分野をどれだけ埋めてあげられるかもポイント。
行政書士で外国人向けのサービスを展開している先生が、私の知り合いでいます。
こういう先生は、行政書士業務以外でも、外国人の日本生活をサポートしている。
そして、海外に学校を作って、そこから日本への就労支援のサポートも行っている。
こうすることで、行政書士の仕事、人材派遣業、生活全般のサポートをする顧問業など、仕事の幅が広がる。
こうした方法が、将来の士業のイメージに1番近いかもしれません。
「資格は商売のツールに過ぎない」と考えられるか。
これは司法書士でも税理士でもみんな一緒ですね。
企業でも、ある分野が飽和状態になれば、他の業種や新たな分野に参入する。
そして、新たな仕事の方法を模索する。
それができない会社は、倒産する。
士業もそれと一緒。
士業だけが痛いと悲観的にならないことですね。