司法書士の山口です。
今日は、借金を相続した場合について。
「借金を相続した場合は相続放棄でしょ!」
と思うかもしれないんですが、それだけではないんです。
借金を相続した場合には、
・普通に相続する(単純承認)
・相続放棄
・限定承認
・時効援用
・過払い金請求
この5つの選択肢がとれます。
単純承認
借金を相続しても、払っていくのも自由。
その場合は、通常通りの相続になるので単純承認。
例えば、自宅を相続する場合は、小ぶりな借金なら払っていくでしょう。
そうした場合などですね。
限定承認
限定承認は、あまり聞きなれないかもしれませんが、
「プラス財産の限度でマイナス財産を背負う」という制度。
相続時点では、大きな負債がなくてプラス財産のほうが多い。
だけど、他にも大きい負債ありそうだな…と思われるケースでチョイスするものです。
限定承認は、単独ではできません。
相続人全員で行う必要があるので、相続人全員が限定承認するならできる条件付きです。
相続放棄
「借金しか相続していない」
「プラス財産は絶対にない」
と言う場合には、相続放棄が基本です。
次で説明する時効と、どちらを選ぶか悩むケースもあり。
状況次第です。
相続放棄は、限定承認と違って単独でできます。
他の相続人の意思に関係なく、自分の意志だけで相続放棄できるということです。
時効の援用
これは、明らかに5年以上払っていない借金がある場合に選択するもの。
(ちなみに、個人間の借金は最後の返済から10年で時効。国税関係は5年で時効です)
「相続放棄すれば良くない?」と思うかもしれませんが、
明らかに時効ならば、時効援用をしたほうがいいメリットがあるんです。
・相続放棄期間が経過しても時効なら援用できる
・わざわざ裁判所へ申し立てる必要がない
・相続放棄と違ってプラス財産を相続できる
・次順位の相続人に迷惑をかけない
この4点ですかね。
ただし、時効を援用した時点で相続権の承認に該当、以後、相続放棄はできなくなります。
だから、状況によって、慎重に行う必要はあり。
あと、やっぱり、時効は自分の相続の段階で、債務を消せるのも大きい。
相続放棄をすると、その相続権は次順位の相続人にうつります。
一般的に、親が亡くなった場合、子である自分が相続人になります。
子が相続放棄すると、亡き親の親(自分から見て祖父母)が第2順位の相続人ですが、たいがい祖父母は先に亡くなっていますよね。
そうすると、親の兄弟が第3順位の相続人。
子であるあなたが相続放棄をすると、ようはおじさん・おばさんにその借金を向けることになるのです…。
この場合、おじさん・おばさんも相続放棄すれば別になんてことはないのですが、なんというんでしょう、、今までの関係性とか付き合いってあるじゃないですか?
そういうのがあまりよくない関係だと、文句を言われたり、少し嫌な思いをするケースも想定されるわけです…。
法律とは別の感情の問題です。
時効の援用だと、自分のところでその負債を抹殺するのでそれで終わり。
だから相続放棄よりも時効のほうが、友好的な解決になるというわけです。
過払い金請求
消費者金融やクレジットカード会社で、20年や30年借入れをしたまま亡くなってしまうというケースもあります。
こうした場合は、過払い金という払いすぎたお金が発生していることもあります。
何百万円単位で過払い金が発生するケースもあるので、相続放棄で過払い金を消してしまうとかなり痛いことになります。