夫のことも少し話さなきゃいけない。


夫は、私より5つ年上で、小金持ちのところの坊ちゃんだ。


あたしはその頃、ダメダメな半パチプロと付き合っていた。ダメダメ度で言ったら「仕事しないの?」って聞いたら「あと半年」と半年ごとに答えるようなそんな男だった。

大学デビューのあたしの最初の男だったので、なんか男の人ってそんなもんなのかなあと思っていた節はある。バカだったのだ。


でもおかしいな、おかしいなと思いながら月に1度も会わないような状態が続いたころ、夫と出会った。


印象は最悪だった。フリーターとして入った同じバイト先にいたのだが、年上のくせに仕事は出来ないわサボるわ愚痴ばっかり言ってるわであーだめだこの人キライ、と真っ先に思った。そして何より嫌だったのがその彼女だ。

やはり同じバイト先にいたのだが、明るくまっすぐなバカだった。嫌いな人は集団でいじめ、好きな人はとことんまでエコひいき、なまじ職歴が長かったからそのバイト先はそのオンナの支配下に置かれていた。あたしは嫌いな人には強いので、ケータイを教えろと言われて「持っていない」と答えたと同時に確執が始まった。が、その後オンナはすぐにそのバイトを辞めた。映画の勉強をしにイギリスに行ったのだという。


夫は、家が近いこともあって、しばしばあたしと遊ぶようになった。オンナとの仲は月に数度のメールでつながっていたと言っていた。

あたしは、実は男としてはますます夫が嫌いだった。あのオンナと付き合えるなんて正気の沙汰じゃない。絶対こいつ、すごいM。自分が付き合っているダメ男が仕事をしないせいもあって、フリーターの20代後半男というのも男レベル半減だった。

しかし、話してみれば気は合った。嫌だった愚痴も、夫はコミュニケーションの入り口と考えているらしく、親しくなればなるほどそういった話はしなくなった。むしろ気を使い、女の子との話を引き出してくれる男だった。



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あたしの父親は自営業をしていた。


小さい頃は優しい優しいパパだったと記憶している。事故で混乱している道路で、いきなり自身が車を降りて交通整理をやっちゃうような、おせっかいなおやじだったとも思う。


彼は誰にでも優しかった。自営業のくせに、相手方への業者へも優しく、事務をやっている母親にも優しく甘かった。しわ寄せは、見えないように商売の金へと行っていた。


家を出て、働き、今の旦那と同棲していた頃に、泡を食った母親から連絡があった。


「パパ、逃げちゃった」


失踪して8日過ぎたころだった。家の電話は借金とりや未納の業者からの連絡で昼間鳴り響き、母親は一時あたしの家に避難してきた。


幸いなことに、親戚に弁護士がいたため、兄弟たちの独断で負債を処理し、会社を潰した。6人兄弟のうち末っ子が商売を手伝い始めていたのだが、そいつをして分らない借金がアレコレ出てきた。

親戚の弁護士は、眉をひそめて言ったのだ。


「お父さん、だらしないね…」


借金の内容は、使い込みなど無いまっとうなものだったらしい。しかし、見る人が見ればわかるようで、

業者へ、少しだけ金額をはずみ、

母親へ、少しだけ給料を上乗せし、

どんなに資金繰りが苦しくても、表向きそのような顔は見せず、借金してでも払込を果たし、

不景気になって状況が変わっても、業者へ納める額は常に同じだった。


外の人へは、どんなにかいい社長だっただろうか。


失踪の前日、夫婦揃って親戚の家に遊びに行き、親戚の子に馬になってあげて遊んでいたらしい。

最後まで楽しそうだったと言っていた。


あたしが堅実で、誰にも頼らない生き方をしたいと思い始めたのはこの頃からだったと思う。



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あたしは、すべて行き当たりばったりだったと思う。


家庭環境に問題があったわけでは、あまりないと思う。家は貧乏で子だくさんで、リッチな思い出は何もないけれど、物腰の柔らかい父と物腰の柔らかい母との間で、特に怒られずに過ごした。

で、思春期特有の「あたしは何かになれるはず!」という無根拠な(そして努力はない)思い込みに駆られ過ぎて演劇などしてしまったけれど、顔は大きいし骨は太いし、女優なんかになれる見た目はしていなかった。ただ、胸は大きくて目も大きかったから、そのまま続けていたらAVとかには出られたかもしれない。で、すぐに仕事無くなってたと思う

オトコ遍歴も雑な感じを極めていたから、あたしは友達間でも「まずい感じに結婚して大きな声じゃ言えない感じで子供ができて」ってな将来像を期待されていた。
そして、あたし自身も、このままだらしなくずっと過ごしていくのかな、とぼんやり思っていた。貯金はいつもゼロで、年金は払っていなかった。


あたしに転機が訪れたとしたら、父親が失踪した頃あたりだろうか。父親は借金作って逃げたのである。

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