就職してから半年が過ぎた。
あたしの淡々とした仕事ぶりは評価されていた。そりゃあそうだ。淡々としつつも、一歩踏み出して仕事する。
「あと一声」を出す。
人には親切に、しかし締めるところはしっかりと。
ノンスキルノンキャリアで給料上げようと思ったら、それなりのことするしかないのだ。
仕事は増え、夫婦間も低温にうまく行っていた。忙しくて家事はあまりできなかったが、あたしは料理が好きだったのでそちらばかり注力した。ま、それでも結果「良い嫁」にカウントされていたみたいである。悪い嫁ではなかったはずだ。
とにかく楽しくて、1週間、2週間、ものすごい速さで過ぎ去っていった。
ある金曜日、飲み会があった。
飲み会はもう毎週のことだったので、それがいつのかはちょっと覚えていない。けれど、その時はあたしが幹事になり、人数を集めるためにメールをしまくり、自分のケータイとケータイのメールを露出しまくっていた。みなさーん!あたしが幹事ですから!それにはいやらしい下心が満載で、「できれば偉い人」にあたしのケータイを知ってもらおうとばらまきまくっていたのだ。
そして、今回の飲み会リストに、「彼」の名前があった。
あ、と思った。半年、ずっと話していない。部署的には同じことをしているのだが、会社のフロアが違った。
「彼」は、同期ということもあり、飲む機会はたくさんあったはずである。だが、会があってもいつもいなかった。酒が嫌いなんだろうか。
その段階で、少しだけ心臓がヘンに動いた。「彼」は、実はあたしの好みど真ん中だったから。
古臭いハンサム。決して、「イケメン」ではない。
話したことはない。どころか、半径5メートルで見たこともないくせに、あたしは心臓を動かしている。
もちろん、夫に感じることはもはや無い感情だ。
ごっそさん、と思った。
メールを送っても、「彼」から返信はなかった。
少し残念だったが、忙しかったので、すぐに忘れてしまった。
ランキング参加してます。よろしければ応援お願いします。
![にほんブログ村 恋愛ブログ 女の本音・女心へ](https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Flove.blogmura.com%2Flove_woman%2Fimg%2Flove_woman88_31.gif)
にほんブログ村