プールはお腹をタプタプゆらしながら、カルのあとを追いかけた
「プールごめん。」
カルは目をそらす
「わかるよカルの気持ち」
プールはカルの顔を覗き込む
「僕はチンピラと足止め程度だけど戦った事がある。
その時は父が瀕死の状態で、お母さんが僕がガードで時間を稼いでる間にお父さんを助けるはずだった。
「お父さんしっかりして、お父さん」
お母さんは必死でお父さんに治癒魔術を当てる
お父さんの傷はみるみる消えていき、血まみれだった腕もすっかりきれいだ
「うっググッ」
プールは必死で、風船で刀を抑えていた
「ハアアア」
お母さんは必死に力を振り絞る
お父さんは目を覚まし、もう少しで動けるようになるところだった
「うっググッググッ」
プールは後退りする
「お願いあと5秒だけ耐えて」
お母さんは血眼になっていた
お父さんは、腕を少し動かす
そこからカウントダウンが始まる
4
3
2
「うわあああ」
風船は割れて、プールは地面に叩きつけられた
すると父は刃物で刺されて死んでしまう
母は悔やむように、あと1秒遅ければ父は戦える状態だったと繰り返す
そう繰り返す母の目は死んでしまっていた
「僕の風船があと1秒長く持っていれば父は死なずにすんだんだ。
僕のせいで父はなくなったんだ。
それから僕は父を失った穴を食べることで埋めるようになった。気休めでしかないけど。
だからこんな体型になってしまったけど、それでも自分を変えたかった」
プールは遠い目をする
「自分の弱さから逃げたのは僕も同じ。僕たちはは弱いよ。でもだからこそ助け合って強くなれるんだよ」
プールはカルに優しく笑いかけた
「ー」
カルは目を見開く
「逃げてもいいんだよ、投げ出さなければ。やめてもまた始めればいい。そしたらいつの間にか、何年も同じことをしてたりするものだよ」
プールは遠くを見つめた
風邪がそよそよと吹いていて心地よい
木々がゆらめき音を立てた
まるで合唱してるようだ
「そっか」
カルは静かにそういった