「兄……ピクニックにでも行く気なの?」
土曜日の遅い朝のこと。
双子ではないが僕に良く似た顔を持つ妹は、いつもの感情に乏しい顔に珍しく動揺した表情を浮かべて、台所に立つ僕に問いかけた。
「まあ似たようなものかな」
冷凍庫から食品を引っ張り出して並べながら答える。どれにするかなぁ。
「夏日と行くならお弁当なんて必要ないでしょう?」
「ナツじゃないよ」
「夏日でも独りでもないと言うの? ……大変、今日は盾を持って出かけないといけないね」
「妹、槍なんて降って来ないよ?」
悲壮感たっぷりにそんなお決まりのジョークを言ってくるが、真顔なので冗談っぽく聴こえない。呆れ顔で見返すと、妹は大仰に首を傾けた。
「なら何しにわざわざお弁当を拵えて、誰と出かけるというのだい、兄よ?」
「友達とご飯を食べるんだよ」
当たり前すぎる回答をすると、妹が息を飲んだ。わざとらしく。
「な、ん、と! それは真かい? 私、白井明日香(しろいあすか)はかれこれ十云年、君の妹をやっているけれど、初めて聞く単語だよ。これがまさにおっ魂消(たまげ)るというやつだね。私を殺さないでくれよ兄」
非常に愉快そうに口を歪める妹こそが一番性格が悪いと、昨日の花の言葉を思い出して思った。
「そういう言葉じゃないでしょう、それ。それに君も人のこと言えないだろう?」
「これはまた痛いとこを突いてくるね」
なんて言っている割には全く堪えた様子のない妹は、肩程に切り揃えた黒髪を揺らしながら、リビングの椅子に腰かけた。腕を組み、ふむ、と唸る。
「友達か。兄の友達なんて想像がつかないな。どんな女の子かい?」
「君まで女の子と決めつけてかかるのね……」
呆れながらも温まった食品を弁当箱に詰めていく手は止めない。妹は妙に自信たっぷり、嫌味たっぷりに言った。
「図星だろう?」
「その通りだけど、どうも納得いかないよ。どうしてわかるの?」
問うと妹はふん、と鼻を鳴らし、反り返って答えた。
「犬も歩けば棒に当たるんだよ」
「多分使い方間違ってるよ?」
「いいんだよ。犬が歩けば棒に当たるように、兄が動けば女の子に行き当たる。良いことでも悪いことでもなく、どっちでもありどっちでもない、極々普通のことで、当たり前のことなんだよ」
やっぱり納得いかない、と顔をしかめたらクスクスと笑われた。
「そう渋い顔しないしない。それより兄よ、お弁当は冷凍尽くしかな?」
電子レンジを覗き込む僕をカウンター越しに覗き込んだ妹が、意地悪く問いかける。違うよ、と僕は普通に答えた。
妹のこの性格悪そうな話し方はデフォルトなので一々目くじらを立てていたらとてももたない。まあ僕個人としては特に腹も立たないし嫌な気分にもならないのだが。
「卵料理くらいは作ろうかと思ってるよ。何がいいと思う?」
「ホットケーキ」
確かに卵使ってますけどね。
元より妹のまともな意見なんて期待していなかったので問題ない。
「スクランブルエッグでいいかなぁ」
「……兄よ。流石に流すのは非人道的対応だと思うんだけど」
げんなりした顔で苦情を言ってくる妹に笑いながら、ごめんよ、と誠意のない謝罪をする。妹はため息深々、「やはり兄の方がよっぽど性格破綻者だと私は思うんだよねぇ」などと失礼なことをぼやいていた。
「ところで兄よ、ピクニックに行くのはいいけど、ちゃんと気をつけるんだよ」
卵を割りながら、はいはいと答えると、ちゃんと聞きなさいと怒られてしまった。仕方ないので卵をかき混ぜながら顔を上げる。
「で何? 突然変異動物の話?」
「……うん、そうだよ。最近ニュースで取り上げられる頻度が増えているし、実際数字も増加している」
被害者数も、な。
低い低い声で呟く妹の顔は真剣そのものだ。
突然変異動物。
近年増えて来ている、新種の動物たちを一括して呼ぶ時、その名称が使われるが、正しくは“新種”ではない。突然変異を起こした“個体”を示している。
そう、個体なのだ。
突然変異は自然界でも人工的な交配の中でも昔から普通に存在している。その代表格と言えるのが色素を持たずに生まれてしまうアルビノであるし、個体差というのも一つの変異だとも言える。
しかし今日、突然変異動物と呼ばれる個体が増えている。
その状況が異常なのだ。
種と違い交配によって必然的に増えるのではなく、偶然現れるはずの突然変異を持つ個体が増えている。まるで種族が増えるかのように。
当たり前のように社会現象として報道されているが、これは根源に自然環境の悪化が原因なのではないかと知り合いの研究者も言っていた。
根本的に世界がおかしくなっているのだ。
「最近里山だけでなく、住宅地での出没情報も増えている。山なんかに行けば襲われに行くようなものだよ」
ちらりと目線を上げれば、剣呑な顔をした妹がいた。心配してくれているんだな、と思うと笑みが溢れた。
「大丈夫。近所の河原で食べるだけだから」
「そうか」
ちょっとほっとしたように少し相好を崩す妹。表情の変化は相当にわかりにくいが、結構可愛いところはあるのだ。
「しかし兄は山にも気にせず踏み込んで行くからね。今度出かけても、なるべく人里は離れないようにするのだよ?」
その言葉には苦笑いで応じる他ない。多分守れないから。妹が睨んでくるが仕方ない。
「……兄はもう少し自愛という言葉を噛み締めるべきだ」
とにかく忠告はしたよ、と言うと立ち上がり、妹はすたすたと自室へと歩き出した。
「ありがとう」
多分それを言うためにわざわざ自室から出て来たのだと思うから。
恐らく苦虫を噛み潰したような顔をしているんだろうな。妹は振り返らずに手を上げることで応えると、リビングを出て行った。
優しい癖に無愛想で不器用で、本当に可愛い妹だよ君は。
心の中で独り呟いた。
* * *
小さなお口をあんぐり間抜けに開いている花は大変可愛らしかった。
どうもやって来たことに早々に気づいたようだったが、それでも驚いて固まってしまったようで、近づいても未だにかちんこちんだった。
僕はそんな花の目の前にやってくると、たっぷり詰まった弁当箱を良く見えるように持ち上げて言った。
「やあ、こんにちは、花。お昼御飯をご一緒しませんか?」
満面の笑顔と共に。
「お前、学校はどうした?」
「今日は休日だよ。だからこんなにいっぱい人がいるんじゃないか」
いつもの河原は夕暮れ時とはうって変わり、春の陽気の下、多くの人で賑わっていた。川沿いに植えられた桜が満開だからだろう。そうでなくても住宅密集地。思い切り騒いだり遊び回るにはこの河原は持ってこいなのだ。
その外れにぽつんと座った僕らは、そんな賑わいを遠くに見下ろしていた。
「なるほどな……」
本当に休日という考えが頭になかったらしく、しきりに納得顔で頷いていた。
「だからお弁当作って来たんだ。食べよう?」
「うむ、有り難くいただかせて貰おう!」
という訳でお弁当を広げ、つつきながら話し出す。
「全部お前が作ったのか?」
「スクランブルエッグ以外は冷凍ものを温めただけだよ。おにぎりは握ったけど」
「お前、意外と器用だな。綺麗なおにぎりだ」
「形より中身を見て欲しいんですが」
苦笑いしながら言うと、花は慌てておにぎりを手にしてかぶりついた、が。
「あ、熱い……」
すぐに口を離し、ちょっと涙ぐんだ目を向けてくる。持った時に熱いの気づかなかったのかな、と少し不思議に思いながら水筒を出してお茶を注いであげる。
「……ふう。助かったぞ、ありがとう」
「いいえ。にしても、猫舌なの?」
花は恥ずかしそうに俯いていたが、やがて「うむ」と肯定した。
「なぜか口だけは弱いのだ。恐らく……」
言い淀んだのは何かを思い出していたからなのか。結構「なんでもない」の一言で打ち消してしまった。気になるなぁ。
おにぎりの説明をしようと口を開きかけて、やめた。やっぱりここは流したくない。
「『恐らく』、何?」
「な、なんでもないと言っておろう!」
「でもやっぱり気になるもの」
「気にするな!」
「だって友達でしょう? それとも花は、友達の辛い思い出とかは見ないふりしてほっとけばいいと思う?」
「ぐぐっ」
花は唸る。多分自分が同じ立場だったらほっとけないと思うから答えられないのだろう。そんな優しくて嘘がつけない彼女が少し可哀想で、ごめんねの代わりに頭を撫でた。
「話すのは苦しいかもしれないけど、独りで辛いを抱え込むのは余計に辛いよ。君の苦しみ、分けて欲しいと願うのは我が儘かな?」
長い長い沈黙の末だった。
「……わかった」
絞り出すような掠れた声だった。
「今言いかけたのは、母のことだ。母も、酷い猫舌だったからな……」
少し苦味の混じった、悔恨の滲む笑みを浮かべて花は言った。じっとりと浮かんだ汗を拭ってあげる。
「そうなんだ。じゃあそれを貰っちゃったから花も猫舌なんだね」
敢えて明るく、茶化すように言ってみた。
「うむ、そうなのだ。全く困ったものだよ」
ちょっと軽くなった声音で花は苦笑いした。しかしまだまだ言ってないことがありそうだな、と思う。こんな風に無理矢理掘り出すことが正しいとはあまり思えない。けれど重苦しい気分で全てを話させるよりは、そう。
日常的な昔話みたいに話せるようになるのが一番の救いのような気がするから。僕はその相手となれるようにして行きたい。そう思うんだ。
暫く他愛のない会話をしながらおかずを摘まんでいく。
流れでお弁当代について言及されたので、「子どもは年上のお財布の心配はしなくていいの」と言ったら妙なことが発覚した。
「え、お前、中学生ではないのか?」
「違うよ。高校三年生だよ。凄い勘違いするなぁ」
「しかしお前、学ランを着ていたじゃないか。高校生ならブレザーというやつだろう?」
「確かにそういう傾向はあるけど、うちは女子はブレザー、男子は学ランなんだよ」
花はあまり納得していなかったが、一応そういうものもあるのか……と認識を改めてくれたらしい。しかしなんだかやけに詳しいな。
「小学生ってそんなに制服について知っているものなんだね」
「何を馬鹿なことを言っている。私は普通に進級していれば中学二年生だぞ」
固まった。
「……おい、おい刻? どうした、大丈夫か? おーい」
ぺしぺし頬を叩かれてはっとなった。彼女は僕を中学生だと思っていた。同級生か一つ上程度のつもりで話していた訳だ。
つまりだ。
幼女じゃない。
嘘だぁ!
「何がそんなにショックなのだ?」
「いやだってそんなに小さいのに中二って、信じがたいよ普通に」
「信じがたいとか言うな。……まあ、仕方ないとは思うがな」
花は胸に手を当て、目を伏せた。何かを堪えるように。
「この体は一年前に成長を止めてしまった。元々成長が遅かったから、小学生に見えてしまうのも仕方のないことだよ」
彼女は目を薄く開けると、ニタリと笑って言った。
「逃げたくなったか?」
「答えのわかってる問いで遊ばない。そんな訳ないでしょう? 話してくれて嬉しいよ、花」
微笑み返す。すると一転、顔を赤くしてあたふたと意味なく手を振り回し出した。
「ば、馬鹿。あまりストレートに嬉しいとか言うな。意地悪を言った私が恥ずかしいではないか」
「ふふふ。さっきのは妹に似てたけど、こういうところは全然似てないなぁ」
そんなことを口にしたら、ぴたりと動きを止めた。不思議そうに僕の顔を見詰める。
「お前、妹がいるのか」
「いるよ。高校一年の底意地の悪い偏屈な妹がね」
「ほう、流石兄妹だな」
「どういう意味かな?」
含みを持って問い返すと、花はクスクスと笑った。楽しそうで何よりだけれど、それは僕も底意地の悪い偏屈な男だということか。うーん……否定できないなぁ。
そんなことを考えていることが表情に出ていたのか、更に笑われる。ちょっと頭に来たので花の顔に手を伸ばすと。
ほっぺたをびよーんと引っ張った。
「ひゃ、ひゃにほすふー」
間抜けな顔で抗議してくる花可愛い~、とニヤニヤしていたらぺしぺしと手を叩かれた。
「はにゃせ、はかもの」
「あはは、『はかもの』って『バカモノ』のことかな? あははっ」
ギロリと睨まれたのでパッと離した。脳内警鐘はかなり正確なので素直に従った方がいいのは幼馴染みで学習済みだ。今一回避できてないけれど。
花は一気に不機嫌になり、仏頂面で俯いてパクパクとおかずを口に放り込むことに全力を注ぎ始めた。
うーん、うまく行かないなぁ。僕の気は晴れたがこれじゃなんだか本末転倒だ。どうしようかと視線を彷徨わすと、歯形付きのツートンカラーの塊が目に留まった。
よし、とそれを手に取ると、花の肩をトントンと叩く。
「もう大分冷めたから君でも食べれると思うよ、おにぎり」
恨めしそうな下からの視線に、なんだか網の上の肉になった気分を味わいながら、おにぎりを差し出す手は降ろさないように頑張ってみる。
暫く膠着状態が続いたが、やがてそろそろとおにぎりに手が伸ばされる。手が軽くなった時はまるで猛獣に手から餌を与えたような達成感があった。大袈裟だな僕。
そして早速一口かぶりついた花に感動を覚えながらなりゆきを見守る。
「んっ、しょっぱい」
「辛かった? 大丈夫?」
塩の量、手加減すべきだったかなと内心慌てたが、花は神妙な顔でおにぎりを見詰めていた。
そしてまた一口。
「……うまいな、このおにぎり」
おおおっ、と今度は感動の嵐に襲われた。素朴な感想はまさに花の本心から溢れたように感じた。これは嬉しい。
「しょっぱいとは思ったがこれはこれでうまいな、美味だ。中身もなんだか随分凝ったものが入っているようだが……」
「そうそう、しょっぱいけどその分ご飯の甘さみたいなのが引き立つよね! 因みに中身は鶏そぼろだよ!」
「随分食いつきがいいな……」
「おにぎり好きだからね、中々に拘って作ってるんだよね。いやぁ、気に入って貰えると嬉しいよ」
いつも以上に笑顔になっていることを自覚しているけれど、にやけているけれど、どうしようもない。花に喜んで貰えたことが凄い、自分でもびっくりするくらい嬉しかった。
「ありがとう花ー」
「バ、バカモノ。作って貰ったのだから私が感謝すべきところだろう」
「でもやっぱりありがとうなんだよ」
お前はやっぱり馬鹿だな、と照れたように呟く花の頭を撫でる。
「お前、私は愛玩動物ではないんだぞ」
半目で見られるが「可愛いんだもの」と返すと黙り込んだ。
しかし今日はまた一段と可愛いのだ。
花はいつものくすんだマントはなく、代わりに白い波紋のような模様を裾にあしらった青空色のワンピースを身に纏っていた。長い黒髪まで青いリボンで一つにくくってあり、健康そうなうなじが陽光を弾いている。
「君、そんな服も持ってたんだね」
「……指摘するの遅くないか?」
一段と視線が冷え込んだが僕はにっこり微笑んだ。
「だって花、最初固まってたから。指摘するタイミング逃しちゃったんだよ」
「だからって今というのも変だろう、この唐変木」
「まあまあ。でもなんで普段はまるで浮浪者みたいな恰好なの?」
すると至極当たり前に彼女は答えた。
「浮浪者だからに決まっているだろう?」
何を馬鹿なことを、とぶつぶつ言いながらおにぎりにかぶりつく花を、複雑な気分で見詰めた。
「それに浮浪者らしくしておらんとご飯くれとか言っても真実味がないだろう?」
それが彼女の“日常”で“普通”になってしまっているんだろう。成長が止まっていると言っていた。多分その始まり、『一年前』というのが彼女の流浪の始まりでもあるんだろう。
一年、か。
長いなぁ……。
「ねえ、家に来ないの?」
「くどいぞ、刻。私はな――」
花は顔を上げ、僕を見た途端言葉を切った。それから気まずげに視線を反らして一言、「すまん」とだけ言った。
曲げられない何かがあるんだろう。でも僕も堪らないよ。
君がたった独り、空の下、座り込んでいるのかと思うと。
堪らなく、悲しくなってしまうよ。
「お前……泣き虫だな」
「そうか、僕泣き虫なんだ……知らなかったよ、そんなこと。でも、やっぱり独りで居続けるのはきっと寂しいって思えてしまうから、悲しい」
「……お前には関係ない」
「友達と言ったのに?」
「……それでも」
彼女自身も辛そうに、苦しそうに、もがくように言った。
「どうしようもないのだ――」
救いを求めることすら苦しみになる彼女の過去は一体なんなのだろうか。知りたい。聞きたい。今すぐにでも。
でもそんなことをしたら彼女がバラバラに千切れてしまいそうで怖かった。
君は。
恐怖すら僕に教えてくれたんだ。
* * *
「すまなかった」
沈黙の中、昼食が終わり、片付けをしている時だった。花がぽつりと口にしたのは謝罪の言葉。
「謝らなくていいんだよ」
「しかしせっかくお弁当作って来てくれたというのに、私のせいで気まずい食事にしてしまい、すまない」
「謝らないの」
項垂れた頭を優しく撫でる。
「またおにぎり持ってくるね。君、おにぎりの方が好きみたいだから」
おかずがパッタリ減らなくなってしまったことを指摘すると、気まずげながらもうむ、と彼女は素直に頷いた。
「じゃあまた後で」
言って立ち上がろうとしたら、慌てた花が「待て!」と叫んだ。不思議そうに振り返ると、あたふたしながら花がしゃべり出す。
「お、お前、夕飯まで持ってくる気なのか?」
「そのつもりだけど……?」
「面倒見良すぎだろうお前!」
思わず目をぱちくりさせて花を見詰める。まさかお世話している相手に言われるとは。
「一食貰えれば十分だ! だからお前は家で食え」
「寂しくて死んじゃわない?」
「私は兎か!」
噛みつくようにツッコむ花がおかしくてちょっと笑ってしまう。
「兎って野生じゃ単独行動するから別に寂しくて死ぬなんてことないらしいよ」
「なにぃ! 本当かそれは!」
目を剥いて問い返してくる花の頭をぽんぽんと叩いて本当だよ、と言う。
「そうだったのか……」
真面目な顔をしてそんなことを呟く花は本当に可愛いなぁ、と思っていたら不意に声色が変わった。
「……一度会えれば良い。十分だ。お前はお前の時間を持て」
「お腹空かない?」
「空かない」
花はそれ以上の追及をはね除けるような眼差しで僕を見詰めた。
「私は半分怪物だから、空かないのだ。だから心配はいらん」
「……そっか」
もう花を追い詰めたくなんてなかったから、素直に退く他、僕に選択肢はなかった。少し寂しく思ってしまうのは我が儘なんだろうか。
その迷いが見えるのか、拒絶するような物言いに罪悪感があるのか、花の顔が微かに歪む。
僕はせめて笑っていないと、花が笑えない。
「また明日ね、花」
だから僕は笑うね。
君が笑顔を忘れないように。君の笑顔をいつも願っているよって伝わるように。
「また、明日だ、刻」
無理してでも僕は笑うよ。……時々は、ね。
*****
妹にちょっと手を焼かされましたが結構いいキャラになったかな、なんて自画自賛してました。さて。マンネリ化を避けるためにそろそろ動いてみようか。でも今回溢したネタも多いから先の展開ちょっと迷うなぁ。どっちにしようかな。いやでもせっかくの日曜日だからこっちで行こう、ってことで次回もお楽しみにー。
