ネクラな魔法使いのぼやき -2ページ目

ネクラな魔法使いのぼやき

徒然なるままに適当に書きます← ブログネタ使ったり、たまに短編小説を書いたり、オリキャラが登場自由気儘な逢河のブログです。真面目なブログも別にあるのでHPからチャレンジしてみてくださいな。

「兄……ピクニックにでも行く気なの?」
 土曜日の遅い朝のこと。

 双子ではないが僕に良く似た顔を持つ妹は、いつもの感情に乏しい顔に珍しく動揺した表情を浮かべて、台所に立つ僕に問いかけた。
「まあ似たようなものかな」
 冷凍庫から食品を引っ張り出して並べながら答える。どれにするかなぁ。
「夏日と行くならお弁当なんて必要ないでしょう?」
「ナツじゃないよ」
「夏日でも独りでもないと言うの? ……大変、今日は盾を持って出かけないといけないね」
「妹、槍なんて降って来ないよ?」
 悲壮感たっぷりにそんなお決まりのジョークを言ってくるが、真顔なので冗談っぽく聴こえない。呆れ顔で見返すと、妹は大仰に首を傾けた。
「なら何しにわざわざお弁当を拵えて、誰と出かけるというのだい、兄よ?」
「友達とご飯を食べるんだよ」
 当たり前すぎる回答をすると、妹が息を飲んだ。わざとらしく。
「な、ん、と! それは真かい? 私、白井明日香(しろいあすか)はかれこれ十云年、君の妹をやっているけれど、初めて聞く単語だよ。これがまさにおっ魂消(たまげ)るというやつだね。私を殺さないでくれよ兄」
 非常に愉快そうに口を歪める妹こそが一番性格が悪いと、昨日の花の言葉を思い出して思った。
「そういう言葉じゃないでしょう、それ。それに君も人のこと言えないだろう?」
「これはまた痛いとこを突いてくるね」
 なんて言っている割には全く堪えた様子のない妹は、肩程に切り揃えた黒髪を揺らしながら、リビングの椅子に腰かけた。腕を組み、ふむ、と唸る。
「友達か。兄の友達なんて想像がつかないな。どんな女の子かい?」
「君まで女の子と決めつけてかかるのね……」
 呆れながらも温まった食品を弁当箱に詰めていく手は止めない。妹は妙に自信たっぷり、嫌味たっぷりに言った。
「図星だろう?」
「その通りだけど、どうも納得いかないよ。どうしてわかるの?」
 問うと妹はふん、と鼻を鳴らし、反り返って答えた。
「犬も歩けば棒に当たるんだよ」
「多分使い方間違ってるよ?」
「いいんだよ。犬が歩けば棒に当たるように、兄が動けば女の子に行き当たる。良いことでも悪いことでもなく、どっちでもありどっちでもない、極々普通のことで、当たり前のことなんだよ」
 やっぱり納得いかない、と顔をしかめたらクスクスと笑われた。
「そう渋い顔しないしない。それより兄よ、お弁当は冷凍尽くしかな?」
 電子レンジを覗き込む僕をカウンター越しに覗き込んだ妹が、意地悪く問いかける。違うよ、と僕は普通に答えた。
 妹のこの性格悪そうな話し方はデフォルトなので一々目くじらを立てていたらとてももたない。まあ僕個人としては特に腹も立たないし嫌な気分にもならないのだが。
「卵料理くらいは作ろうかと思ってるよ。何がいいと思う?」
「ホットケーキ」
 確かに卵使ってますけどね。
 元より妹のまともな意見なんて期待していなかったので問題ない。
「スクランブルエッグでいいかなぁ」
「……兄よ。流石に流すのは非人道的対応だと思うんだけど」
 げんなりした顔で苦情を言ってくる妹に笑いながら、ごめんよ、と誠意のない謝罪をする。妹はため息深々、「やはり兄の方がよっぽど性格破綻者だと私は思うんだよねぇ」などと失礼なことをぼやいていた。
「ところで兄よ、ピクニックに行くのはいいけど、ちゃんと気をつけるんだよ」
 卵を割りながら、はいはいと答えると、ちゃんと聞きなさいと怒られてしまった。仕方ないので卵をかき混ぜながら顔を上げる。
「で何? 突然変異動物の話?」
「……うん、そうだよ。最近ニュースで取り上げられる頻度が増えているし、実際数字も増加している」
 被害者数も、な。
 低い低い声で呟く妹の顔は真剣そのものだ。
 突然変異動物。
 近年増えて来ている、新種の動物たちを一括して呼ぶ時、その名称が使われるが、正しくは“新種”ではない。突然変異を起こした“個体”を示している。
 そう、個体なのだ。
 突然変異は自然界でも人工的な交配の中でも昔から普通に存在している。その代表格と言えるのが色素を持たずに生まれてしまうアルビノであるし、個体差というのも一つの変異だとも言える。
 しかし今日、突然変異動物と呼ばれる個体が増えている。
 その状況が異常なのだ。
 種と違い交配によって必然的に増えるのではなく、偶然現れるはずの突然変異を持つ個体が増えている。まるで種族が増えるかのように。
 当たり前のように社会現象として報道されているが、これは根源に自然環境の悪化が原因なのではないかと知り合いの研究者も言っていた。
 根本的に世界がおかしくなっているのだ。
「最近里山だけでなく、住宅地での出没情報も増えている。山なんかに行けば襲われに行くようなものだよ」
 ちらりと目線を上げれば、剣呑な顔をした妹がいた。心配してくれているんだな、と思うと笑みが溢れた。
「大丈夫。近所の河原で食べるだけだから」
「そうか」
 ちょっとほっとしたように少し相好を崩す妹。表情の変化は相当にわかりにくいが、結構可愛いところはあるのだ。
「しかし兄は山にも気にせず踏み込んで行くからね。今度出かけても、なるべく人里は離れないようにするのだよ?」
 その言葉には苦笑いで応じる他ない。多分守れないから。妹が睨んでくるが仕方ない。
「……兄はもう少し自愛という言葉を噛み締めるべきだ」
 とにかく忠告はしたよ、と言うと立ち上がり、妹はすたすたと自室へと歩き出した。
「ありがとう」
 多分それを言うためにわざわざ自室から出て来たのだと思うから。
 恐らく苦虫を噛み潰したような顔をしているんだろうな。妹は振り返らずに手を上げることで応えると、リビングを出て行った。
 優しい癖に無愛想で不器用で、本当に可愛い妹だよ君は。
 心の中で独り呟いた。


* * *


 小さなお口をあんぐり間抜けに開いている花は大変可愛らしかった。
 どうもやって来たことに早々に気づいたようだったが、それでも驚いて固まってしまったようで、近づいても未だにかちんこちんだった。
 僕はそんな花の目の前にやってくると、たっぷり詰まった弁当箱を良く見えるように持ち上げて言った。
「やあ、こんにちは、花。お昼御飯をご一緒しませんか?」
 満面の笑顔と共に。


「お前、学校はどうした?」
「今日は休日だよ。だからこんなにいっぱい人がいるんじゃないか」
 いつもの河原は夕暮れ時とはうって変わり、春の陽気の下、多くの人で賑わっていた。川沿いに植えられた桜が満開だからだろう。そうでなくても住宅密集地。思い切り騒いだり遊び回るにはこの河原は持ってこいなのだ。
 その外れにぽつんと座った僕らは、そんな賑わいを遠くに見下ろしていた。
「なるほどな……」
 本当に休日という考えが頭になかったらしく、しきりに納得顔で頷いていた。
「だからお弁当作って来たんだ。食べよう?」
「うむ、有り難くいただかせて貰おう!」
 という訳でお弁当を広げ、つつきながら話し出す。
「全部お前が作ったのか?」
「スクランブルエッグ以外は冷凍ものを温めただけだよ。おにぎりは握ったけど」
「お前、意外と器用だな。綺麗なおにぎりだ」
「形より中身を見て欲しいんですが」
 苦笑いしながら言うと、花は慌てておにぎりを手にしてかぶりついた、が。
「あ、熱い……」
 すぐに口を離し、ちょっと涙ぐんだ目を向けてくる。持った時に熱いの気づかなかったのかな、と少し不思議に思いながら水筒を出してお茶を注いであげる。
「……ふう。助かったぞ、ありがとう」
「いいえ。にしても、猫舌なの?」
 花は恥ずかしそうに俯いていたが、やがて「うむ」と肯定した。
「なぜか口だけは弱いのだ。恐らく……」
 言い淀んだのは何かを思い出していたからなのか。結構「なんでもない」の一言で打ち消してしまった。気になるなぁ。
 おにぎりの説明をしようと口を開きかけて、やめた。やっぱりここは流したくない。
「『恐らく』、何?」
「な、なんでもないと言っておろう!」
「でもやっぱり気になるもの」
「気にするな!」
「だって友達でしょう? それとも花は、友達の辛い思い出とかは見ないふりしてほっとけばいいと思う?」
「ぐぐっ」
 花は唸る。多分自分が同じ立場だったらほっとけないと思うから答えられないのだろう。そんな優しくて嘘がつけない彼女が少し可哀想で、ごめんねの代わりに頭を撫でた。
「話すのは苦しいかもしれないけど、独りで辛いを抱え込むのは余計に辛いよ。君の苦しみ、分けて欲しいと願うのは我が儘かな?」
 長い長い沈黙の末だった。
「……わかった」
 絞り出すような掠れた声だった。
「今言いかけたのは、母のことだ。母も、酷い猫舌だったからな……」
 少し苦味の混じった、悔恨の滲む笑みを浮かべて花は言った。じっとりと浮かんだ汗を拭ってあげる。
「そうなんだ。じゃあそれを貰っちゃったから花も猫舌なんだね」
 敢えて明るく、茶化すように言ってみた。
「うむ、そうなのだ。全く困ったものだよ」
 ちょっと軽くなった声音で花は苦笑いした。しかしまだまだ言ってないことがありそうだな、と思う。こんな風に無理矢理掘り出すことが正しいとはあまり思えない。けれど重苦しい気分で全てを話させるよりは、そう。
 日常的な昔話みたいに話せるようになるのが一番の救いのような気がするから。僕はその相手となれるようにして行きたい。そう思うんだ。


 暫く他愛のない会話をしながらおかずを摘まんでいく。
 流れでお弁当代について言及されたので、「子どもは年上のお財布の心配はしなくていいの」と言ったら妙なことが発覚した。
「え、お前、中学生ではないのか?」
「違うよ。高校三年生だよ。凄い勘違いするなぁ」
「しかしお前、学ランを着ていたじゃないか。高校生ならブレザーというやつだろう?」
「確かにそういう傾向はあるけど、うちは女子はブレザー、男子は学ランなんだよ」
 花はあまり納得していなかったが、一応そういうものもあるのか……と認識を改めてくれたらしい。しかしなんだかやけに詳しいな。
「小学生ってそんなに制服について知っているものなんだね」
「何を馬鹿なことを言っている。私は普通に進級していれば中学二年生だぞ」
 固まった。
「……おい、おい刻? どうした、大丈夫か? おーい」
 ぺしぺし頬を叩かれてはっとなった。彼女は僕を中学生だと思っていた。同級生か一つ上程度のつもりで話していた訳だ。
 つまりだ。
 幼女じゃない。
 嘘だぁ!
「何がそんなにショックなのだ?」
「いやだってそんなに小さいのに中二って、信じがたいよ普通に」
「信じがたいとか言うな。……まあ、仕方ないとは思うがな」
 花は胸に手を当て、目を伏せた。何かを堪えるように。
「この体は一年前に成長を止めてしまった。元々成長が遅かったから、小学生に見えてしまうのも仕方のないことだよ」
 彼女は目を薄く開けると、ニタリと笑って言った。
「逃げたくなったか?」
「答えのわかってる問いで遊ばない。そんな訳ないでしょう? 話してくれて嬉しいよ、花」
 微笑み返す。すると一転、顔を赤くしてあたふたと意味なく手を振り回し出した。
「ば、馬鹿。あまりストレートに嬉しいとか言うな。意地悪を言った私が恥ずかしいではないか」
「ふふふ。さっきのは妹に似てたけど、こういうところは全然似てないなぁ」
 そんなことを口にしたら、ぴたりと動きを止めた。不思議そうに僕の顔を見詰める。
「お前、妹がいるのか」
「いるよ。高校一年の底意地の悪い偏屈な妹がね」
「ほう、流石兄妹だな」
「どういう意味かな?」
 含みを持って問い返すと、花はクスクスと笑った。楽しそうで何よりだけれど、それは僕も底意地の悪い偏屈な男だということか。うーん……否定できないなぁ。
 そんなことを考えていることが表情に出ていたのか、更に笑われる。ちょっと頭に来たので花の顔に手を伸ばすと。
 ほっぺたをびよーんと引っ張った。
「ひゃ、ひゃにほすふー」
 間抜けな顔で抗議してくる花可愛い~、とニヤニヤしていたらぺしぺしと手を叩かれた。
「はにゃせ、はかもの」
「あはは、『はかもの』って『バカモノ』のことかな? あははっ」
 ギロリと睨まれたのでパッと離した。脳内警鐘はかなり正確なので素直に従った方がいいのは幼馴染みで学習済みだ。今一回避できてないけれど。
 花は一気に不機嫌になり、仏頂面で俯いてパクパクとおかずを口に放り込むことに全力を注ぎ始めた。
 うーん、うまく行かないなぁ。僕の気は晴れたがこれじゃなんだか本末転倒だ。どうしようかと視線を彷徨わすと、歯形付きのツートンカラーの塊が目に留まった。
 よし、とそれを手に取ると、花の肩をトントンと叩く。
「もう大分冷めたから君でも食べれると思うよ、おにぎり」
 恨めしそうな下からの視線に、なんだか網の上の肉になった気分を味わいながら、おにぎりを差し出す手は降ろさないように頑張ってみる。
 暫く膠着状態が続いたが、やがてそろそろとおにぎりに手が伸ばされる。手が軽くなった時はまるで猛獣に手から餌を与えたような達成感があった。大袈裟だな僕。
 そして早速一口かぶりついた花に感動を覚えながらなりゆきを見守る。
「んっ、しょっぱい」
「辛かった? 大丈夫?」
 塩の量、手加減すべきだったかなと内心慌てたが、花は神妙な顔でおにぎりを見詰めていた。
 そしてまた一口。
「……うまいな、このおにぎり」
 おおおっ、と今度は感動の嵐に襲われた。素朴な感想はまさに花の本心から溢れたように感じた。これは嬉しい。
「しょっぱいとは思ったがこれはこれでうまいな、美味だ。中身もなんだか随分凝ったものが入っているようだが……」
「そうそう、しょっぱいけどその分ご飯の甘さみたいなのが引き立つよね! 因みに中身は鶏そぼろだよ!」
「随分食いつきがいいな……」
「おにぎり好きだからね、中々に拘って作ってるんだよね。いやぁ、気に入って貰えると嬉しいよ」
 いつも以上に笑顔になっていることを自覚しているけれど、にやけているけれど、どうしようもない。花に喜んで貰えたことが凄い、自分でもびっくりするくらい嬉しかった。
「ありがとう花ー」
「バ、バカモノ。作って貰ったのだから私が感謝すべきところだろう」
「でもやっぱりありがとうなんだよ」
 お前はやっぱり馬鹿だな、と照れたように呟く花の頭を撫でる。
「お前、私は愛玩動物ではないんだぞ」
 半目で見られるが「可愛いんだもの」と返すと黙り込んだ。
 しかし今日はまた一段と可愛いのだ。
 花はいつものくすんだマントはなく、代わりに白い波紋のような模様を裾にあしらった青空色のワンピースを身に纏っていた。長い黒髪まで青いリボンで一つにくくってあり、健康そうなうなじが陽光を弾いている。
「君、そんな服も持ってたんだね」
「……指摘するの遅くないか?」
 一段と視線が冷え込んだが僕はにっこり微笑んだ。
「だって花、最初固まってたから。指摘するタイミング逃しちゃったんだよ」
「だからって今というのも変だろう、この唐変木」
「まあまあ。でもなんで普段はまるで浮浪者みたいな恰好なの?」
 すると至極当たり前に彼女は答えた。
「浮浪者だからに決まっているだろう?」
 何を馬鹿なことを、とぶつぶつ言いながらおにぎりにかぶりつく花を、複雑な気分で見詰めた。
「それに浮浪者らしくしておらんとご飯くれとか言っても真実味がないだろう?」
 それが彼女の“日常”で“普通”になってしまっているんだろう。成長が止まっていると言っていた。多分その始まり、『一年前』というのが彼女の流浪の始まりでもあるんだろう。
 一年、か。
 長いなぁ……。
「ねえ、家に来ないの?」
「くどいぞ、刻。私はな――」
 花は顔を上げ、僕を見た途端言葉を切った。それから気まずげに視線を反らして一言、「すまん」とだけ言った。
 曲げられない何かがあるんだろう。でも僕も堪らないよ。
 君がたった独り、空の下、座り込んでいるのかと思うと。
 堪らなく、悲しくなってしまうよ。
「お前……泣き虫だな」
「そうか、僕泣き虫なんだ……知らなかったよ、そんなこと。でも、やっぱり独りで居続けるのはきっと寂しいって思えてしまうから、悲しい」
「……お前には関係ない」
「友達と言ったのに?」
「……それでも」
 彼女自身も辛そうに、苦しそうに、もがくように言った。
「どうしようもないのだ――」
 救いを求めることすら苦しみになる彼女の過去は一体なんなのだろうか。知りたい。聞きたい。今すぐにでも。
 でもそんなことをしたら彼女がバラバラに千切れてしまいそうで怖かった。
 君は。
 恐怖すら僕に教えてくれたんだ。


* * *


「すまなかった」
 沈黙の中、昼食が終わり、片付けをしている時だった。花がぽつりと口にしたのは謝罪の言葉。
「謝らなくていいんだよ」
「しかしせっかくお弁当作って来てくれたというのに、私のせいで気まずい食事にしてしまい、すまない」
「謝らないの」
 項垂れた頭を優しく撫でる。
「またおにぎり持ってくるね。君、おにぎりの方が好きみたいだから」
 おかずがパッタリ減らなくなってしまったことを指摘すると、気まずげながらもうむ、と彼女は素直に頷いた。
「じゃあまた後で」
 言って立ち上がろうとしたら、慌てた花が「待て!」と叫んだ。不思議そうに振り返ると、あたふたしながら花がしゃべり出す。
「お、お前、夕飯まで持ってくる気なのか?」
「そのつもりだけど……?」
「面倒見良すぎだろうお前!」
 思わず目をぱちくりさせて花を見詰める。まさかお世話している相手に言われるとは。
「一食貰えれば十分だ! だからお前は家で食え」
「寂しくて死んじゃわない?」
「私は兎か!」
 噛みつくようにツッコむ花がおかしくてちょっと笑ってしまう。
「兎って野生じゃ単独行動するから別に寂しくて死ぬなんてことないらしいよ」
「なにぃ! 本当かそれは!」
 目を剥いて問い返してくる花の頭をぽんぽんと叩いて本当だよ、と言う。
「そうだったのか……」
 真面目な顔をしてそんなことを呟く花は本当に可愛いなぁ、と思っていたら不意に声色が変わった。
「……一度会えれば良い。十分だ。お前はお前の時間を持て」
「お腹空かない?」
「空かない」
 花はそれ以上の追及をはね除けるような眼差しで僕を見詰めた。
「私は半分怪物だから、空かないのだ。だから心配はいらん」
「……そっか」
 もう花を追い詰めたくなんてなかったから、素直に退く他、僕に選択肢はなかった。少し寂しく思ってしまうのは我が儘なんだろうか。
 その迷いが見えるのか、拒絶するような物言いに罪悪感があるのか、花の顔が微かに歪む。
 僕はせめて笑っていないと、花が笑えない。
「また明日ね、花」
 だから僕は笑うね。
 君が笑顔を忘れないように。君の笑顔をいつも願っているよって伝わるように。
「また、明日だ、刻」
 無理してでも僕は笑うよ。……時々は、ね。



*****


妹にちょっと手を焼かされましたが結構いいキャラになったかな、なんて自画自賛してました。さて。マンネリ化を避けるためにそろそろ動いてみようか。でも今回溢したネタも多いから先の展開ちょっと迷うなぁ。どっちにしようかな。いやでもせっかくの日曜日だからこっちで行こう、ってことで次回もお楽しみにー。

『花と刻』二話目です。

近未来SFちっくファンタジー小説ですがファンタジー風味は薄めです← じゃあ何小説かって? ……暫く読めば何がファンタジーかわかるので暫しのお待ちを!←

とにかくとある変わった女の子と男の子の物語、二話目をどうぞ。



*****



 翌朝。
「クッキーどうだった?」
「あげちゃった。おいしかっガフ」
 幼馴染みに殴られた。
 「酷いなぁ」と頬を擦りながらぼやく。しゃべり途中で殴られたから頬の内側に歯がめり込んで更に痛かった。
「人の気持ちを踏みにじったあんたの方が酷いわー!」
 拳を固く握り締めて怒鳴る幼馴染みは今にも第二打を放ちそうである。ちょっと生命の危険を感じるのでライフポイントの少ない僕は言葉を選んで口にする。
「お腹を空かせて困っている子がいゲハ」
「どうせ女の子なんでしょ! 可愛い幼女なんでしょどうせぇ! こんのロリコン!」
 今度は腹を殴られ教室の床に沈む僕。容赦なさすぎます柊夏日(ひいらぎなつひ)さん。
「ナツ……死ぬ……」
「……死なれちゃ困るからこれくらいにしてあげるわよ」
 不服そうながらもそう言って拳を降ろしてくれたのでほっと息を吐く。
「で、幼女だったのね?」
 まだ確認するのか。殴られなさそうな雰囲気なので素直に答える。
「小学校高学年を幼女と呼ぶなら答えはイエスだよ。なんでわかるの?」
「そりゃあ見知らぬ人に明らかに貰い物であるクッキー渡されて遠慮なく食べるなら子どもでしょう? であんたのことだからどうせ女の子だろうと踏んだのよ」
「名推理だけど最後だけ納得できないな。僕はお腹を空かせていたのが男の子でもクッキーあげるよ?」
 首を傾げて問うと、彼女はふいっとそっぽ向いて答えた。
「知ってるわよそんなこと。ただの勘よ、勘」
 女の勘って凄いなぁ、と思いつつ、さっき言いかけたことを思い出したので口にする。
「そうそう、その子、ナツのクッキーを『美味だ』って言って本当においしそうに食べてたよ。やっぱりナツは凄いよね。僕もナツのクッキー好きだなぁ」
「あ、あほぉ!」
「ぐはっ」
 なぜか三度(みたび)殴られた。
 鳩尾にクリーンヒットした拳に吹っ飛ばされ、教室後方に並ぶロッカーにぶつかり傍迷惑な騒音を立てて、やっぱり床に沈んだ。
 バタバタと、恐らく自分の教室へと走り去る彼女の足音をぼんやりと聴いていたら、今度は始業の鐘が聴こえてきた。
 なぜ誉めたのにまた殴られたのだろうと考えながら、遠く、「先生、急患がいます」「ほっとけ」という人でなしの会話を聞く。
 仕方ないので僕はゆるゆると体を起こすことにした。
 さて、今日の餌(ごはん)は何がいいかな。


* * *


「お前、なぜまたここを通るのだ」
「こんばんは」
 ブスッとした顔で睨む夜明け色の瞳の少女に、にっこりと微笑んで挨拶をした。
「『こんばんは』ではない! お前には警戒心というものがないのか! 学習能力というものがないのか! 飯を寄越せと脅す怪物がいるのになぜまたここを通ろうと考えるのだ、頭のネジはどこに置いてきた!」
「酷い言い様だなぁ」
 昨日と変わらずくたびれたマントを体に巻きつけた少女を見る。
 飯を寄越せと脅す怪物、ね。
 僕にはお腹を空かせた小さな女の子にしか見えないけどな。
「まあまあ。そういう君だって、変な男に遭遇したこの場所にまた陣取っているのも変でしょう?」
「なっ。そ、それはだな、そう、またお前が来れば簡単に飯が手に入るから場所を変えなかったのだ!」
「ならなんで僕、怒られたの?」
「うううるさい! いいから飯を寄越すのだ!」
 恥ずかしがり屋さんだなぁ、と呟いたらワゥ! と吠えられた。噛まれたり殴られたりしない分、幼馴染みよりも理性的なので安心だ。
 おかしなものだ。
 普通の女子高生は理不尽な暴力を奮うのに、野生児のごとき自称怪物少女は言葉でしか攻撃しないのだ。
 どちらの方が人間らしいのだろうか。
「何を考えているのだ?」
 訝しげに眉を潜める少女に、なんでもないよと微笑み返すと、手にしていたビニール袋を差し出した。
「はい、お夕飯。今日はちゃんとしたお弁当を買ってみたよ」
「なんだ、クッキーではないのか」
 不服気に頬を膨らましてそんなことを呟く少女に、ちょっと驚いた。
「お菓子の方がいいの? 全然お腹いっぱいにならなかったでしょう?」
「違う! お菓子ではなく、“昨日のクッキー”が良いのだ!」
 どうやらナツのクッキーが大変お気に召したようだ。しかしなぁ。
「あれは作って貰ったものだから、そうひょいひょい出せるものじゃないんだよ? コンビニ弁当で悪いけど、我慢してくれないかな?」
 彼女はやっぱり不服なのか暫く頬をぷっくりさせていたが、やがて深々とため息を吐いた。
「そうなのか……非常に残念だが仕方ない。これはこれとして有り難くいただこう」
 全く呆れる程に子どもっぽくない物言いだな、と思いながら、今回はいただきますと丁寧に手を合わせてから食事を始める少女を眺めていた。
 クッキーの時とは違い、楚々とした所作でお弁当を食べている。がっつかず、小さな口に一口で収まる量を箸に乗せて運び、静かに咀嚼する。なんだか最早別人である。
「クッキー食べてる時は何かに取り憑かれていたの、君?」
 ギッと睨まれた。少女はごっくんすると口を開く。
「失敬な。あれは非常事態だったのだ」
「空腹すぎて?」
「違ーう! おいしそうすぎてだ!」
 これはボケなんだろうか?
 首を傾げると、更に睨まれた。
「もう良い。お前に理解されたいなどとは思っていないのだからな!」
 少女はふいっと顔を背け、食事を再開する。しかしやっぱり睨まれている。帰れと言いたげだ。
「見られるのが嫌なら場所を移せばいいのに」
 もぐもぐ、ごっくん。
「食事中に立つのは行儀が悪い」
「食事中にしゃべるのは行儀悪くないの?」
「なら話しかけてくるな!」
「無視すればいいのに」
「全く口煩いやつだな。しかし無作法で不躾でデリカシーのなさそうなお前が相手だとしてもだ、無視は流石に失礼だろう。飯も貰っていることだしな」
 妙に義理堅い。
「ご飯あげてなかったら無視だったのか」
 するといきなり彼女はあーもー! と叫びだし、立ち上がったかと思えば人差し指を僕の額に突きつけた。
「お前、ほんっとうに性格が悪いな! ご飯貰ったというのはついでの理由だ! どんな人間だろうと無視されれば傷つくだろう? 哀しいだろう? お前はどうだか知らんがな、私は嫌いな相手だろうが無視はせん。自分が嫌なことは他人にしてはならんのだ。常識だろう?」
「痛い痛い痛い」
 人差し指で額をぐりぐりされた。痛いと言ったらすぐにやめてくれたが、ふんっと鼻を鳴らしどっかり腰を降ろした。彼女はよっぽど頭に来たのか、座ってからも地面をバシバシ叩いて唸っている。こういうところは駄々っ子みたいだ。いや自制しているところが大変子どもらしくないのだけれど。
 僕としてはこんな直球の言葉なんて初めて聞いた驚きが治まらない。この子生きてくの大変だろうなぁ、なんて感想が脳みその隅っこの妙に冷静な部分からポンと出てきた。
 真っ直ぐすぎて、正しすぎて、清すぎて。息苦しくて死んでしまいそうだ。そんな信念持って、些細なことにまで本気で怒るなんて。
 でもそれが彼女なんだろうな。そうでなきゃ、それこそ彼女にとって息苦しくて死んでしまいそうなんだろうな。そう考えるとストンと納得できた。
 諦め癖のついている僕には到底無理な生き方だし、一般的にもここまで正義ではなく単なる信念としてこんな生き方ができる人はそういないだろう。
 尊敬すら覚える。
「おい、何を呆けた顔をしている? 感謝の意を表しているのだから、何かしら反応したって良かろう?」
 はっと我に返ると、不機嫌そうにつんと唇を尖らせて僕を見上げる女の子がいた。言われてみて見ればお弁当は空っぽになっている。
 反射的に空箱を回収しようと手を伸ばすと、寸前で先に空箱を持って行かれてしまった。
「これの処理くらい私がやるに決まっているだろう! そこまで世話になる訳にはいかん!」
 がるー、と唸られまでしてしまう。流石に奪い返すのも変なのでゴミ捨てはお願いすることにした。彼女は満足気に鼻を鳴らす。
「ふんっ、任せろ。きちんと分別してきちっと正しい場所に捨ててやるからな」
 たかがコンビニ弁当のゴミを捨てるだけなのに大袈裟だなぁと思うが、彼女らしい。誇らしげに反り返る少女は小動物っぽかった。
「ではお前はもう帰れ。冷え込んで来た。今夜は真冬並みに寒くなりそうだからな、ちゃんと温かくして寝るんだぞ」
「君、天気わかるの?」
「盗み聞きしたテレビが昼間そう言っていた」
 少女はあっけらかんと言うが、なんだか物凄い情報収集の仕方だった。ちょっとだけ彼女のセーフアウトのジャッジ基準がわからなくなった。盗み聞きは有りなのか。まあ食料を脅し取るのが有りだから有りなのか。
「ほれ、帰れったら帰れ」
「君はどこで寝ているの?」
「お前には関係ない」
「君の名前、訊いてもいいかな?」
「知らんで良い。お前だってわかっただろう? 私は普通ではないのだ、あまり馴れ合うな」
 強がるなぁ。
 そっぽ向く彼女は、しかし自分からは帰ろうとしなかった。それがもう一つの、そして彼女の本心からの答えのように思える。
 だから僕は言葉を紡ぐ。
「『また明日』を君は信じたくなったから、ここに来てくれたんでしょう?」
 夜明け色の瞳が見開かれる。デジャヴを感じる。
「もしかしたら受け入れてくれるのかもしれないと期待して、二度目を待っていたんでしょう?」
「お、前……聴こえると思って言っていたのか?」
「そうだよ」
「あの距離だぞ!」
「でも君は離れ業を見せてくれたし、耳も普通よりもいいんじゃないかなと思って」
「お前はなんでそんな――」
 絶句する彼女に、僕は微笑む。
「『また明日』なんて、相手がいなきゃ言わないよ。ちゃんと待っててくれてありがとう」
「お前は――」
 少女は絶望の中に希望を宿した、不安そうに揺れる瞳で僕を凝視した。
「人間でなくてもいいと言うのか?」
 今更迷う必要もない簡単な問いだった。
「うん、いいよ。僕は僕を必要としてくれるなら、人間でも犬でも突然変異動物でも、願ってくれるなら隣に居続けるよ」
 僕は君と違って信念なんて素晴らしいものは持っていないから。
 心の中でそんな蛇足を付け足す。
 呆ける彼女の頭に手を伸ばすと、今度は拒まれなかった。
「それに君はとっても優しくて可愛いからね。知ってしまったらほっとけないよ」
「私は、怪物だ……」
「その事実が一体君の何を変えると言うの? 気にしすぎだよ」
 ぽんぽんと軽く頭を叩く。それから、俯いてしまった夜明け色の瞳を覗き込む。目が合って、僕は破顔した。
「僕の名前は刻。白井刻(しろいとき)だよ」
「しろい、とき……綺麗な名だな」
 ほぅとため息と共に告げられた言葉に、僕はきょとんとなった。
「綺麗だなんて……初めて言われたよ」
 白い時間。真っ白で空虚で無意な時間。そんな名前だと思っていたのに。
 いつの間にか上がっていた彼女の顔が、痛いくらい真っ直ぐに僕を見ていた。震える睫毛は長く、ほんのり赤みを帯びていることに気づく。
「……お前は、後悔しないか?」
「しないよ」
「なぜ迷わない」
「君の愚直さが気に入ったから」
「ば、馬鹿にしているのか!」
「ううん、大真面目」
 少女はむうと口を尖らせる。それから暫く考えるように俯き、次に見えたのは、力強い光を、朝焼けを宿した瞳だった。
「一つだけ約束しろ」
「何?」
 一度少女は息を吸い込んで、止めてから、意を決して言葉にした。
「簡単に死んでくれるな。生きろ。そう約束してくれるならば――」
「いいよ」
「軽っ!」
 ギャグみたいにずっこけそうになる少女に、笑声が溢れる。
「『そう約束してくれるならば』、何?」
 茶化すように促すと、彼女は般若のごとき形相で拳を振り上げて。
 言った。
「友達になってくれてやる!」
 ほんと凄い。
 僕は場違いににやけてしまった。彼女と二時間にも満たない時間を共にしただけで、一体いくつの“初めて”を得ただろうか。
 楽しい。この時間を心の底からそう思える。その幸運に、感謝する。
「お、お前、なぜ泣く?」
 酷く驚く少女に指摘され、目元に手をやればなぜか涙の筋があった。あれれ?
 ちょっと思案し、やっと気づいた。
「初めて友達になろうって言われたからかな?」
「『なろう』でなく『なってくれてやる』と言って……あああ泣くな泣くな! てかお前、友達いないのか!」
 勝手に出てくるものは仕方ないと無視するが、少女があたふたしているから多分量が増えているのだろうと判断。したところでどうしようもないのだけど。
「いないよ。幼馴染みはいるけれど、幼馴染みは幼馴染みだと思っているから友達はいない。僕は世界を広げるのが苦手なんだ。他者の世界に干渉するのは好きだけど、壊したり中に入るのは気が進まない。だから友達も作らない、そんな生き方だったんだ」
「泣き笑いながら何をわけわからんことを言っているんだ!」
「ははっ、わからなくていいよ。それこそ僕の世界、僕の勝手な都合だから」
 きっと僕の線引きが変なんだ。
 わかっている。人にはそれぞれの主観があり、すなわち世界がある。
 僕にとっての世界は、自分と家族と幼馴染み。それ以外は僕の世界の外側。外の世界は見れるし手を伸ばせば触れられるけれど、所詮外は外。
 だけど君は。
「やはりバカモノだなお前は!」
 君は、飛び込んで来たんだ。
 初めて僕の世界の中へ。遠い昔に引いてしまった境界線の中へ。
「友に遠慮なぞ無用だ! 都合を押しつけろ、エゴをかざせ! 私はそれら一つ一つに応えてやろう!」
 肩を掴んで、小さな少女は大きく息を吸い込んだ。
「だからもう泣くなバカモノ! 引きこもり生活は終わりだ、刻」
 心地よい声で、優しい言葉だった。それこそ泣きたくなるような。
 小さな手が目元の涙を拭ってくれた。手の温もりもまた、心地よいものだった。
「名前、教えてよ? 不公平じゃないか」
 指摘されてやっと思い出したらしく、はっとした顔をした彼女は、ちょっと恥ずかしげに頬を掻いた。
「うむ、そうだな……はなだ」
「花田?」
「はなだと言っているだろう! 二音で漢字一文字! ハナだ!」
 ムキになる彼女がおかしくてクスクス笑いながら言葉を返す。
「花束の“花”、かな?」
「その通りだが……そんな気障(きざ)な例えを使わんでも……」
 恥ずかしがっているようだった。そっぽ向いて口を尖らせる少女が愛らしくてにやける。
「で、僕の家に来ることは考えてくれたかな?」
「本気だったのか! と言うよりまだ答えを待っていたのか……」
唖然と問われるが僕は胸を張って「当然」と返す。暫く彼女は呆けていたが、やがて頭を左右にぶんぶん振った。
「行かん! 友達に居住まで世話して貰うわけにはいかん!」
「ご飯は貰うのに?」
「なら飯もいらん!」
 拳まで突き上げ宣言する彼女だが、多分何も考えていないのだろうな、と思う。だからおかしくなってしまう。
「ふふ。友人がカツアゲしてる方が問題だよ。物乞いになったとしても同じく」
「む、むぅ……」
 言われて冷静になった彼女が難しい顔をして黙りこくる。可愛いなぁ、とまた頭を撫でた。癖になりそうだ。
「冗談だよ。あんまり気にしなくていいよ。僕の勝手だから」
「冗談だと!? ……なら暫くは甘えさせて貰おうか」
「うんうん、いつでもウェルカムだよ」
「……って、家に来ないかという話は本気なのか!」
「当然だよってもう答えたじゃない?」
「お前の本気はわかりにくい! というかそういう問題ではなぁい!」
 彼女はいきなり宙返りし後ろに下がったかと思うと、猫みたいな身軽さでほとんど一瞬の後にまた他所のお家の屋根に立っていた。手にした空のコンビニ弁当入りの白いビニール袋が風にたなびく。
「とにかく家まで世話になるわけにはいかん! それに私は……許されていいはずがないのだ」
 顔を歪め、悲痛な面持ちでそれだけを言い捨て、去りかけた少女の背に、僕は言葉を投げかけた。
「また明日ね、花」
 少女は、花は、立ち止まると振り返りかけたが、気恥ずかしかったのか横顔止まりだった、けれど。
「う、む……また明日だ、刻よ」
 口端が緩く笑みを形型どったのだけは、良く見えた。
 転がるように消えた背中を、名残惜しむように僕は暫く見詰めていた。


* * *


 この時の僕にとって、この出逢いは父・母・妹・幼馴染みという糸(つながり)に、一つ、“友人”という糸が増えた、それだけの単純なことだった。
 今振り返ればそんな簡単に割り切れるようなものではないのだけれど、この時はそんなこと考えもしなかった。
 これは長い長い時間の中の、瞬きのような短い時間のお話。


 僕が花という女の子に捧げる物語。



*****


次回は妹を出す予定です。まだほとんど書いてないけどね。妹のキャラがなかなか定まりきらず書きにくい。妹も変なやつです←

ちっぽけな彼の世界が彩られる物語でもあるんですがどこまで行けるかな。本当の本当のエンディングは小説家になろうサイトで連載している原作的本編『蒼天の真竜』じゃないとできないのですが、この刻の物語は物語で終わりがあるのでそこまでやりたいけど、なー……遠すぎて行ける気がしない(汗)

とにかくまだまだ続くのでゆるりと花と刻の物語をよろしくお願いします!

小説家になろうに投稿するのも微妙な小説なので気まぐれにアメーバに投稿してみることにしました。最悪でも二話目までは投稿する予定← 女の子が可愛いのです!←

ではどうぞ。


* * *


 捨て女の子を拾った。
 別にダンボールに入っていたわけでも、連れ帰ったわけでもなかったけれども。
 そんな気分だった。


 晴れやかな春の昼下がり、もとうに過ぎた夕暮れ時。うすら寒さを感じながらものんびりとカバンを揺らし、帰途に着いていた。
 暖かな陽気のあった昼間とは打って変わり、人気のほとんどない原っぱを横切って行く。僕はこういった道なき道とでも呼べそうな場所を歩くのが好きなのだ。物騒だからとこの時間帯では誰もいないが、昼間であれば同意が得られるだろう心地よい風が吹き抜けている。
 このまま進めば住宅地に出て、すぐに家が見えてくるな、と思いながら少し角度修正として一歩、丈の長い草むらに足を踏み入れた時だ。

 こちらを睨む一対の瞳に邂逅した。

 目をしばたたかせる。
 絹のような黒髪と体を被うくすんだ色のマントの裾を夕風になびかせ、爛々と輝く赤みを帯びた黒瞳を、獲物を定めた獣のように向ける少女がいた。小学生の良くて高学年の頃だろう。
野生児みたいだなぁ、というのが初見の感想だった。
「やぁ。こんにちは」
 挨拶してみる。
 しかし少女は返事という返事を返さず、ぐるぐると唸るだけだ。なんだか犬のような子だなと思う。
「ああ、こんばんは、かな」
 もう夕闇に染まりつつある空を見て、言い直してみた。
「がう! そういう問題ではない! さっさと怯えて飯を差し出せバカモノが!」
 今度は怒られてしまった。しかしようやく会話らしい会話ができそうだ。僕は小さく微笑んだ。
「なんだ、時間の問題じゃなかったんだね。それは失礼。でも悪いけど、僕は怯えるとか悲しむっていう負の感情を抱くことが苦手なんだ。勘弁して貰えるかな?」
 首を傾げて問うと、少女は不服げにぷぅと頬を膨らましたが、すぐに「まあいい」と吐き捨てるように言うと、次に手のひらを上に向けて突き出した。
「くれ。飯」
「お腹空いてるの?」
 彼女は横柄に頷いた。しかしそんな素直な返答が可愛らしい。
 僕は、そう言えば貰ったけれど空腹ではなかったので残しておいていた包みがあったことを思い出し、カバンをがさごそと漁ってみる。目的の花柄のラッピングがされたそれは、すぐに見つかった。
「これくらいしかないけど、どうかな?」
 見えるように、握りこぶしにも満たない小さな包みをぶら下げる。少女は犬のように鼻をひくひくさせると、すぐに花が開くような笑顔になった。一生懸命首を前後に振り、肯定を示す。
 一々可愛いなぁ、と思うとなんだか悪戯がしたくなる。
 僕は草むらの上に包みを置く。手が離れた瞬間飛びかかろうとする彼女に、僕は「待て」と言ってみた。すると少女は不思議な程素直にぴたりと動きを止めた。
 「おすわり」と僕が言うと、お行儀良く綺麗に正座をする。原っぱで行儀もなにもあったもんではないが、しかし彼女の所作は野生児的だった割には精錬された雰囲気があり、本当はいいところのお嬢さんなのかな、と推測してみる。
しかしやめない。
 僕は包みの紐をほどき、中のクッキーを見えるようにしてやる。彼女が目に見えて瞳を輝かせたのがわかった。期待大だなぁ。まあ幼馴染みのクッキーが美味しいのは知っているから、きっと少女の絶大な期待にも応えてくれるだろう。
僕は包みから手を離すと、彼女を窺った。従順な子犬のように僕を見る彼女は、尻尾でもあればバタバタと忙しなく振っているだろう勢いだった。
 そろそろ可哀想な気もしてきたので号令を一つ。
「よし」
 少女はガバッと包みに飛びついたかと思うと、包みを鷲掴み、抱え込んだ。それからわたわたとクッキーを一枚掴むと、口に運ぶ。ハートが浮かんだような気すらした。
「おいしい?」
 しゃくしゃく、ごっくん。
「うむ、美味だ!」
 酷く満足げな笑顔で少女は答えた。ちゃんと咀嚼してから口を開くとは行儀の良い子だなぁ、と頭をよしよししようと手を伸ばすが、急に目元を険しくするとさっと避けられてしまった。
「ケチだな」
「もぐもぐ…………うっさい! バカモノ!」
 とりあえず彼女の罵倒語はバカモノらしい。なんだか某漫画のとある警察官を思い出す。イントネーションが違うのだけれども。
 少女は暫く黙々とクッキーを咀嚼していた。僕はそんな愛らしい姿をのんびりと鑑賞させて貰う。両手で丁寧に持ち、静かながらも素早くクッキーを口に含む姿はどことなくリスを彷彿とさせた。
彼女は食事を終えると僕をキッと睨んだ。
「いね! もう飯がないなら去れバカモノ! 人の食事を見るのは失礼じゃないか!」
「だってそれしか持っていないんだものねぇ。一緒に食事するのは失礼じゃないでしょう? でもそれができないんだから鑑賞しかできないよ」
「だからさっさと帰れと言っているんだ! まだ冷えるし、風邪をひいても私は知らんぞ!」
 凄んでは来るものの、なんだか心配されている模様。やっぱりいい子だなぁ、と頭に手を伸ばすが無下に払われる。
 がるぐると威嚇する彼女に、僕は逆に問いかけた。
「君だってこんなところにいたら風邪ひくよ。早く帰りなさいよ」
 しかし少女は答えなかった。急に黙りこくり、悲しげな色を瞳に落とす。
「帰り道がわからないの?」
「私は逃げてきた」
 悲壮な心が揺れて見える。
「私の帰る道など、帰る家など、ない」
「じゃあ僕の家においでよ」
 赤みを帯びた黒い瞳が大きく見開かれた。月明かりが射し込み、少女の顔を煌々と照らし出す。ふと気づいた。黒はもっと蒼に近く、赤はより鮮やかな虹彩で。

 まるで沈む太陽を閉じ込めたような瞳だった。

 しかしそれはすぐに陰った。
「……お前は何も知らんだろう。そして知らなくていい。帰れ、お前の帰るべき場所へ」
 そう言い捨てると、少女は背を向け、地面を蹴った。まるで映画のように高々と飛び上がった少女はくるりと一転して塀の上に飛び乗ると、更に高い屋根に跳び移り、瞬く間に姿が見えない遠くへと行ってしまった。
「……猫みたいだなぁ」
 僕は目をぱちくりさせてそんな感想を独り溢した。
 それから少女の去った方向に手を振ると、確かに彼女に向けて言った。
「また明日ね」
 僕は帰宅を再開した。


* * *


どうでしたか? 私的に勝手に独りであの子が可愛すぎて書いててテンション上がるんですが←

これ本気で連載しようとすると凄い展開になっちゃうのでどうしようかなぁと思ってます。でも女の子が可愛すぎるので多分暫くは書くと思うので良かったらお付き合いください。次回は名前出せるはず!

因みにこのお話は『蒼天の真竜』の百年くらい前の話になります。今のところはまあ、あんま関係ない感じの話になっているので二人のやり取りを楽しんでってくださいな。


宣伝としてこっちにも掲載してみよう! ということで、小説家になろうにて連載しているオリジナル小説『蒼天の真竜 』の番外短編をこちらにも持って来てみます。ずっと更新してなかったしね。


でまずはジャン!↓


☆初めての人も久しぶりすぎる人も安心、『孤独の森』のための予習コーナー☆


語り部:巽真太郎(たつみしんたろう)
本編(『蒼天の真竜』)の主人公で、自称ドラゴンの少年。人間外れした身体能力を持っているので、感覚が普通ではない。生まれた時から森で独りぼっちの超世間知らず。天然。本編ではシラン大好き、独り大嫌いな子です。
※本編の約4、5年前のシンです。


舞台:百数年後の日本
異常気象に天変地異により野生動物たちが特殊な進化をし、約百年前の大地震により文明のほとんどが滅んでしまった世界。
皆逞しく、現代でもなく、かといって原始時代に戻った訳でもない独自の技術で集落を作り、過酷な時代を生きている。
が、今回はそんな光景は出てこないので気になる方は小説家になろう連載の本編『蒼天の真竜』へゴーでお願いします。


はい、これがわかっていれば読めるはず!←
では番外短編『孤独の森 』をどうぞ。



 ずっとずっとずぅーと。
 独りだった。
 “孤独”という言葉の意味も、“寂しい”という感情もわからず。
 表現できない気持ちを抱えて、ずっと生きてきた。


☆ ☆ ☆


 鳥の囁きが耳をくすぐる。
 しかしすぐさまけたたましい甲高い鳴き声が響き、やがて再び沈黙が始まった。
 どうやら“あぶないの”が近くまで来ているらしい。“あぶないの”は見上げる程大きな、二足歩行の黒い毛むくじゃらのことだ。たまにこの辺りにやって来ては、森の住民を狩っていく。
 一度だけ遭遇したが、恐ろしく速く獰猛だったので即座に逃げた。
 恐ろしいものは嫌いだ。
 だからオレは最近の住処としている大樹の根元に潜り込むと息を潜め、ただ過ぎる時を見送ることにした。


 散発的に上がっていた悲鳴も途絶え、そろそろ帰ったようだという考えが浮かんだのはもう日暮れだった。今日は一日隠る羽目になってしまったので、貯蓄していた木の実しか食べていない。
 急かすようにぐるぐると鳴る腹を撫で、オレは寝床から出た。ご飯の調達が必要だ。
 長らく隠って腹を空かせているのは皆同じ。堪らず出てきた獣を捕るだけなら楽なことだ、と気配を消して歩き出した。


 四足歩行の小型の毛むくじゃらを数頭食し、大人しくなった腹を抱えて少し休んでいると、何か嗅ぎ慣れない匂いがうっすら漂ってきていることに気がついた。
 なんだろう。獣だけど甘いような匂いだ。それになんだか匂いが薄い。
 満足感の中にむくむくと好奇心が首をもたげた。
 一度も今まで嗅いだことない匂い。何とも比べられない面白い匂いだった。
 オレは立ち上がり、再び気配を極力消すと、そろそろと、しかし素早く匂いを辿った。
 匂いが薄くてわかりづらかったが、足音がすぐに聴こえてきて、思っていたよりも近くにいたことを知る。速度を落とし、息を潜めると、忍び足で近づいた。
 匂いの主はどうやら少し開けた茂みの中にいるようだった。なんと無用心な。足音から察するに、小型の獣なのに。
 そこまで考えてはたと気づいた。
 もしかしたら凄く凶暴な獣なのかもしれない。甘い匂いは誘う餌で、不用意に近づいてきたところをガブッといってしまう怖い獣かもしれない。
 そうだとしたら早く逃げた方がいい。
 もうその恐ろしい想像を掻き消すことはできず、オレは青ざめた顔で回れ右をした。
 忍び足で逃走を図る。
 その一歩前。
 突如として背後の茂みから何かが飛び出して来た。つまり、今まさに逃げようとしていた対象が現れたわけで。
「――、――っ!」
「――ぅおああ!?」
 びっくりし過ぎて声が出ない。口はあわあわと開閉するだけ。対する相手はヒュンッと鳴いた。鳴いた、はずなのに。
 意味がわかる。
 ぽかん、と突然現れたそれをオレは穴が開くほど見つめた。
 そいつは白かった。白い小さな、なんかだ。犬、という単語が頭に浮かぶが良くわからない。
 とても珍妙な生物だった。こんなに白い獣は滅多にいないし、毛が短くてほとんどないようなものだ。足も短い。恐ろしい爪も牙も見当たらないし、この生き物は一体どうやって生活しているんだろうかと思う。飛び出すんだろうか、にゅっと。それはそれで怖いなと思うのだが、全く敵意とか殺気とか、威嚇とかいう雰囲気すらないので全く怖くない。
 白い小さいのは、暫くオレを真ん丸な瞳で仰視していたが、やがて二度瞬きをした。
「こんなとこに、人間、だとぉ?」
 また鳴いた。クゥゥン、と。
 ちゃんと意味のこもった鳴き声に、感動を覚える。
 森の獣たちは皆会話としての意味を持つ声を発しない。鳴き声は音自体にシグナルとしての意味があるだけで、感情や言葉なんてないからだ。例えば、長く鳴けば危険だ逃げろ、短く高く鳴けば餌がある、という意味がある。しかしそれだけでは会話にならない。もしオレがお腹空いたね、と言っても、私は果物が食べたいな、なんて答えるレパートリーがないし、そもそも彼らにとって応える理由もない。
だから森の獣たちと会話が成立したことは、ない。
 でもこの目の前の生物は、まるでしゃべるように鳴くのだ。これなら会話が成立するだろう。
 オレは多分人生初の会話を目の前にして、緊張に震えた。
「――ぁ」
 掠れた音が漏れる。唾を飲み込み、なんとか発声になるように口を動かした。
「ぁの」
 白い小さいのはそんな試みを、不思議そうに見上げていた。
「ぁおさあ!」
「うまくしゃべれないなら、一音ずつ分けてみりゃいいのに」
 独り言のように呟かれた意見に、目をしばたたかせた。一音ずつ、か。慎重に口を開くとやってみる。
「あ、の、さ」
 すると今度は白い小さいのが飛び上がった。
「お前、俺の言葉がわかんのか!」
 オレは喉を押さえてこくりと頷いた。白い小さいのは相当に驚いたようで、短い尻尾をパタパタと忙しなく振っていた。
「すげえなお前。今まで俺の言葉を完全に理解した人間はいねえぞ。すげー」
 しかしオレは良くわからず首を傾げる。ニンゲン。あまりピンと来ない。
 そんな様子を察したのか、白い小さいのも首を傾げた。暫く鼻をヒクヒクさせていたが、やがて訝しげな視線になった。
「やっぱお前、人間の匂いしないな。人間じゃねえのか」
 まあいいか、と自己完結されてしまった。しゃべると喉が酷く痛んだので黙ってなりゆきを見守る。
「俺はな、所謂迷子なわけさ。わかるか迷子?」
「み、ち。ま、よ、っ、た?」
「そうそう。だから森の外とか、できれば人里まで案内して欲しいんだが、頼めるか?」
 その言葉に、オレは眉根を寄せた。森の外なんて行ったことないし、人里っていうのも良くわからない。
 そんなオレの様子に、白い小さいのはがくりと頭を垂れた。
「だめかぁ~。早く帰らねぇとご主人が心配する。どうにかしてとっとと帰らなきゃいけねえのによぉ」
 ちょっと可哀想だと思った。細かいことは今一わからなかったが、困っていることは良くわかったから。
 オレはそうだ! と思うと、白い小さいのを抱き上げた。
「ななななんだあ!」
 びっくりして短い足をバタバタさせるそいつにオレもびっくりして落としそうになるが、なんとか抱え直して事なきを得る。
「あぶ、あぶ、危ねえやい! 持ち上げたなら責任持ってちゃんと抱っこしろやあ!」
 ちょっと涙混じりの声に申し訳なさを覚え、眉尻を落とした。あう、という呻きのような声が漏れる。
 オレはなんて言いたいんだろうか。自分でもわからないけれど何か言わなくちゃいけない気がして焦る。けれど頭の中は真っ白だ。
「……別にそんな責めたつもりはないぞ。だから泣くなよなぁ」
 泣く?
 涙を流すことだということは知っている。でもやっぱり良くわからない。
 ぼんやりと、抱き上げた白い小さいのの顔を見つめていたら、ペロッと頬を舐められた。その舌はざらっとしていたけれど温かくてくすぐったかった。
「ほら、なんかしたかったんじゃなかったのか? それとも急に俺の魅力に負けて抱っこしたくなったのか?」
 その言葉に、さっきの閃きを思い出す。オレは頷くと、上を見上げた。
 ツッコめよ……、という白い小さいのの悲壮感漂うぼやきが微かに聴こえて目をぱちくりさせる。なぜか意味はわかったけれど……。
 ツッコミってどうやればいいんだろうか。
 仕方ないので白い小さいのの頭を撫でることで何かの代わりにする。白い小さいのは複雑そうな表情をしてから目を細めて「別に気にしてねえし」と呟いていた。
 さて、そろそろ思いつきの実行に移ることにする。手頃な木にアタリをつけ、オレは膝を軽く曲げて溜めると、勢い良く飛び上がった。
 と同時に響き渡る白い小さいのの悲鳴。危ない獣に聴こえるとまずいのですぐに手で塞がせて貰う。小さく小刻みの震えを腕に感じつつ、最初の枝に着地すると、口を塞いだ手を離した。
「なっ、なっ、なあっ!」
 うるさいよ、と非難するような目を向けると、酸欠になったかのように口をパクパクさせる白い小さいのの懸命な目と合った。どうしたのと問うように首を傾げる。
「っっっぶねえだろが!」
更に首を傾げると言い直してくれた。
「あ・ぶ・な・いって言ってんのお! 殺す気かあ!」
 首を左右に振る。そんなつもりは微塵もないのだから。
「なら何したいんだよ!」
 全く状況をわかっていないようだった。しかしうまく説明できる気がしない。とりあえず上を指差してみた。
「上……?」
「木、の」
 そこまで言ってようやく合点がいったようだ。
「木の上から、つまり森を上から見ればどっち行けばいいかわかるんじゃないか、ってことか!」
 伝わって嬉しく思いながら首肯する。しかし白い小さいのは円らな瞳をクワッと見開いた。
「でもなんか言えよ! こんなこんなこんななあ、高いとこ、来たことねえよ、こええよ!」
 チビるかと思ったじゃねえか。身震いしながら大層怯えた様子の白い小さいのにきょとんとする。
 怖い、のか。
 高いところって怖いのか。
 でも確かにこんなにふわもこした柔らかい生物が高いところから落ちたら、柔らかい木の実が弾けてしまうように死んでしまうかもしれない。だから怖いかもしれない。
 そっか。また酷いことをしてしまったのか。
「おいおい、また落ち込むのか? 好意でやってくれたんだし……まあ、俺も悪かったよ。責めちまってすまなかったな」
 優しい声に応えるようにこくりと頷く。なんとか落ち込んでなさそうな顔にしようとしてみるけれど難しい。
「はは、お前ぶきっちょだなぁ」
 笑われてしまったけど、怖さが薄れてくれたならそれでいい。少し笑うことができた。
「そういや名前教えてなかったな。オレは菊太っていうんだ」
 キクタ。
 オレが不思議そうに口の中でその単語を反芻すると、白い小さいの改め、キクタはカラカラと笑った。
「菊っていう花知ってるか? ご主人の奥方が好きなんだ。でオスだから太郎の太で菊太。単純だろ?」
 そんな風に語るキクタはとても嬉しそうで、誇らしげで。
 なんの理由もわからない巽真太郎という名前がちっぽけで、空っぽなものに思えた。
 キクタに名前を訊かれる前にオレは「行、く」と声をかけると足場にしていた枝を蹴り、飛び上がった。
 キクタも今度は大人しく口を閉じ、オレにしがみつくように身を寄せて目を固く瞑っていた。
 辺りの木よりも少し頭の抜けた木の先まで辿り着いたので、キクタの背をトントンと叩いた。
「着いた、のか……?」
 恐る恐るキクタが目を開けると、それを瞬く間に大きく見開かれた。
「これが、世界か?」
 そんな言葉に目をぱちくりさせる。大袈裟な表現だと思うが、小さくて弱そうなキクタにとって、この高さの光景は初めてなのだろう。
 オレにはただただ闇を抱える深い緑の頭が延々と立ち並んでいる光景、としか見えない。感動などなく、逆に闇に潜む者への恐怖心しか煽られない。
 けれど今はそんな感情は些細なことだ。遠く遠くを見遥かす。一番近い森の切れ目を探すのだ。
 そしてそれはすぐにわかった。
「あっ、ち」
 人差し指をぴんと伸ばし、指し示す。
「なんだって?」
 しかしキクタは見えないらしく、指し示された方向を不思議そうに見ていた。これは困った。なんて説明しよう。
 まごまごしていたら、察しのいいキクタがわかってくれた。
「あっちに行けば森を出られるんだな!」
 オレはほっとしながらコクコクと頷いた。キクタも安堵したような、嬉しそうに弾む声だった。
「よっしゃ、方向がわかりゃああとはまっすぐ進むだけだ。降ろしてくれよ、えー……あれ、そういや――」
 訝しげに眉を寄せるキクタが何か言いかけたが、それよりもなんだか後はもう一人で行ける、みたいな雰囲気を出してるキクタが大問題だ。
 オレはわたわたしながらなんとか言葉を紡ぐ。
「ひ、と、り! き、け、ん!」
「ん?」
 どうした? というように抱き上げられているキクタがオレを見上げる。
「食、わ、れ、る!」
 暫くの沈黙。
 続いてサァッと血の気が退く音が聴こえた気がした。
「な、なななんでぃいきなり!」
 ばっくばっくと大きく弾む心臓のリズムがオレの体にも伝わってきた。
 オレは頑張って説明した。大きいのがいる。肉食うのたくさん。お前小さい。食われる。
 最後には喉がひゅーひゅーぜーぜーと変な音が声と共に出てくるようになり、もういいです大丈夫ですという雰囲気のキクタに止められて説明は終了した。
「森を出るまで一緒に来てくれるかあ?」
 しょぼくれたキクタにそうお願いされた。オレは端からそのつもりだったのでちょっと目をぱちくりさせていたが、自然と顔が綻んだ。


 ☆


「お前はもっと自分を大切にしろよな。いいか? 怪我は治そうと努力しろ、そして怪我しないように心掛けろ。常識だろう?」
 お説教タイムである。
 キクタはまったくしょうがねえやつだと怒りを露(あらわ)にしていた。
 なぜこんなことになっているかと言うと、ついさっきまで木の枝を跳び渡り、森の出口を目指していたのだが……少し滑ってしまったのだ。
 それだけなら良かったのだが、キクタを庇おうとして、うまく体勢を整え切れずに落下したせいで足を怪我してしまったのだ。
 キクタが自分のせいだとあまりに繰り返すので、普段から右足ばかり使う癖があって元々痛めてたからオレのせいだと言ったら……お説教になったのだった。
「大体最初っから足を痛めてたんなら俺を抱えて木を跳び移る、なんて移動方法を選ぶべきじゃねえだろが」
 でも地上は危ないから、と言い訳をしようと口を開くが、キクタに一睨みされてしゅんと縮こまる。
 ため息が聴こえた。
「とにかく今日は休もう。別に木は動かねえし出口も逃げやしないからな。治す方が大事だ」
 でも速く行かなきゃいけないんじゃないのか? という視線を送ると、キクタは首を横に振り、きっぱり言った。
「俺の我が儘なんかよか、お前の体の方が大事だっつってんだろ? いいから休めるとこ探すぞ」
 まだちょっと怒り気味のキクタが、短い足でてくてく歩き出す。
 そんなに怒らなくてもなぁ、と思いながらその後をゆっくりと追いかけた。


 適当な茂みを見つけると、草を掻き分け潜り込み、体を丸めた。茂みの中とはいえ、やはり吹き抜ける風が冷たい。今日は寒い日だから本当はウロや洞穴が良かったのだが、近場には見当たらず、仕方なく茂みの中となった。
 不意に腕が温かくて湿ったもので押し上げられ、いつの間にか閉じていた目を驚いて開いた。
 でもまあ案の定というか、キクタだった。キクタのくすんだピンク色の鼻が腕に当たっていたのだ。というかキクタに押されているのだった。
 何しているんだろうと不思議そうに眺めていたら、目が合った。
「寒いだろ? こういう時は俺を抱っこすると温かいらしいぜ」
 ……えっと。
「さ、む、い?」
 するとキクタがピタッと一瞬止まり。
「まあそうだな。俺も寒いからくっついて温まりたいというのもあるな」
 とどこか気恥ずかしげに言った。
 オレは手を伸ばすと、キクタの体を持ち上げ、胸元に引き寄せた。確かにあったかい。
 キクタを抱えて丸くなる。初めての温もりを感じながらの眠りに、不思議な安堵を覚えつつ、意識は深く落ちて行った。


 ☆


「お前なぞ、×××なければ――!」
 酷い言葉だ。耳を塞ぎたくなる言葉だった。そんな気がする。いつか遠くに聴いた声。
 誰かが絶望の叫びをあげた。逃げるしかない、と誰かが思った。
 誰なんだろう?
 そんな疑問も淡くどこかへ溶けて消える。不意に誰かが目の前に現れた。なのにはっきりとは見えない。ぼんやりとした赤いような黒いような靄は、絶叫と同じ声で言った。
「――――代わりに、生きろ……お前が、巽真太郎だ――」
 その声は絶望にひきつれ、耳を塞ぎたくなるようなもので。
 それがオレの始まりだったんだ。


 ☆


 目を開くと、朝霧が漂うのが見えた。ぼんやりと暫く中空を眺めていたが、やがてノロノロと体を起こした。
 久しぶりにあの夢を見た。
 良くわからないのに胸が締めつけられるようで、苦しくて、悲しい。
 凝った息を吐き出し、やっと呼吸ができるようになった気がした。ふと足元を見るとキクタが転がっていた。寝相が悪くていつの間にか腕から飛び出していたらしい。
 速く行かなくちゃ。
 足はもう痛まなかった。寝たままのキクタを抱えると、オレは走り出した。
 オレに行きたいところはなく、したいこともなかった。でも今だけはある。だからキクタのために全力で走ろうと思った。
 そしてその終着点はすぐだった。
「起、き、る。ねぇ……ねぇ!」
 森が途切れた原っぱの前に立つと、キクタの体を揺すった。キクタは不意にひょこっと顔を上げる。眠たげなとろんとした眼はすぐにはっと見開かれた。
「ご主人!」
 そう叫んだかと思うとキクタはオレの腕を飛び出して勢い良く走り出していた。
 オレは。
 オレは何も言えず、ただただ立ち尽くし、その背を見送るしかなかった。
 なぜだか足がすくむ。目が熱くて、世界がぼんやりする。いきなり何かが喉元までせり上がってきて、うまく息ができない。
 でも、なんとなくわかった。
 キクタは帰ったのだ、帰りたいと願った場所へ。微かに匂いがした。キクタの体にあった甘い匂いに似た、日溜まりのような匂いが。
 そこはキクタの帰る場所なんだ。
 オレの場所じゃあ、ない。
 オレには帰る場所なんて、ないよ。
 今日出てきたねぐらだって、別に戻る必要なんてないのだ。大切なものは何もなく、住処にしたのだって、最近で。なんの思い入れもない、ただの寝床。
 オレには、帰りたい場所なんか、ないんだ。
「きう、たぁ……」
 名前、呼べば良かった。
 名前、教えれば良かった。呼んで、欲しかった……。
 帰りたいよ。誰か、どこか……温かな場所へ、帰りたい。
 そんな場所ないのに。どこにも、ないのに……。
 願ってしまう。祈ってしまう。
「行あぁ、でぇ――」
 行かないで……独りに、しないで。
 森の端っこで、息の詰まる喉を掻きむしり、オレは初めて理解した『孤独』に声なき悲鳴をあげた。

 遠く遠くに「ただいま」の声を聴いた気がした。
 オレもいつか、いつか。
 ただいまと言える場所へ――。


☆ ☆ ☆


 数ヶ月後。
 オレはとある少年の前に立っていた。彼は大層不機嫌そうな顔で振り返り言った。
「お前に、理不尽に立ち向かう勇気があると言うのならば」
 それはずっと願い続けていた温かな声。
「俺の家に来るか、シン?」
 差し伸べられた手は、大きく眩しくて、信じられなくて。オレはそれを恐る恐る握り返した。
 睨むような目つきで優しい言葉を不器用に使う男の子。オレよりも随分背が低く、不満気に見上げる夜色の瞳。腰には長く反り返った棒をぶら下げ、口を気難しげに真一文字に引き結んだ漆黒の髪の少年。
 ああきっとそうだ。
 オレは確信した。
 彼が、ミヅキシランが、きっとオレがずっと望んでいた……オレの帰りたい場所なんだ。彼の心の隣が、オレの帰る場所なんだ。
 だからオレは、たくさんの想い込めてこっそり、ただいま、と心の中でそっと呟いて笑った。






これ、本編知らない人が読んだらどう思うんだろうか。できれば感想を聞かせて欲しいです。意味わかんねえよという苦情でもいいので。


本編やほかの番外短編が気になる方は奏竜界 などから遊びに来てくださいね、待ってます!

風情のある表現ブログネタ:風情のある表現 参加中



風情のある表現か。

……五月蝿い←
違うか←

風情か。
夕方、夕暮れ時、黄昏時、薄暮。夕陽が沈む時間帯好きです。
暮れなずむ夕陽とか、いい気がする←

駄目だ、言葉の使い方が適当すぎる。

たゆたう、って好き。
歌うも、唄う、詠う、謳う、とかも。詩(うた)って読むの結構好き。

しかしブログネタの趣旨とちがくね?←

蜩の鳴く頃はホラーっぽくなってしまうけど、割かし好き。

よし風情を目指そう。


暮れなずむ夕陽を友に、私は淡々と参道に歩を進めていた。しょっぱい雫はゆっくりと上気した頬を伝う。蜩が遠くで鳴き交わし、蜉蝣が視界の端を飛び交う。川が近いのか、とぼんやり考えていると細やかなせせらぎが聴こえてきた。ほんの少し熱が引いたような錯覚を覚えながら、私は永久に続くのではないかという長い道のりをゆく。


……風情あるかな?←
山道にしようとしてたけど、思い直して参道に。なんかどっかのテストに出てきそうなシチュエーションだー。
とにかく満足したからいっか。

早起きって何時起き?ブログネタ:早起きって何時起き? 参加中


4時、5時辺り。
辛いっす。だから本当は5時に起きるところを5時半にしてたので毎度ぴったり狙いでした。3年になると1限から卒業できるので楽ー、と思ってたら油断し過ぎて最近遅刻しそう率高し←


ちょっと創作キャラを引っ張って来よう。
シンなら早起きだろうが関係なさそう。毎朝6時くらいに彼は起きてると思われます。んでロウがゆるゆる起きて、朝食ができた頃に死霊のような半分寝惚け気味なシランが離れからやってくる感じが『蒼天の真竜』の観月家の朝かな。
ヨミは……どうだっけ? ハルは早起き苦手なのは本編の通り。ミチノはしゃきしゃきしてるのが好きだから油断なく起きるから遅刻しない。スバルはしっかりしようとするけど間が抜けてるのでわりと遅刻ギリギリにダッシュで間に合う。マルタはそんなスバルに呆れ顔で、本人は苦もなく起きてる。シズカも似てるけど呆れじゃなくて超笑顔で見送るだろう。半田は普通に起きれるけど暫く眠そう。美崎は余裕でさっぱり起きる。
って、ほとんどイメージだな。

眠い。

『ドラゴンと僕と彼女と』なら、僕は半分寝た状態でうろうろしそう。彼女は起きて暫くは不機嫌そう。ドラゴンはパチッと起きるんだろな。


お久しぶりです。
そんで早速ブログネタ。


太ったらどこに肉つく?ブログネタ:太ったらどこに肉つく? 参加中


腰、なのかな。ウエストの変動が半端ない。春休みや冬休み明けは大抵ぴったりなズボンははけないか、ギリギリ過ぎてはきたくなくなる。二週間くらい活動すると大体またはけるようになる。夕飯をあんまり食べてないと逆に余裕のあったズボンがベルトなしにははけなくなる。極端だね。

あと脇腹が結構。太った時はそうでもない気がするけど、あんまり食べれてない時期は段々骨が浮き出てくるから危険← お金がないんだよっ。

あと腕時計。普段は四つ目で留めてるけど、太ると五つ目、痩せると三つ目でないと留まらなくなる。意外と顕著。

あとは顔もか。昔の方が丸っこかった気がする。あまりに痩せすぎた時期は顔色悪いってひたすら言われました(汗) 今は普通?

太ったどうのこうのなんて大学まで気にしたことなかったけど、大学からは変動が目まぐるしくて大丈夫かと思う。

・良く食べるようになった
・遅くなる日は夕飯抜きに限りなく近くなった
・行動範囲や地域が変わったため運動量が変わった

のせいだろう。食べれる時はガツガツ食います。

ああお腹空いたな……。



ちょっと創作のお話。


最近は空想科学祭ファイナルに出したいなぁと思ってる『銀河スイッチ』というSFらしきものを書こうとしてます。

だから『蒼天の真竜』の更新ストップしておりますごめんなさいm(__)m

『銀河スイッチ』、今回こそは書き切りたいところ……。

なんとなく気分で連載しない小説ネタの嘘予告をしてみる←
タイトルは『星降る世界の終末譚』。

☆ ☆ ☆

星が降り注ぐ世界は緩やかな闇に呑まれそうとしていた。
太陽が光らなくなり、月が消え、星だけが照らす世界。しかし唯一の光である星も刻々と墜ち、減っていく。このままでは世界が終わってしまう。
破滅から救う手段はただ一つ。世界の中心にあると伝えられる太陽の宝珠を解き放つこと。世界を救うために多くの者が旅立った。
しかしそんなこと関係なしに旅に出る者もいた。
人が支配できるのは火のみ。空の灯りは消えていく。それはどうしようもなく、真っ暗闇に世界が沈み、生き物が沈み、最後に残るのは静寂のみだ。
「でも案外今までみたいに普通に生きてけるかもしんねえじゃん」
「そうかもしれないし、そうでないかもしれない。誰にもわからず、でも闇の中の未来は怖いから、足掻くんだよ」
終末に向かう星降りの世界で出逢ったのは超不幸体質な『泣き虫』と酒豪の『ウィリック』。光の死んでいく世界で出逢った二人は世界を救わない、ただの旅人だった。
「月の宝珠を探すんだ」
これは光を巡る物語。
星降る世界の終末譚。

☆ ☆ ☆

結構気に入ってる話だからやりたいんですけどねー。世界のイメージとしては『テガミバチ』な感じ。てかそこが出発点だったかも。
みんなあだ名を使って本名は隠してる設定です。
泣き虫だから『泣き虫』のナキ。酒豪大会で貰った名前『ウィリック』(酒名)を名乗ってるウィリー。……よく考えたらあだ名の愛称とかややこしい。でも『泣き虫』とかは単品じゃ使いづらいから、基本的にあだ名から更に呼称をつける感じ。
てかこの話、面倒な設定がいろいろあってどこまで残すかなぁ、と悩むと終わらない、てか始まらない、問題な話です。

ナキは凄いのにしょぼいし外れてるし運もないので酷い目に合って。
ウィリーは運がいいし、剣の腕も立つので飄々と生きてるけど面倒事に敢えて突っ込んで行ったりしちゃう。
話はそんなナキの『月の宝珠』探しにウィリーが付き合う話です。
宝珠は光る星と対になっている地上の星と言われるもので、太陽の宝珠があれば光が戻り世界が救われると言われているが。月は太陽の光を受けているだけで恒星ではないから宝珠なんてないだろう、と言われる中、ナキは月の宝珠探しをしてます。

まあ確定してる設定はそんなところ。書きたいけどなぁ。
最近連載するつもりのない『蒼天の真竜』の序章の続きをなぜ延々書いている……なんでだろ?

そしてやっとかなり今頃だけど、小説の文中の言葉遣い、というか漢字とかの統一をしよう、と動き出しました。

今はちまちま書き方のルールを書き出し中。意識してみると案外唸って考えなくても、生活の中でふと気づいたりするもんなんだなと思った。

「分けるとわかりやすいよね」って文章を打ってて、あ、分けるは漢字がいいな、わかるは平仮名で統一した方がわかりやすそう、というのを発見した時はちょっと目から鱗な気分だった。

無意識になんとなくやってたりしたけど、気づいたのでこれからは統一しよ。

他にも気づく、見つけるとかは「付」じゃなくて「つ」「づ」にすることにした。堅苦しいし、漢字が詰まった時は鬱陶しいかなと思って。

ラノベの書き方的な本を読んだ影響でやり始めたんですが、今までちょいちょい漢字とかで迷って以前と違う選択をしてる時があったやだなーとは思っていたけれど……完全スルーでしたね←

今度からはある程度ルール決めてやりますよ。台詞の中のはキャラに合わせた漢字とか言い回しで行きたいので、まあキャラ毎に小さいルールも途中作ってけばいい、のかな?

さてさて。なんか『蒼天の真竜』脱線したまま帰れなくなってるけど大丈夫かな?← 明日更新はとりあえずする。毎度ギリギリになるのはなぜだー。

怠け者だからか。最近ボカロに浸かり過ぎて戻ってこれないんだよな。ボカランに旅立ってしまうとなろうに戻れない……←

レンが可愛すぎるのがいけないんだ!← いやレンを可愛くしすぎるレン廃なPたちがいけないのだ!←←

ほんと、ね。こないだ見つけた鏡音オンリーなヒダリガワすらっしゅPはわりと正常な人で普通に和めたけど……思ってたよりレン廃タグって重症患者だらけだったんだね← もう声と見た目とキャラクターが好きって言ったらもう全部好きってことで鏡音レン愛してるとか言ってもいいよな、結婚考えていいよな!← とか考えてしまう← ……誰か私を正常ルートに戻してくれー。ウォークマンの中身がどんどん病んできてるよ。誰にも貸せないよ。

いやでも抵抗が微かにあるからまだ染まりきってはいないのか? だがもはやどうでもいい。レンが可愛ければどうでもいい← 可愛すぎだろ~。

……「可愛過ぎる」「可愛すぎる」、「浸かり過ぎて」「浸かりすぎて」……どっちに統一するかな←
 雨だ。
 3月の雨はまだまだ冷たい。時計を見やると短針が2を指し示していた。しとしとと降り続ける雨音をひとしきり聴くと、僕は。
 寝た。

◇ ◇ ◇

 起きるとまだ雨が降っていた。ふと時計を見ると短針は1を示していた。いやこれはもしやタイムリープしてるので「な訳あるか!」
 おっと、読心先読みツッコミが出たな。
 僕がちょっと満足げにウキウキと後頭部にチョップを食らわせてきたその人を見上げた。
 彼女は人のベッドの上で堂々と仁王立ちをしていた。しかも土足。全く酷いドエスだ。
「お前は本当に重症なドエムだな……で、いつまで寝ているつもりだ?」
「タイムリープが終わるまで、もしくは朝になるまで」
「そもそもそんな超常現象は始まってねえし、もう昼の1時だ十分過ぎるだろコラァ!」
「うんうん、起きるよ。あとついでに愛してるよ在(あり)」
 にっこり笑ってそう返すと彼女は真っ赤になって背中を蹴っ飛ばしてから。
「……ありがと螽斯(しゅうし)。私も、だから……」
 かっわいいなぁこの~、とか考えてたらまた蹴っ飛ばされた。
 素直じゃないなぁ。



◆ ◆ ◆


日記的に一日の総まとめ的な短編を書こうと思ったらこんな話になった。いや後半は全く関係ないけどな。キャラの名前がアリとキリギリス(螽斯)なのも特に理由はない。さりげなく『読心術を使って先読みしてツッコミ』が気に入ってたり。しかも日記とか言って、日付的には今日だったけど内容的にはぶっちゃけ昨日だ。
一応降っていた雨と昨日のマイブームちっくだったタイムリープ(初音ミクの『カゲロウデイズ』)が組み込まれてます。
螽斯って名前は、名前を考えてたら蟻が出てきたのでわざわざキリギリスの漢字を調べてみた結果。普段はあんまり下調べしない癖に変なとこ拘るな。
まあちょっと楽しかったのでいいや。しかしなんか自分の行き当たりばったりの展開が単純過ぎて嫌気がさしてきたからちょっと考えよう。とりあえず困ったら、またはネタがない時は、好きなツンデレに流れがちなところを直したいな。
脱テンプレート!
読心術ネタは他でも使うかも?
さて日記小説。続いたら続くかも。
おしまい。