■初めてお読み下さる方へ・・・
この話はノンフィクションです。
【出演者紹介】
オーナー(Oさん)・・・年商二億のイベント会社を新興宗教の詐欺にあい、潰す(-_-)
多額の負債を抱え、再起を目指しライブハウスを始める。バツイチ。
元デザイナー(Kさん)・・・自称「国際プレイボーイ」。
見た目はヒゲに細身の優男。
元はデザイナーとして、県の仕事も請け負っていた。バツイチ。
大男(Tさん)・・・30歳にして1000万の借金を風俗で作る。サラ金を踏み倒したり、そのまた先の借金返済のため、夜も昼も働く。・・・が、寝坊したりとだらしなく、勤務先社長に頭を丸められる。
ママ・・・元バーのママ。
このライブハウスで再起をかける
第十六話 「霊の思い、人の思い」
色々な来客に困り果てながらも、私とオーナー、それにSちゃんは、お店を盛り上げるため変わらぬ日々を過ごしていました。
みんな、一生懸命でした。
それだけは、事実だったんです。
私たちは、その頃一週間に何回も霊能者さんの喫茶店に通い、どうすればいいかアドバイスをもらっていました。
Sちゃんの服装は、割合黒やグレイ系が多かったんですが、白い服がいいと言われればすぐにTシャツを買いに行ったり。
この場所に観葉植物を置くといいと言われれば、すぐに花屋さんに急ぎました。
実際、彼女の顔を見るだけで、私たちは何か救われるように信じることが出来たし、彼女もホントに親身になって私たちに言葉をかけてくれたので・・・。
その日、私とSちゃんは、開店時間に向けて壁の額を拭いていました。
ふと、厨房を片付けていたオーナーのもとに、Sちゃんが 一枚のカードを持ってやって来ました。
「これ、なんだか凄いビリってしてん。
オーナー、ちょっと持ってみて」
それは、このライブハウスがオープンした際、オーナーが可愛がっていた女性ヴォーカルの子の書いたグリーティングカードでした。
「開店おめでとう。
これからもよろしくね!
一緒にお店をもり立てていこう!!」
短い言葉に、サインが添えられた、ほのぼのと可愛いイラスト入りカードでした。
オーナーは手を差し出し、それを手に・・・
その途端・・・
オーナーは激しく震えだしたのです。
「こ、これ・・・
凄いしびれる・・・
凄いの憑いてる・・・
やばいかも・・・
かなちゃん、霊能者さんに連絡してくれんか・・・」
顔は青白く、目もうつろで・・・
私は慌てて電話をしました。
そうしていくうちにも、オーナーは椅子に倒れ込み、
カードを渡したSちゃんもみるみる顔色を変え、カウンターに突っ伏すように座り込んでしまいました。
「大丈夫?」
私は一人、ただただ慌てるばかりで何も出来ず・・・。
そうこうしているうちに、霊能者さんが来てくれました。
状況を説明すると、
「これは、生き霊ね。」
と・・・。
それから塩をふり、オーナーの背中に手をかざし、除霊を始めました。
それは、グリーティングカードに取り憑いていた、ヴォーカルの女の子の生き霊でした。
彼女は、オーナーがこのラブハウスをオープンした際、とても可愛がっていたバンドのヴォーカリストでした。
オーナーは、このバンドの演奏出来る場所を作りたいという気持ちから、このライブハウスを作ったそうです。
オーナーからの営業で、ホテルやイベントでのライブも何度かしたそうです。
でも、オーナーは、この頃からギャラの未払いを繰り返し、最後の頃は酷く険悪な雰囲気の中、彼女たちはここを去ったそうです。
この話しは、彼女たちがいた頃を知ってる人から聞いた話しです。
その時の恨みの念が、このカードに残っていたということでした。
生き霊・・・
仮にその時はもう、そういう気持ちがなかったとしても、その場所に残してしまった念は、消えないそうです。
そして、それが今回のように暴れ出した場合、彼女もどこかで苦しんでいるそうです。
霊も怖いけれど、でも生きてる人間の念は、それ以上に強力でした。
こういうことを目の前で見ると、ホントに世界が変わります。
人を恨む気持ちがこれだけの念を残す。
わら人形が効果を出すのも頷けます・・・。
ただ、逆のパターンとして、誰かの幸せを祈る気持ちも、こんなふうに日常からかけ離れたことを起こすのだとしたら・・・
恋のおまじないや、願かけも気休めではないんだと思えます。
人間の未知なる力・・・
マイナスにもプラスにも、その気持ち次第ということなんですね。