隣のおばあちゃんに
紫陽花をいただいた
7~8年前にいただいて
地植えしてた
おばあちゃんは100歳を超えたご長寿で
わたしのことを
気に入ってくださって
あれやこれや
面倒みてくださって
お花もいろいろくださって
親しくお隣付き合いしていた
その中で
これ、お植えになって!と
紫陽花をくれたのだ
小さな苗木だったが
ちょっとずつ大きくなってきてた
6月の
夫との別れという
自分に起きた
天変地異で
今年はすっかり忘れていて
昨日久しぶりに見たら
枯れてた
もうすっかり枯れ木の束
水をいくらかけてももう死んでる
紫陽花の枯れ木
土曜日の仕事が終わり
一人のリビングで目を閉じて
ソファの上で
じっとしている
永遠にしててても
誰も文句も言わない
つくづく
もうあの人は
この世界のどこにも存在が
なくなり
2階の寝室の棚に
お骨が置いてあるだけに
なってしまったんだな
と思う
ここのところ毎年の
猛暑で
窓から見える紫陽花は
夏場に
水をやらないと葉っぱがしなしなになり
葉が折れてくるので
毎年
パパ!水あげないと大変かも
とわたしが言うと
毎朝水を上げるためにちょっと早起きして
水を撒いていた
紫陽花って正直で
水をあげると夕方には
葉っぱがシャキッとしてくる
今年は夫の不貞や嘘がばれて
一月から
毎日精神的に激しい葛藤を
二人で
繰り返して
紫陽花のことなんて
話題にもしなかった
夫は6月に入る頃には
シワシワのヨレヨレで力なく
微笑むだけで
髪の毛も真っ白になって
どんどん痩せてきてしまい
わたしの話すことに
応える気力もあまりなかった
もう紫陽花をくださった
おばあちゃんも
紫陽花も
夫も
亡くなってしまった
楽しく明るかった幸せな
日常が失われた
ゴミを出した日は
玄関を掃いて蜘蛛の巣
がつかないようにして
雑草を10本くらい抜いて
ちょっとだけ
水を撒いている
うらぶれた未亡人の家に見られたら
悲しいから
体裁を繕ってる
夫がいなくても
ちゃんとしなければ
なんて意志はない
本人達は死んだことにも気づかない
わたしだけがそのことに
強烈にやられている
どれも亡くなったからって
どってことない
ただそこに
夫も紫陽花もおばあちゃんも
二度と
見えないってだけ
そこに何か意味を見出すのは
わたしだけ
取り返しがつかないってことを
思い知るわたしだけ