古墳時代のノルマたち 第1幕 | 人生は唄方

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くらやみのくも

私は、ベッリーニのオペラ「ノルマ」がこの上なく好きだ。


マリア・カラス演じるノルマ

ノルマは、古代ローマ帝国の支配下となったガリア、その一部族の巫女である。


そしてまた、
私は、古代人の営みが埋蔵秘沈されたこの奈良の土地で、巫女たちが生きた時代に想いを馳せるのが好きだ。




【第1場】奈良県橿原市 素盞嗚命神社

独立した小山の頂にその社はある。



この鳥居には名が無い



本殿は基壇の上に据え置く春日造である。
古くは春日大社の式年造替の折、吾背負:ワッショイされて持ち込まれていたのだろうか。

祭神はスサノヲノミコト

これは明治43年に制定されたもの


当時、全国で進められた神社合祀によるものか。

土着の祖神たちがネームバリューのあるスサノヲに摂収された例は数え切れないほどあっただろう。

行政からそのような指導があったのかもしれない。



そして、この社には表札がないままである


スサノヲを名にし負えない事情




しかし、これは山である。

山を築く行為。


つまり、墳墓。



王の墓



目と鼻の先には陵墓がある。


標高を計測した

素盞嗚命神社 約97.1m

孝元天皇陵墓 約97.2m(禁足地の玄室頂上はさらに3m以上の盛り土がある)


一部族の王の墓を、天皇陵と同じ高さに築くことが許されたのか?



飛鳥を治めた蘇我氏の力を誇示するためだったのか?

しかし、朝廷の従臣であれば、そして廃民の咎を受けた豪族の末裔は、自分たちの祖魂の名を背負えなかったのである。


だから、ここは「山」



大和国風土記がこの山の神を語ることはもうない。