小さい頃は仲良かった。
勉強机が横並びに置かれてて、進研ゼミを解いてた。
1日のノルマが終わるまで部屋から出られなかった。
トイレも許可がないと行けないよ。
小さなメモ帳に、文字や絵を書いて姉とやりとりしてた。それが唯一の救い。
母親が背を向けてエレクトーンの練習をしているうちにメモ帳を渡す。
楽しかった。隣にいてくれて本当によかった。
ひとりじゃない。私たちはつらい時代を一緒に生きた戦友。
でも、ずっとそうではなかった。
小学校高学年頃、母は姉にばかり力を入れるようになった。
姉は音楽の道に進むことを決めたから。
それはかつて母の夢だった未来。
母は、自分の写し身みたいに姉を熱心に扱っていた。
力のある音楽の先生を見つけて、毎月県外に2人で通っていた。
私は知っている。姉が苦しんでいたこと。
学校では保健室にいがちだったこと。プレッシャーにやられていたこと。自分の髪の毛を抜いちゃう病気になったのは、母からのストレスが原因だってこと。
今はもう、姉とは親しくない。
私は未だに戦友だと思っていて昔みたいに仲良くしたいけど、どうやら洗脳されているみたいだね。
「あいつは父親の肩を持っている。」
とでも言われたのかな。
私が気づいてしまったから。
この家にはカメラも盗聴器も発信機もないことに。
車に発信機を仕掛けているのは母の方だということに。日記を勝手に読んでいるのも、ドアに耳をそばだてて盗み聞きをしているのも、全部彼女の方だったということに。
早く、洗脳が解けるといいね。
間違っているのは父親の方じゃなかったよ。
聞かされていた話は全部ウソだよ。
気づいて。離れて。
鎖に繋がれたまま、人生が終わってしまう。
自由になって。幸せになってね。
この部屋は、私たちが監禁されていた部屋。
エレクトーンと姉の勉強机はあるけど、私の勉強机はもうここにはない。