どんなことだって

 

どんな状況だって

 

絶対なんてことはない

 

だからこそ

 

今この瞬間。

 

諦める必要なんてない。

 

なにか策があるはず。。。

 

 

 

 

 

 

 

映画がひたすら流れている。

 

男性が姿勢を変えたり言葉を発する度に

 

私はビクつく

 

映画を見ながら考えていた事

 

私から玄関までの最短ルート

 

そしてこの悪魔2人の隙をいかにつくか

 

考えろ。

 

 

とりあえず映画を見る姿勢は体育座りだ。

 

体育の授業で習った記憶がある

 

体育座りから素早く立ち上がる動作を

 

身体よ、あの感覚を覚えていてくれ。。。

 

故にこの臨戦体制ともとれる体育座りをセレクト。

 

そして映画はクライマックス

 

2人は集中しているようだ

 

先ほどまでは少しの会話があったが今は完全に映画にのめり込んでいる。

 

ん?まさかチャンスか?

 

いやいや。

 

集中している映画を私の脱獄によって邪魔されようもんなら

 

ただでさえ殺すことは確定しているのに

 

より残虐な殺害方法を選ばれるかもしれない。

 

自らの死に様を左右する決断を急ぐ必要は皆無だ。

 

焦るな。

 

自分に言い聞かせる。

 

 

 

そしてその時が来た。

 

 

映画が終わった。

 

 

 

 

 

 

 

男性があくびをする

 

女性が伸びをする

 

 

「今だ!!!」

 

 

私は叫んだ!!

 

シミュレーション通り素早く体制を立て直し

 

全筋力を足に集中させる。

 

筋力によって膨張した足で壁を蹴破る。

 

 

 

 

 

 

はずだった。

 

 

 

 

玄関しか見ていないはずの私の目は思わぬところに目を移していた。

 

 

それは伸びをしている女性のちらっと見えた

 

 

 

お腹だ。

 

素晴らしいくびれ

 

美しいへそ

 

男性の本能としてそのボディに釘付けになることは抗えなかった。

 

 

 

 

しまった!!!

 

 

コンマ一秒動きが遅れる

 

隙を見せた私の敗北率は98パーを超えていた。

 

 

 

「今日、泊まってく?」

 

女性が元カレに聞く。

 

なにかの隠語か?

 

この期に及んでまだ隠語を使うのか?

 

もうすでに殺意バレバレだというのに。。。

 

 

 

 

 

 

「おん、まだ服ある?」

 

「あるよー」

 

 

 

このカップルは頻繁にお泊りをしていたようだ。

 

なんとハレンチな殺人鬼たちだ。

 

私を殺した快楽を思い出して今晩も性交渉に臨むのだろう。

 

 

しかしそれはある意味チャンスである。

 

きっとこの殺人鬼たちの頭はその私を殺害した後の性交渉で頭がいっぱいであるはずだ。

 

 

欲に溺れた人間ほど弱いものはない。

 

 

勝機が見えてきた。

 

 

次だ。

 

 

次。

 

 

次にチャンスがあったら女性の腹が見えようが

 

胸部が見えようが脇目もふらずに逃げる。

 

 

心に誓い私は自分の荷物をそれとなくまとめた

 

 

すると女性から思いもよらぬ言葉が発される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、またサークル来てね!

帰り道気を付けて!」

 
 
 
 

ん?

 

 

なんだ?

 

どういう意味だ?

 

まるで私に帰ることを促しているとも取れる発言。

 

元カレも

 

「気をつけてな」

 

と吐き捨てシャワールームに消えた。

 

 

 

 

 

どういうことだ?

 

拍子抜けだ

 

殺さないのか?

 

私は囚われの身じゃないのか?

 

ここに留めておきたい存在じゃないのか?

 

 

なんか映画を見終わった瞬間。いや、映画を見ている途中あたりから

 

 

なんだか私に興味がなさそうというか

 

なんとなくであるが私が要らなそうな雰囲気が出ていた。

 

 

殺す理由がなくなったのか?

 

なぜだ。

 

この圧倒的な帰れ感。

 

 

ははーん。

 

分かったぞ

 

そうやって俺を油断させて後ろから仕留めるつもりだな?

 

そう簡単にいかせるもんか

 

私は女性の部屋にどっかりと座り

 

元カレよろしくケータイをいじってその場に留まることにした

 

そうするとやはり女性は焦ったように

 

「もう遅いから!」

 

とか言い出した。

 

ふっ。その手に乗るものか。

 

優しく帰すフリをしたって私は騙せないぞ

 

元カレがシャワーから出る。

 

「あれ?まだいたんだ」

 

元カレが言う

 

どうやら私のキレ者具合に驚いているようだった。

 

女性が言う

 

「もう私達寝るからさ!」

 

何を言っているんだこの女は

 

そんな甘い文句にのるものか

 

私はほくそ笑みながらケータイをいじり続けた

 

 

 

形勢逆転

 

 

 

 

先ほどまで死に怯えていた男がここまで驚異的な存在になるとは彼女たちも想像していなかっただろう。

 

 

 

「もう帰ってくんね?」

 

 

元カレが語気を荒げる。

 

 

久しぶりにビクつく身体。

 

 

 

 

ついにマジもんの殺意を見せてきた。

 

本性のお出ましだ。

 

私は当初の計画通りに光の速さで玄関まで駆け抜けた。

 

これは私の意思だ。

 

私は脱獄したのだ。

 

彼らを出しぬいたのだ。

 

決して彼らに邪魔者扱いされてその場を退いたわけではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生きてる。

 

 

家に帰る。

 

 

 

今頃あの殺人鬼たちは悔しがっているだろう。

 

こんな獲物に逃げられて

 

ふふっ

ショックすぎて性行もできてないんだろうな

 

 

そう思うと笑いが止まらなかった。

 

 

それからちょいちょい女性から連絡は来た

 

仕返しをすべく家に行っていいか何回か聞いたが

 

 

もう懲りたらしい

 

 

 

もう二度と家に呼ばれることはなかった

 

 

ビビっているんだな

 

 

情けねぇ

 

 

こうして私は新歓の時期にサークル活動に満足に参加することができなかった。。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

fin.

 

 

 

 

 

次回から!

 

 

 

 

サークル飲み会編突入!!!