朝焼けの名残りだろうか…
目の前に広がる空は薄グレーの雲に少し
ピンク色が混じり、
仕事へ行くのが面倒な気持ちに癒しを与えて
くれる。


遥か遠くに見える山は、空気が澄んでいる
のかいつもと違うはっきりとした表情
を見せ、存在力の貫禄と美しさを放つ。
緑色から赤茶色へと染まりつつある山肌は、
もう中腹まで秋の深まりを教えてくれて
いた。



鳥たちが身を隠す木々は葉が落ち、
冬に備えて裸になり、
自分の勤めを果たした枯葉は、車が通る
たびに、最期の自由を手に入れ舞い上がっ
ていた。


道端の木には、鳥たちの巣だろうか、沢山
の小枝が一つに固められ、木自体を家として
使われていた。





君さ、何ぼんやりしてんの?
ボンネットがすげぇ傷が付いてんだけど。


はぁ?!
いつも話し掛けてくるアナタが悪いんで
しょうが。
アナタの仲間だと思われたんだぞ!
カラスにどうやって弁償してもらえば
いいんだよ。


ハハハ…
君はとうとう俺たちの仲間だな!
歓迎してやるぜ。
明日、歓迎会やろう!
野うさぎで乾杯だな。



僕は人間なのに、別のカラスの縄張りに
入った途端にボンネットを攻撃されて
しまった。
マジで、アイツの仲間だと認識されて
しまったのだろうか?
また遠くの方でカラス達が待機している。







入院している患者の気持ちを何も考えて
いないのだろうか…
ただ清潔感だけを重視した白色一色
で塗られた味気ない部屋で、ぼんやり
天井を眺めていた。

僕の記憶は途切れ途切れで…
あの時、カラスとの時間は覚えている。

事故を起こしたであろう僕は、
怪我が落ち着いた頃、警察官から事情聴取
を受けたとしても…
僕、あの時、カラスと一緒に電線の上に
居たんですとは言えず…

とりあえず思い出せないふりをした僕は
記憶障害として扱われた。


…いや、
車を運転していた僕の方は本当に記憶はない。
僕はあの時…
あのカラスと一緒に居たんだから…

病院の外の大木で、身体を休めているカラス
を見ながらあの時の記憶を一つずつ
繋げてみていた。