仕事の業種を詳しくは書かないが、日課の一つに「予約していた品が届きました」と、お客さんに連絡する業務がある。

もう何年もやっているけれど、未だに慣れない。
教わった当初に作ったメモを開いて、それを読む。

一度雨に濡れてペンで書いた文字が滲んでしまって、2代目は鉛筆で書いてある。
尚且つ今は基本的に職場に置きっぱなしにしている。家に忘れたり、大雨で駄目にする心配が少ないからだ。

流石に台詞を覚えてきたからメモ帳が手元に無いなら無いでそのまま済ませることもあるのだが、咄嗟に出てこなくなることもあるので、できるだけ目の前に置くことにしている。

かなりの棒読み。
でも、どの支所からの連絡なのか、いつまでに取りに来てもらいたいのか等の情報を正確に伝えることが大事だから、うっかり飛ばしてしまうぐらいなら、棒読みでもメモの通りにしっかり喋った方が良い。

7を「しち」って言うと1と聞き間違えるかもしれないから「なな」と言ったりする。
でも競馬の実況みたいに2を「ふた」とまでは言わない。
「ふつか」と「はつか」も聞き間違えやすいかなと思う。2日を「ににち」とまでは言わないが20日のほうは「にじゅうにち」にすることもある。

こだわりというにはあまりにささやかだし皆当たり前にやってるのかもだが。


色んな相手がいるから、相手によって多少喋り方や内容を変えることがある。
早口で急いでそうだったり、駅など外出中っぽい音がしていたりしたら少し早口で喋ったりするし、ゆっくりの人にはゆっくりめで。
しょっちゅう連絡していて期限があることを既にご存じのいつもすぐ来る人が「早めに行きます」と仰ったら期限を伝えずに済ませることもあるし、この連絡先はあまり見ないなあと思った時や、ふつうのと違う条件がある品物の時などは確認しながら丁寧めに伝える。



留守電の時は、喋る相手がいない状態なので、ますます棒読みになる。

自分が電話に出た時に相手が喋り出すのを待つ時があるし、「はい」って聞こえない時もかけた側から話すのが礼儀かなと思って話しはじめるが、話しはじめたタイミングで「ただいま留守に…」って聞こえてくるとバツが悪い。

あとしょうがないんだけど、呼び出し音数回→切り替わって内線?の呼び出し音数回→間→応答メッセージ、とかだとかなり時間がかかる。

最近では最初に「この電話は迷惑電話防止のために録音されます」云々が入ってたりするご時世。

色々あってやっと留守電になり、メッセージを吹き込み終えそうな時急いで電話に出てくれて、もう一度喋ったりする場合もあって、それが一番長くなるパターンかも。なんか間が悪くて恥ずかしい。

留守電で連絡できた時はそう書いておく決まりなのだが、最近は自分の名前より「留守電」って文字の方が回数書いてる気がする。



困るのが、何を言っているのか聞き取れない時。
電話が遠かったり電波がおかしかったり、小さい子や、ろれつが回ってない状態の方が出る場合もある。
音や声が全く聞こえてこない時や、明らかに通話中なのに無言のままで、一呼吸置いて切られることも。



ただ連絡するだけなのに大袈裟なと思われるかもしれないが、プライベートでも電話をかけるのも出るのも苦手だから、今業務内容に電話があって曲がりなりにもやれていることが奇跡のように感じている。

面接の時に「電話をかける仕事がありますが大丈夫ですか?」と聞かれた。
(履歴書に苦手って書いたんだったっけ…?)
「得意ではありませんが、頑張ります」と答えた。



基本的には「物が届きました」というシンプルな朗報なので伝えやすい。
これがセールスや、細かい手順があったり、電話を受ける側で電話をしながら色々やらなきゃだったり、クレームを聞く側か何かネガティブなことを伝えなきゃいけない電話だったらと思うとめちゃくちゃハードルが高く、そういう仕事をしている人ってすごいなあと思う。

若い頃、お芝居のチケットを取るために某劇団に何時間も電話をかけたりしていたので(ボタン押すだけで済んで話さなくて良いので電話でも大丈夫だった)勝手に親近感を感じていた、某有名チケットサービス会社のアルバイトの面接を受けに行ったことがある。

説明を受けた後、試しにやってみることになり、受けた1件目でお客さんが怒りだして、血の気が引いた。(責任者に代わってもらった)
そのまま雇ってもらえそうだったけど、無理ですと言って帰ってきた。

今考えると「こいつ無理だな」って奴にはクレイマーのフリをした偉い人が引導を渡したりしてたのだろうか…?
そんなことわざわざしなくても「合格だったら連絡します」って言っときゃ良いわけだから、やっぱり単に運がなさすぎたんだろうか。
でも応答がモタモタしていたはずなので、お釈迦様でもブチ切れた可能性はある。