(テーマは存在するようですが、一貫したストーリーはないように思うのでネタバレは気にせずに書きます。
中身を知りたくない方はご注意ください。)


記録によると最初に観たのは2014年。
「相棒劇場版III」を観終えて出てきた時にポスターを見かけて、
「えっ、第一人者のフラメンコを映画の料金で観られるのお得じゃん?」と急遽鑑賞することに。
少し前に配信サイトでやっていたので、観なおしてみた。



個人的には「フラメンコ」というと「眉間に皺寄せて足を踏み鳴らしてギターと歌に合わせて踊る情熱的なダンス」みたいな固定観念をいまだにひきずりがち。持ってる辞書にも「民族舞踊」って書いてあるしなあ。
ネットで調べると「スペインのアンダルシア地方に伝わる伝統的な音楽や踊り」を指すらしい。

この映画を観ると、オーソドックスな(と自分が感じるような)曲に衣装・振りつけのもあれば、現代舞踊っぽいの、ギターじゃなくてピアノで演奏したり、バンド的なグループがいたり、一口に「フラメンコ」といっても色々な形があるのだなあと感じる。
意識してバリエーションを持たせようとしているからそう見えて、普通にフラメンコを観ようとしたらここまで幅広くはない可能性もあるけど、とにかく観ていて飽きない。

「親戚や友人一同が集まってる場でかわるがわる出てきて踊ってる」みたいな雰囲気のが、一番原初の形に近いのかな…?


多分前にも思ったけど、煙草くわえて踊ってるやつがめちゃくちゃかっこいい。これでCMされたら吸っちゃうかもしれないレベル。
ちなみに私は吸ったことないし、完全にはやめられてない家族にも常々プレッシャーかけている(嘘ついてなければ最近は吸ってない)
それでも憧れてしまうぐらいのかっこよさ。

あとスーツを着た女性のソロ。
よく見ると小柄でかわいい人なのに、全身バネみたいに躍動していて全然小さく見えない。すごいかっこいい。
自分も体が小さいので、大きい、手足長い人は動きも大きく見せられて羨ましいし、小さい人がパキパキかっこよく動けていて目立っていると憧れるし、勝手に誇らしさも感じてしまう。


赤いドレスの群舞も好きだった。タイミングはぴったり合ってて、同じ振りつけで決してバラバラではない。なのに、揃ってない、同じじゃないと感じる。
自分だったら、指の動きとか手足の角度とかぴったり合わせることばかりを気にしていて(それだけでも難しいが)、踊りが小さくなってしまうことが多いんじゃないかと思った。

ダンスって揃ってるのも大事だと思うし、好きなのです。全員つま先がきちんと伸びてたり、手足の角度などがきれいに合っているとそれだけで感心するし、揃ってない言い訳に「ダンスは心だ」とか言われると、いやまあたしかに一番大事なのは心だろうけどさ、揃えてから言えよと思っちゃう。

だから「揃ってない」を褒め言葉で使うの初めてかも。
いや実際にはかなりの精度で同じ動きをしていると思う。そうじゃなかったら単なるバラバラである。
でも多分自分の内側から湧いてくるエネルギーで踊っているから、全員がたった今それぞれが思いついた別の振りつけを踊っているかのように自由に見えるのだ。なんてかっこいいんだろう。

さっきから「かっこいい」しか言ってない気がするが、かっこいいものはかっこいいので仕方がない。


フラメンコは歌にしろ踊りにしろ、はらわたのような、自分の内側にあるものをその場に全部ぶちまけてるなあと感じる。
猫をかぶっていたらできないんだろうな。
仮にぶちまけられたとしても、自分だったら(そもそも声出ないけど出たとして)この調子で1曲歌ったら多分喉が潰れて一週間ぐらい歌えなくなりそうだし、踊ったら(そもそも踊れないけど踊れたとして)体バラバラになりそうだが…。

フラメンコを観る度に思うけど、あの踏み鳴らすステップも、疲労骨折しないのか心配になるレベル。

「あんたもたまには殻を破ってもっと中身をぶちまけてみたら?」と誘ってくれてるみたい。
色んなスパイスと具が入ったカレーみたいに刺激をくれる映画だと思う。


照明も色々でかっこよくて、特に横からさす夕日みたいな角度の照明が一番印象的だった。
「撮影監督」というものの存在を初めて意識した。


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2011年に「ダンシング・チャップリン」という、草刈民代さんがバレエでチャップリンを表現した映画を観て、ダンスの映画の楽しさに気づいたのが、この映画を観ようと思ったきっかけになっていたかもしれない。気づいた割に全然観てないけど。

音響に定評がある映画館だったから音が期待できたというのもある。
足繫く通っているわけではないが、ミュージカル映画とか、迫力ある音で楽しみたいアクション映画などは、その劇場で観るとちょっと得した気分になる。
ありがたがってるだけで、本当の音のよしあしなんて多分わかってないし、いい音で観たいときは必ずそこじゃないと、ってほどこだわってるわけでもないのだが…。
でも「レ・ミゼラブル」の雨の音はすごく良かったなあ(音楽じゃないんかい。いや音楽も良かったですが)。


フラメンコ、実は高校生(ダンスやる前)から20代ぐらいまで憧れがあったけど、一度も習ったことはない。
他のダンスをやっていた頃、発表会でフラメンコっぽく踊る曲に参加したことはあった。
指をずっと動かしてなきゃいけないし、表情にも目力が必要で、一度に色んなことができない不器用な自分には大変だった。「っぽい」だけでよくてそれだから、本家であるフラメンコは至難だろうなと思っている。
当時の仲間でフラメンコを長くやっている人もいて、尊敬する。いつか踊っているところを観てみたいなあ。