「わたしたち、今の日本に生まれて本当にラッキーですよね。戦争もないし、貧乏と言っても何かしら食べられる程度の援助や仕事や制度もあるし。すばらしいことですよ」
「まあ、そうなんだけど。でもさ、戦争してる時代に生まれたから全員不幸っていうのも乱暴な気がするな。生まれたときから戦争してたら、戦争が日常になっちゃって、不幸とか怖いとかあんまり感じなくなるかも。何が幸福かは一人一人の心の中にあるから本当にはわからないというか。天涯孤独で死んでいく大金持ちよりも、大家族に看取られて死んでいく超貧乏人の方が幸せってこともあり得るわけで」
「こういうことですか。考えようによってはわたしたちのほうがよほど醜い不幸な国に生きているかもしれない。いつ原発の放射能を浴びて国に見捨てられて死んでもおかしくない、いつ酔っぱらい運転の車にはねられてもおかしくない、そういう世の中で生きている、と」
「そうも言えるね」