「辞書貸してください」
「はい、どうぞ」
「え! 図書室で辞書借りれるんだ! 知らなかった」
「クラス全員来たらムリだけど、数人なら」
「うそー。だったらバカ正直に辞書なんて持って来るんじゃなかった。わたしなんか、今朝国語辞典に英和辞典に、歴史の教科書に、とにかく鞄に入りきれないくらいつめこんで、妊婦みたいになって抱えてきたのに。家出るときあんまり荷物が多いから、お母さんに『家出でもするの?』って聞かれた位なんだから。そんな苦労をして持ってきたのに、この子ったら「忘れたから借りてこよう~」って、涼しい顔して図書室で借りてるなんて! わたしもこれからここで借りる!」
「あの、だからみんながみんなそれをやったらムリだから」