「公民館に市民講座を聞きに行ったら、お年寄りばっかり! みんな、60歳は過ぎてそうな人たちだった。自己啓発みたいな内容で、『心の持ちようで楽しく生きる』みたいな話だったからかな。その中で、自分の人生の中で一番大切だと思うものを一つ選びなさい、って先生が課題を出したの。選択肢がたくさんあって、『愛、お金、健康、美貌、地位、名誉、人に認められること』もっといっぱいあったんだけど、忘れた。どれも大切なものですが、敢えて一つだけ選ぶとしたらどれですか、って。わたしは『人に認められること』って答えたのよ。ところが、わたし以外の人たちほとんどが一斉に『健康!』って答えてたのね。それで、健康じゃないのを選んだわたしに、『若いから……』って言ってきたの」
「え、そんなこと言われるの?」
「うれしかった~。若いなんて言われたの何年ぶりだろう」
「あ、そこ? うれしかったのね?」
「うん。若いだなんて。だってわたし、50歳だよ。でも周りの人は60歳以上だから、なるほどこの中でなら若く見えるだろうな、と」
「若いと言われてうれしかった、という話?」
「そうなんだけど。一番大切なものだったら、みんなは何を選ぶのかと思って」
「愛です」
「お金」
「健康でしょう?」
「思ったんだけど、自分に足りないもの欠けているものを選んでるんじゃないかと」
「年をとった人が健康を選ぶのはもちろんそういう理由でしょうね」
「え、じゃあ私には愛が欠けている?」
「たしかにお金がないから欲しいと思うわけだけど」
「健康じゃないものを選ぶ人は、やっぱり若いと思うわね。それ以外は努力でなんとかなったり、なくても仕方ないと思うけど、健康だけはね……」
「逆の言い方をすると、その他のものは足りている、と言えるのでは? だから、本当に若い人はお金って答えると思う。他は全部持ってるから。若さも友達も愛も健康も」
「なるほど」