SSS11「ご乗車無料キャンペーン」 | KAMLOG(カメログ)

SSS11「ご乗車無料キャンペーン」

記事・佐賀龍彦

さて今日は、

ショートショートショートです!

書きはじめて約2年で11作。

極度のスローライターですがガーン

これからもコツコツ書きます!メラメラ

では、いってみましょう!



SSS11「ご乗車無料キャンペーン」


ホンニーという国の首都アガスには、

都内をぐるりと一周できる

アガス鉄道があった。

都民の移動、通勤には欠かせない鉄道だ。

ある日、アガス鉄道の社長ワカロックは

キャンペーンを立ち上げた。


『ご乗車無料キャンペーン』

~どれだけ乗ってもどこまで乗っても無料。

ただし、条件が1つ。降りるまでに周りの人と

2言以上話さなければならない。~


(なんだこの条件は?)

みんな不思議がりながらもキャンペーン初日は、

いつも以上に人が押し寄せた。

「あ、おはようございます」

「あ、どうも。」

電車に乗ってから1言目はみんな、

ぎこちない挨拶をした。

「えっと・・いいお天気ですね。」

「今日は、お仕事ですか?」

2言目はだいたい当たり障りのない会話をした。

(無料なのはいいけれど、これはかなり厄介だぞ。)

(朝からこんなに気を遣いたくないな。)

みんなが面倒に、そして苦痛に感じていた。


でも次の日から、

少しずつ会話の様子が変わっていった。

「あ、昨日もお会いしましたね。」

「やぁ、そうですね。おはようございます。」

乗る時間や車両が決まっている人が多くて、

日に日に周りと顔見知りになっていったのだ。

そうなると話も、挨拶や天気だけではなくなってきた。

「あれ?今日は眠そうですね。」

「昨日のテレビ見ました?」

「今日は会社ですごいことがあったんですよ!」

初めて会う人にも自然と声をかけるようになった。

「おはようございます!どちらまで?」

「次の駅ですよ。あなたは?」

電車の中は和気あいあい。

たくさんの人に話し掛けたり、

降りるまでずっと話をしている人もいた。


『アガス鉄道が面白いらしい』

噂はあっという間に広まり、

その後「ご乗車無料キャンペーン」が終わってからも、

乗客は減るどころか、遠回りをしてまで乗ってくる人も出てきて、

車内はいつも活気で溢れるようになった。


ある日、新聞のインタビューでアガス鉄道の社長、

ワカロックは質問された。

「今回の思い切ったキャンペーンで、

 結果としてアガス鉄道は大きく業績を伸ばされました。

 どうしてこんなキャンペーンをされたのですか?」

ワカロックは笑いながら答えた。

「私はこれまでずっと仕事一筋でやってきました。

 そして遂に社長という職を任せて頂くまでになりました。

 でも気付いたら周りにだれもいなかった。

 そう。1人ぼっちだったんですよ。

 だから、このキャンペーンを始めたんです。

 今は、毎日が本当に楽しいです。」

「どうしてですか?」

「毎日、アガス鉄道に乗っていますから。」