映画『独立愚連隊』を観る | 乾パンのブログ

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先日、NHKBSでやっていた映画『独立愚連隊』をHDDに録画しまして、

やっと本日、見終えました。


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「独立愚連隊」

制作 田中友幸

監督・脚本 岡本喜八

出演 佐藤充/雪村いずみ/中谷一郎/中丸忠雄 ら

1959年(昭和34年)



太平洋戦争末期の中国北支戦線山岳地帯、最前線のとある警備隊に

1人の新聞記者荒木(佐藤充)が馬に乗ってふらりと現れるところから始まります。


警備隊長(三船敏郎)は城壁から転落して頭を強打、発狂しています。

実質的に部隊を掌握しているのが副官(中丸忠雄)なのですが、妙に曰くありげな態度。


意味ありげに警備隊を巡る荒木は、とある見習士官の心中死に興味を持ったらしく、

彼が死んだ最前線の最前線、独立九○(キュウマル)小哨を取材に訪れます。

そこは鼻つまみ者の兵隊ばかりを集めた、通称「独立愚連隊」なのです・・・



岡本監督の名を一躍轟かせることになった映画。


日本では珍しい戦争痛快アクションもの。

でも、おちゃらけた感覚は皆無。


デフォルメされたある種のバカバカしいコメディタッチが

むしろ戦争そのもののバカバカしさに直結しているように感じます。


でもこれは戦中派であり予備士官学校在校中に終戦となった

岡本監督のギリギリのセンスなんだと私は感じます。

もし前線で実戦経験があれば、監督はもうちょっと違う描き方をしたのではないかはてなマークと。


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それから今観て凄いのは兵隊達のディティールされた諸動作ね。

終戦から14年後の撮影だから、30代以上の男性役者・スタッフは、

ほとんど、兵役もしくは学校での軍事教練経験者。

そりゃ「ホンモノ」だから、今の役者さんに真似しろと言っても無理な話。


小銃の扱い、行進の仕方、号令のかけ方まで全て「歩兵操典」で決められているんだけど、

ぶん殴られつつ、叩き込まれた世代だから年季が全く違うんだよな。

着剣を「ツケケン」とかさ・・・陸上自衛隊の人には「常識」なんだろうけどにひひ



私が最も興味深く見入ったのは映画の最初の方、

佐藤充が警備隊指揮班で糧秣を受領するシーンです。


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細長い米袋 2袋  乾パン 4袋 羊かん 2本 たばこ 3箱

(よくよく見ると長方形の平たい箱はタバコではなくて、キャラメルか軍粮精の類のようです)


それから写真にはないけど、他に果物(多分、パイナップル)缶詰1個

牛缶もしくは魚肉缶詰数個と飯盒もありました。


これで5~6日分ぐらいは持ちそうです。


日本陸軍では麻雀牌サイズの乾パンを「寒冷紗」と称する粗い編み目の木綿袋に入れて

携帯していたというのは知っていましたけど、この映画で初めて見ました。

中が透けているけど、乾パンと一緒に入っていた金平糖はこぼれないのかなはてなマーク


防湿性は皆無の袋だから現代の乾パンを入れたらあっという間に湿気てしまう。

当時の乾パンは非常に乾燥していて堅かったと察する。

それから乾パンの大きさも現代のよりも大きく、一口で食べるのは難しそう・・・


乾パン好きにはたまらない映画ですわニコニコ



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役者さんで印象的なのは、まず主役の佐藤充。

一度見たら忘れられない日本人離れした独特のお顔立ちニコニコ

ニヒルでニコニコしていたかと思うと、一瞬で顔付きが豹変する。

でも略帽のひさしを持ち上げるかぶり方をしているのは、この映画以外見たことないな目


次に警備隊副官役の中丸忠雄。

ハンサムなんだけど、こういう腹に一物抱えている悪役が上手いよなぁ・・・

私的には印象度で言えばこの映画の「主役」だと思っています。


それから警備隊指揮班長の南道郎。

独特のだみ声なんだけど、面構えがまさに日本軍の「鬼軍曹」そのもの。

そう言えば山本薩夫監督の映画でも新兵いじめの常連さんでしたな。


あとは独立九○小哨長の中谷一郎。

私の世代には水戸黄門の「風車の弥七」でお馴染みだった人。

佐藤充との丁々発止の「顔芸」が見応えありました。


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ホントは「独立愚連隊 西へ」も見たいんだけど、

これは「山田洋次監督が選ぶ日本映画名作100本」という企画ものだから、難しいかガーン



P.S.

でもこういう冒険活劇タイプの戦争映画は、

現在の日本では「諸般の事情」で脚本的に無理だろう・・・


明らかに朝鮮人慰安婦と思われる商魂逞しい女性も登場するけど、

このような描き方は今では絶対不可だあせる


それから中丸忠雄演ずる中尉の「暇つぶしのこんな事」も含めて、

結構、非道いこともこの映画はあまりにドライに描き過ぎなように思う。


それだからこそ「誰も死なない良い人だらけの戦争映画」である

「独立愚連隊 西へ」を作ったんだろうな、岡本監督は・・・