「がんばりす」 

長い文章を多少リライトしました。

 2011年3月11日の震災後、被災地を訪れ、その惨状を目の当たりにして、自分に何が出来るのだろうと自問自答しつつ炊き出しや慰問ライブを重ねてきました。そしてこのような時には子供からお年寄りまでみんなが口ずさめる、わかりやすいメッセージとわかりやすいメロディーの「前向きになれる歌」が必要なのではないかと思い、東日本大震災復興支援ソング「希望のマーチ」を作りました。ブラスバンドで演奏してもらえる事が前提のアレンジをしたところ、仕事で懇意にさせてもらっているFM愛媛さんの紹介で松山北中学の吹奏楽部顧問、大久保先生が17パートの譜面に起こしてくださいました。演奏してくれる吹奏楽部を募ったところ、宇和島高校、松山北中学、神戸市立西神中学、私の母校でもある大阪府立春日丘高校のみんなが名乗りをあげてくれて、私も各地に出向いて一緒に演奏しました。
 楽器を奏でる事によって被災地へ自分達の思いを届けたい!そんな意思が重なった音色は実に迫力のあるものでした。
 6月に石巻の避難所になっていた住吉中学を訪れた時「希望のマーチ」をカラオケで歌いました。中学の先生から「楽譜はありませんか?」と言われて、後日届ける事が出来ました。
 10月10日、泉谷しげるさんたちと石巻で祭りをやろうと言う事になり、「みんなの祭り〜石巻篇〜」を開催。コンサートに炊き出し、物資配布、アートなど、盛りだくさんのイベントで、石巻中学、住吉中学の吹奏楽部の皆さんと「希望のマーチ」を演奏する事が出来ました。中には楽器が水に浸かってしまい、泥を落として手入れをしてから使っている人や、よその学校から譲り受けた楽器で演奏する人もいました。総勢74人の様々な想いを乗せた音が、会場に響き渡りました。
 2つの学校の吹奏楽部をまとめて練習を重ね、指揮をしてくださったのは住吉中学の渡邊郁子先生でした。
 翌11月、私はNHK第一放送ラジオ「キャンパス寄席」の公開録音で、再び石巻に向かいました。「みんなの祭り」に参加してくれた人達にもお声掛けしたところ、渡邊郁子先生が小学5年生の娘さんと一緒に訪ねて来られました。震災後、一部屋で3世代4人が過ごす事を余儀なくされていたのが、ようやく新たに家を建てる事が決まったとのこと。娘の瑛音(あきね)ちゃんも公開録音を楽しんでくれたみたいで、楽屋で一緒に写真を撮ったりしました。
 その時瑛音ちゃんが手に持っていた人形が目に留まり「それ、何?」と聞いたところ「りすです」という答えが返ってきました。
 その日はそれで別れたのですが、数日後渡邊先生から手紙が届きました。「先日はありがとうございました。とても楽しかったです。娘が嘉門さんに、りすの説明が出来なかったことを後悔しておりまして、その事を書いた作文と、写真を送らせていただきます」。
 写真を見て、作文を読んで、少女なりの震災当事者としての想いがとてもよく描かれていると思いました。このメッセージはもっと多くの人に伝えるべきではと思い、歌詞にまとめてメロディーを付けました。
 まだまだ復興には時間がかかります。被災地以外のところでは、時間と共に風化してしまいがちな震災への想いを、子供達にも伝わるように歌い続けて行けたらと思います。
 震災を通してのつながりから生まれた「がんばりす」が、より多くの人々に届けばと願います。


がんばりす                         

わたし がんばりす 何があっても がんばりす
くじけそうになっても がんばりす 今日まで頑張れたから 
がんばりすと一緒に がんばりす

冬休みの宿題の書き初めが うまく書けなくて落ち込んでいた私に 
お母さんがお守りを作ろうと タオルで私の好きな
リスの人形を作りました

お守りが生まれてから書き初めが 学校で選ばれて宮城県でも
入賞する事が出来ました くじけずに作品を仕上げられた事を

忘れないように リスの名前を がんばりすと名付けました


3月11日に突然 大きな地震が起こりました
リスは床に転がって 津波で避難しようとした時
お母さんがリュックに入れてくれました

津波の水が引くと我が家は たくさんのモノが使えなくなってました
壊れた壁をふさぐために ベニア板がはられた家は
暗く見えて水もしみ込んできました

そこでお母さんとお父さんと3人で ベニア板にリスを描きました
茶色いリスに黄色いリボン 一面のクローバーの野原

空を水色に塗ると 家がパッと明るくなりました
仕上げにリスの横に 大きく   がんばりす!と書きました

これからもっと 大変な 事があっても 前を向いて 
一生懸命 勉強したり みんなと仲良くしたり
友達にやさしくしたり 笑顔を忘れない様に
乗り越えて行こうと思います がんばりすと一緒に がんばりす

わたし がんばりす 何があっても がんばりす
くじけそうになっても がんばりす 今日まで頑張れたから 
がんばりすと一緒に がんばりす

そんな瑛音さんも21歳。東京の大学に通っておられます。コロナ禍で登校もままならないと思いますが、10年の時の流れを噛み締めています。

明後日は大阪オリックス劇場

恒例⭐︎顔面蒼白歌合戦にてお待ちしております。