嘉門タツオの「愛めし」

38回「 スパイス天国   亜州食堂チョウク」 


   現在の大阪はスパイス天国だ。カレー、ガパオ、ナシカンダール等の様々な個性あるアジア料理の花があちこちに咲いている。元々東京に比べてよりアジアっぽいのが大阪だが、近年アジア各国から観光客が押し寄せ、アジア色に拍車をかけている。8年前からずっと通っているのが、大阪福島に開店して12年になる亜州食堂チョウクだ。チョウクとはヒンドゥー語の交差点、広場という意味で、アジア各国の料理が行き交い、具材が皿の上で混ざり合って旨味を増してゆく様子も表している。タイ、シンガポール、インド、マレーシア等の料理が、昼はアジアの大衆食堂の様に日替わりで、夜はコースで34ヶ国の味が楽しめる。んー、これは万博だ!僕は茨木で生まれ育ち、11歳の時に間近で大阪万博が開催されて、半年の期間中21回会場に足を運んだ。その影響で異国の文化に触れると万博や!と思ってしまうのだ。そんな万博を仕切るマスターの片倉昇さんは、専門学校を出てオーストラリアに渡った。そこで多くのアジア各国の人と仲良くなり、知り合った彼らの国に行ってみようと実際に訪ねて歩き、それぞれの国のご飯に魅せられた。その後何度も通い12年前にチョウクをオープンさせた。コンセプトはパスポートのいらないアジア旅行だ。僕も何度も伺う内に味と共に料理名も少しずつ覚えて来た。ミールスは南インドで出される定食で現地では手を使って食べる。サンバー(野菜の煮込み)、ダル(豆煮込み)、ポリヤル(野菜の香味炒め)、アチャール(インドの辛いピクルス)、ライタ(キュウリと玉ねぎのヨーグルトあえ)、お米はアジア料理に合うジャスミンライス(タイ高級長粒米)、そしてバナナが添えられる。ナシカンダールはインド系イスラム教徒のマレーシア食堂で出されるぶっかけ飯のことで、南インドの料理にマレー系の発酵調味料やハーブ、もやしなどの中華系の食材の6種が絶妙にマッチする。その他にもカオラトーゲン、カオマンガイにビリヤニ等、それぞれ異なるスパイスが香り、それらを混ぜ合わせながら食べるのが実に楽しい。スパイスは全て本場のもの。6年後の2度目の万博を待たずして、チョウク博をチョクチョク訪ねよう。