嘉門タツオの「愛めし」

21回「関西 食の応援団長   鮨処多田」


   多田さんと初めて出会ったのは2012 12月、  銀座にあった伝説の寿司屋「あら輝」のお昼のカウンターだった。   通称、関西寿司屋三兄弟の弟分、広川さん、美菜月さんと連れ立って食の勉強ツアーに来られていて、前の夜は西麻布のワインバー「椿」に行かれていた。偶然我々のメンバーに椿さんが居て「昨夜はどうも」という事になり、大阪に帰った時は伺いますと名刺をもらってすぐに訪ねたのだった。翌年7月に僕のデビュー30周年のイベントを大阪万博お祭り広場で開催するに当たり、出展をお願いすると快く引き受けて下さった。ところが、話を詰めて行くと保健所からご飯を提供する許可が下りない事が分かった。すると経験豊富な多田さんは「寿司屋のラーメンを出しましょう!」と提案してくれた。鯛と鱧の骨でだしを取り、穴子をチャーシューに見立ててその場で焼いて提供して大評判だった。寿司屋三兄弟総出、更にラーメン業界からカドヤ食堂、ラーメン人生JETに加えラーメンクリフ(現・TSURUMEN、店主の大西さんはボストンで評判になっている)がサポートしてくれて500食は飛ぶように売れた。

   多田さんの人望は厚く、年に一度の三田への松茸すき焼きとシャンパーニュツアーにはバスが連なり多くの飲食関係者と常連客が参加する。シャンパーニュの中でもクリュッグをこよなく愛する多田さんは、修行時代の年末にクリュッグを購入し、一年のねぎらいとして飲んでいた。そんな話を当主のオリヴィエさんにしたら2014年クリュッグのメゾンからクリュッグアンバサダーの称号を与えられた。オリヴィエさんは三田松茸の会にも出席した事もあり、親交を深めている。更に鮨処多田の15周年パーティーは、多田さんの意向でいろんなお店の合同周年パーティーにしたいと166店舗のお祝いとなり、僕は「ウマい!楽しい!大好き!」という歌を作って披露した。

  淡雪塩をイカの上から降らせてアナ雪に見立てる演出や、玉子にクリュッグの焼印が押してあったり、更にシャンパーニュに合うちらし寿司を作ったりとアイデアと遊び心に満ちた演出はみんなを幸せにしてくれる。楽しい事が好きで、いつも笑顔の多田さん。暖簾をくぐれば「毎度おおきにー」と今夜も朗らかに迎えてくれる。