嘉門タツオの「愛めし」

第19回「わざわざ行こう!   エスコヤマ」


  兵庫県三田にオープンして15年。わざわざ目指さないとエスコヤマに到達する事は出来ない。ここでしか買えない小山ロールを求める人々の行列が連日絶えないが、他のロールケーキとは一線を画する素材や工程を知れば納得してもらえるだろう。8年前からは世界最大のチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラパリ」に出品し、8年連続最高位を獲得して世界のショコラマニアをも虜にしている。

   2013年夏に僕のデビュー30周年記念コンサートを大阪万博お祭り広場で開催した時には、関西を代表する様々な飲食店の皆さんに出店してもらった。小山さんにもマンゴーかき氷のブースを出してもらって大好評を博した。元々小山さんが大ファンだった伝説のロックバンドのアクションが僕と同じ事務所に所属しているご縁で繋いでもらったのだ。小山さんは歌も歌えば物語も書く。その話が絵本になったり更に音楽に展開したりする。パテシエの範疇では括りきれないクリエイターなのだ。そうして受けた刺激をお菓子やショコラなどの作品に反映させる。初期のショコラは大徳寺納豆や蕗の薹などの和のテイストを表現してパリの人々を驚かせた。近年は更に視野が広がり、世界中の味覚や香りを追求。台湾の野菊の香りやフランスのカシスの新芽とロマネ・コンティを合わせてたりして複雑で奥深い香り等を演出されている。ベースとなるカカオに関しても、南米に直接出向き現地のカカオハンターとコミュニケーションして仕入れる様になった。心配性だから、とことん深く探求して身に付けなければ次に進めないと言う。カカオを深く知ると、その知識や思いがその他の作品にも影響を与える。どんなに面倒でも妥協はしない。もちろんパッケージのデザインやショップの設計も納得行くまで突き詰める。自分が子供の頃に体験したことが今の人生に大きな影響を与えているという実感から、三田の敷地には小学6年生までしか入場出来ない「未来製作所」というエリアも作り、そこでは子供達が目を輝かせて遊んでいる。さりげなく見える仕事の中に潜むオリジナリティは、ひとつひとつ妥協することことなく丁寧に構築されていて、きっと誰にも真似出来ないだろう。