東日本大震災の被害は、津波による被害があまりにも甚大であったため、純粋な地震による被害についての報道が少なくなっています。
しかしながら、東京(島嶼部を除く)に関して対策を検討する場合は、東京湾に深い海溝は無く、内海となっており、津波による影響を受け難い地形的特徴を有していることから、津波対策というよりは、地震そのものに対処する対策に主眼をおいて検討する必要があります。
そのため、今回は、東日本大震災の地震による直接の建物の被害について、記述したいと思います。(東北大学 源栄正人教授を中心とした日本建築学会東北支部の調査による)
◎主な被害内容1(仙台市若林区周辺・震度6弱の地域)
・3階建て鉄筋コンクリート(RC)造の建物が、2階部分の崩壊(2階が潰れてしまっています)
・2~3階建てのRC造建物の1階部分が崩壊し、潰れてしまっている建物が複数あります。
・2階建て鉄骨造の建物が、屋根材や外壁の大規模な落下
・鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造9階建て建物が、3階の4隅の外柱が全て大破。鉄筋の破断、鉄骨の変形。
・RC造の建物の傾斜
・ブロック塀の倒壊
◎主な被害内容2(宮城県大崎市周辺・震度6強の地域)
・2階建て木造住宅の倒壊が複数
・土蔵の建物倒壊
・木造やRC造の建物の傾斜
・鉄骨建物の外壁の大規模剥離
◎上記等の結果から、
①木造とRC造の建物については、倒壊防止策の実施
②鉄骨造の建物については、外壁や屋根の落下防止策の実施
が求められると考えられます。
なお、2008年の岩手・宮城内陸地震時(震度6弱)に大破した建物を修復し、金属性のブレース増設等の補強を行なった大崎市立上野目小学校では、今回の地震で被害は見られなかったとの報告であり、耐震補強の効果があったと考えられます。
※なお、コンクリート壁のヒビ割れについては、発生しているから一概に危険だとは言い切れません。
「構造スリット」と呼ばれているのですが、設計上、非耐震壁にスリット(コンクリートではない隙間を作ること。表面はモルタルやタイル等で仕上げ、区別がつかないようにしていることがあります。)を設けて、地震による揺れの力を逃がすようにしています。
その箇所にヒビが入ったとしても、見栄えの問題や雨水等の浸水による劣化進行の危険性はありますが、耐震上、建物が弱くなったとは言えません。
構造スリットかどうか確認したい場合は、竣工図に記載がありますので、竣工図を専門家に見てもらい確認するのが良いでしょう。
耐震強化についてですが、鉄筋を入れた壁を天井から床まで通して入れる場合は、耐震強化に繋がりますが、腰壁や垂れ壁のように、柱に一部の高さだけ壁が入り、柱と一体となっている場合(窓がある箇所等)は、逆に耐震上、弱くなるとされていますので、壁の面積を単純に増やせば良いというものではありません。また、当然ですが、建物の重量が増加すれば、それだけ構造躯体に掛かる負担は大きくなりますので、注意が必要です。
更に、マンション管理士会の仲間である一般社団法人宮城県マンション管理士会会長 萩原孝次による報告を転載させていただきます。
◎宮城県内のマンションの被害状況
仙台市街地は一見被害も少ないように見えていましたが、落ち着きを取り戻し見て歩くと、たくさんのマンションが甚大な被害を受けているのが見て取れます。
まず、目につくのが塔屋の傾斜で、高架水槽やエレベーター設備の被害に結び付いている可能性があります。
次に目立つのがベランダ側及び廊下側非構造壁面のXクラックで、特にベランダ側のエアコンの設置を想定した部分の被害が多くなっています。この現象は築年数の古い建物よりも、平成になってから建築されたマンションに多く見られるように思えました。
また、1978年の宮城県沖地震の際に被害を受けた宮城野区のマンションでは、今回の地震によって建物全体の傾斜が見られ、地盤や建物を支える杭に被害が有ったことが想像されます。現在、住民による調査が行われており、傾斜が大きくなっているとの報告が有ります。
かねてより大地震には弱いとされているマンションのピロティ部分にも被害を受けている建物が見受けられます。
まだまだ調査対象も少なく結論は出ないのですが、今回の地震によるマンションの被害についての原因は、液状化現象が起きたような地盤沈下が多く見られ、地盤が大きな影響を与えているように思えることと、耐震基準(建築年)に関しての大きな差が見られず、建物の形状や構造設計、施工時に強度が十分に確保されたか否か等、複数の要因によるものと考えられます。