※注意※
・強烈な独自の世界観(オリジナル設定)がある。
・夢主が超常的な力をもつ人外(名前あり)、前世の物騒な記憶がある。
・過去生のsbmsが死ぬ描写がある。
・唐突に始まる。
・なんとなくスピリチュアルかも…。
・夢主がBSに勤める前までのお話。
以上のことを踏まえて読んでやるよという方はスクロール。↓
その昔、人が生まれる前の話。外宇宙の神、この宇宙の根源たるポケモンとそれにつがう定めの振り子がいた。
定めの振り子はこの世界の命運を握る、不滅の因子。人間とつがいになり子をなすことで、その因子の役割は終わる。
この宇宙の根原、混沌たるポケモンは人間たちが己のつがいたる定めの振り子とつがう為に、ある条件を課したのだった。
己の最も力を分け与えた存在である深奥に受け継がれたその意志は、やがて英雄の試練としてこの世に顕現した。
優れたポケモンの操り人の素質を有するものを選定するために。
やがて、その試練を乗り越えた一人の英雄がいたーーー。
追憶の少女
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ライモンシティ、バトルサブウェイ中央支部ーー。
サブウェイマスターのノボリ、クダリ兄弟にはある秘密があった。それは自身たちを取り巻く記憶に関する事ではあった。いまだにあれが夢だったのか定かではないが、己の半身とも呼べる互いの存在が引き裂かれた二十数年間の記憶を持っていた。ノボリはシンオウ地方の400年前のヒスイ地方で過ごした記憶、クダリはそのノボリがいなくなった後の記憶。どちらも”彼女”の存在で、無かったことにされてしまった記録ではあるが、ノボリとクダリの記憶にはその間の出来事が脳裏に真新しく刻まれていたのであった。
「クダリ、彼女の足跡はその後追えたのですか…?」
休憩室の中で、本日やっと再開した片割れと話をする。記憶を辿り、彼女の生きた痕跡を探し求めてもそれはうまく他人にすげ替えられていた。記憶の中では彼女の弟であったNですら、”そんな存在は最初からいなかった。”と言い切ってしまうくらいには、どこもかしこきれいさっぱり記録が消されていた。ーーまるで、最初からいなかったみたいに。
「彼女がいた記憶は、僕たちの中にだけにしかないんだ。調べてはいるけれども、今のところ有力な手がかりも何もない。」
「そうですか…」
調べれば調べるほど、彼女の存在も含め夢を見ていたんじゃないかと思える様になっていた。ただ、自身の記憶だけが”あれは夢では無かった。”という確信を告げていた。
何の根拠も、痕跡もないままではあったが。
「それより、ノボリ兄さんの方はどうなんだい…?ヒカリちゃんスカウトしに行ったんだろう…?」
夢であった様に思えはするが、あちらの世界での彼女の宣言通り、ノボリは成長したヒカリに出会えたのであった。それもその出来事から数年と経たないうちに。だが、未だに彼女の予言で成し遂げられていないことが一つある。それは、ノボリがフニクリフニクラで寝落ちる前に聞いた”またね”という言葉だった。彼女はまた会いにくる、たとえ姿形を変えたとしても。どこかでそんな予感が、二人の中にはあった。
「ヒカリ様の件ですが、あっけなく振られてしまいましたよ。何でも、調べたいことがまだあるそうで、研究を続けられるそうです。ですが私はまだ諦めませんよ、今度は別件でお伺いするつもりですから。」
「本命はそっちのくせに。」
ヒスイ地方で過ごした記憶をヒカリは覚えていなかった。ノボリもヒカリの前でその話をする事は極力控えている。今ではそのあったかも知れない記憶を話すのは、双子の二人の間柄だけになってしまっていた。だからと言って、二人は追い求めることをやめない。あのシナプスが火花を散らす様な鮮烈なバトルをもう一度体感したかった。
「何か進展があったらまた知らせるよ。」
いつかどこかで彼女ーーライラとまた会うことができるかも知れないーーーその予感は、ありもしないところで現実となる。
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翌々日ーー
バトルサブウェイは終電の時間を迎えたが、それに反して駅員達の様相は騒がしかった。
「クダリさん!これってもしかして…」
「うん、緊急事態、僕もノボリも上から呼び出しくらうかも知れない。今日はもう終電の時間だったから、スーパーマルチは後日挑戦してねって伝えたけど、今日だけで僕もノボリもその子に3敗してる。中継されてないのが幸いだったね。天下のサブウェイマスターもこれじゃあ形なしだ。」
つい先日まで催されていた、サブウェイマスターのバトル中継が終わっていたことに安堵した。っというのも今回問題とされているの挑戦者はあまりにも一方的にバトルを勝ち残りノボリ、クダリ両名に勝利しているからだ。
「構成はどうだったんですか…?」
「キノガッサ、ウルガモス、トゲキッス、ミロカロス。マルチの時は、トゲキッスとミロカロス。両方とも強力なポケモンだ。それに彼女の戦い方は…」
「戦闘スタイルは特製てんのめぐみを最大限に活かしたエアスラッシュのひるみ戦法です。サブウェイクオリティもさることながら、全く手が出ませんでした。」
ノボリが管制室に入ってきながら言った。駅員達はバトルビデオを再生しながら彼女の天啓にも似た戦闘スタイルを確認する。
比類なき実力を持つトレーナーたちが集うバトルサブウェイであったとしても、ポケモンをここまで育成を完全にして挑んでくる相手は稀有に近い。まぐれで7両目に到達したとしても、サブウェイマスターの前にひれ伏すことになる。それも、半端な相手ならば尚の話であった。
「何とかトゲキッスを突破しても、かえんだま持ったミロカロスが出てきて突破する前にこっちが溶かされる。そして、スーパーシングルとスーパーダブルで僕たちと戦った後は次の戦闘でわざと負けて、戦闘を辞退している。まるで僕たちに会うことが目的と言わんばかりにね。」
ポケモンの選出もさることながら、努力値ぶりにも一切の妥協がなかった。…こちらの努力値の振り方、技構成に再度見直しをかける必要がある。
「ノボリ兄さんわかってる?彼女は…」
「ええ、間違い無いでしょう。」
ライラだ。本人にその自覚があるかはどうかとして、彼女の再来に歓喜する。それは数年間探し求めた相手との逢瀬と言っても過言では無かった。
「このままじゃいけない。ノボリ、私用のポケモン達を出すことにしよう。」
「ええ、ですが対策を練らねば本日の二の舞です。」
「今日は定時で帰るつもりだったんだけどな。」
残念そうな言葉とは裏腹に二人とも、芯の底から震える様な震えを感じていた。ーーこれはきっと武者震いだ。
「明日が楽しみだね、ノボリ。」
「ええ、存分に楽しみましょう、クダリ。」
作戦会議は夜更まで続いた。
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ライモンシティ郊外の外れにて、件の少女は野宿をしていた。
ポケモンセンター以外にも旅人のための施設が多いこの世界では、野営するにも対して困らない。入浴施設で身支度を整えた後、キャンプを張り遅い夕食の支度をする。
今日のバトルでは選出しなかったが、彼女の手持ちには他にもチラチーノ、ガブリアスがいる。
「みんな今日はありがとうね。ガブリアスも、チラチーノもお留守番ご苦労様。」
今日はかねてからの目標であったサブウェイマスター戦までいけたけれども、明日になったらきっと技構成や努力値振りを見直して7両目で待ち構えているであろう相手のことを考える。でも、最初からそれも見越した上での構成も考えてある。彼らの職務上技の構成や、努力値振りを変えられたとしてもポケモンを変更することはできない。
…ということを何故か彼女は知っている。
幼少の頃から、自らのものではない記憶に苛まれてきた。その一つの答えが彼女にとってのサブウェイマスターとの戦闘(バトル)なのであった。
自身を苛む記憶の中で埋もれていく己の感覚、その中で頭の中で響いた言葉”サブウェイマスターに会いなさい。”という啓示にも似た呼びかけに応えたのであった。
会ってみた感想はといえば、”間違いない。”ということであった。自分が自分ではない時に、彼女自身は祭壇で彼らを殺した。その時の夢を何度も見る。
夢の中の彼女は魔法でも使うかの様に彼らを殺めたのであった。彼女の周囲に漂う無数の透明な岩、おそらくポケモンの技であろうステルスロックを使って。
自分でもどうやったのかまではわからないが、ポケモンの技を使うことができたことは覚えている。…今はそうではないが。
いつか、そうなってしまうかもしれない自分に怯えている。そうなってしまったら、彼女は自分が自分を保てなくなることを恐れていた。
手早く夕食を済ませて、明日のバトルサブウェイ始発に備える為に床に着いた。明日全てが終わる様な気がしている。
自身を苛む記憶に終止符を打てるかもしれない、そんな淡い期待が彼女の中にはあった。
その日は、胸に渦巻く淡い期待に身を寄せながら、ゆっくりと眠りについた。
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「アーケオス戦闘不能。よって勝者、チャレンジャーメグリ!」
先頭のポケモンをガブリアスに変更して挑んだバトルサブウェイでのバトルはあっけなく終わりを告げた。無論彼女にとっては、バトルはサブウェイマスターへと到達するための手段でしかない訳であったが、ここまで簡単にいくとは思いもしなかった。それは、彼女のポケモンの調整が素晴らしいことを物語っているのだが、彼女にとって本題はそれだけではなかった。どうしようかと、気を揉む。
「君は僕たちに会うことが目的だったみたいだけど、このスーパーマルチは君が負けるまで挑戦してもらえないかな。僕たちも、君のバトルをよくみたいんだ。」
「そして本日のバトルが終わったら、少々お時間よろしいでしょうか?ぜひお話ししたいことがございますので。」
ノボリの提案は彼女にとって、思ってもみなかったものだった。少女の表情が俄かに明るくなる。
「私も、貴方がたに話さなければならないことがあります。その為にここまできたんです。」
積を切ったかのように言葉を紡いだ彼女に対して、クダリは飄々とつづけた。
「それじゃあ決まりだ。次のバトルも頑張って。僕たち、終電まで待ってるから。」
そう言ってサブウェイマスター達は車両から降りて行った。メグリは念願が叶ったと言わんばかりに破顔してそして、襟を正した。
次の車両に向かう為に、手持ちポケモンのコンディションをチェックする。…皆次のバトルを待ちきれないという風だった。
今までは、サブウェイマスターと会う為に戦っていたが、念願も叶いそうな為やっとバトルに集中できる。手持ち達の様子を見るに、まだまだ余力はありそうだった。
メグリは次のバトルに向かうべく次の車両へと移った。
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「本日はバトルサブウェイスーパーマルチ路線にご乗車いただき、誠にありがとうございました。我々の完敗です。」
「あのね、君とっても強かった。僕たちこんな風に負けるの初めて。」
スーパーマルチのサブウェイマスターを破ってから、終電の時間まで、メグリは負けることなくバトルをやり切った。
「貴女様の戦いはバトルサブウェイ始まって以来のものでした。とても素晴らしいものです。勝った先の景色は、いかがでしたでしょうか…?」
「…?」
メグリは生まれて初めてバトルに夢中になった。あと先にことを考えずに一つ一つのバトルに夢中になれたのはこれが本当に初めてのことであった。
それ故か、指示に全くと言っていいほど躊躇は見られなかった。的確と言っていいほどの一撃を相手に叩き込む様は見ていて気持ちの良いものであった。
「僕たちも君に話したいことがある。だけど、君も僕たちに話したいことがあるみたいだから先に聞いておきたいな。」
ぱちぱちと目を瞬かせて、彼女は少々困ったようだった。その後はもじもじと気まずそうにどこか視線を泳がせている。
「本当に言いづらいのですが…」
ふう、と一息ついてから彼女は意を決したように言葉を紡いだ。
「私は、貴方たちを殺しました。」
「それは、記憶の話かな…?」
内容もさることながら、驚くべき告白に戸惑いながらもクダリは答えた。大層申し訳なさそうに彼女は頷く。
「幼少の頃からあなたたちを殺した夢を何度も見ました。それで、どうしたらいいのか悩んでいたら、頭の中で声がして、」
「僕たちに”会え”って言ったんだね。」
「はい。」
彼女の話によれば、ノボリクダリの前世の存在を手にかけた記憶に苛まれているということであった。当然、クダリの調べによると彼女にそう言った前科はないし、ノボリ、クダリ兄弟も健在であるので、完全に前世での関係性の話であると予想できた。クダリは聞かなければならないことがあった為、話を続けた。
「君は、トレーナーズスクールは中退してるみたいだけど、ポケモンは誰かに教えてもらったの…?」
「それが、よくわからないんですけど、最近なんだかポケモンのことよく知らないはずなんですが、何となく直感で…」
「直感だけであんなバトルをされるのですか…!?」
「ちょっと兄さんは静かにしてて。」
本題に入る前に、ノボリに話を遮られたのでクダリが静止する。ノボリは直感であの躊躇の見られない指揮の仕方に若干興奮を覚えていた。
だが、今はそのことを話している場合ではなかった。クダリは一つの懸念を彼女に伝える。
「それで少し気になることがあったんだけど、君のご両親から捜索願が出されてた。ご両親には事情を説明していないのかな…?」
彼女はまずいと思ったのか、非常に罰が悪そうだ。
「事情を説明しても、両親はわかってくれません。だから半ば家出するみたいになってしまって…」
「なるほどね。家を出た後、僕たちに会うためのポケモンを探して旅をしていたってことか。」
「はい。」
自分たちに会うためだけに、人生初めての家出をしてポケモンを追い求めて旅をしていたと聞いては放って置けなかった。ただこのままというわけにもいかない。
「君のこと知れてよかったよ。だけど、このままじゃ良くない。よかったら明日一緒に事情を説明しにジュンサーさんのところに行こう。僕たちで保護したって伝えるから、悪い様にはしないよ?今日は泊まるところは…?」
「ポケモンセンターは足がついちゃうので、今までキャンプで野宿してました。」
「じゃあ、今日はうちの仮眠室使っていいよ。シャワー室もあるから、そしたら念のため今からアポ取っておくか。」
そう言ってクダリはライブキャスターで駅員に連絡を入れた。
「あーもしもし?シンゲン、明日午前中僕たち行くところがあるからちょっと頼むね。彼女の件でジュンサーさんの所に行ってくる。」
「ウン。ワカッタ、ミンナニハ伝エテオク。」
「引き継ぎよろしく。」
駅員と連絡を取り終わると、再びライブキャスターでどこかに連絡をし始めた。
「とりあえず保護したっていう連絡は一応入れておいた方がいいだろうから、今から連絡するよ。」
「よろしくお願い致しますクダリ。さあ、仮眠室とシャワー室にご案内しますから一緒に参りましょう。夕飯は済まされましたか…?」
「いえ、まだです。」
「大丈夫ですよ。後ほど軽食をお持ちいたしますので、どうぞ召し上がってくださいまし。」
そういうと、ノボリは彼女に仮眠室とシャワー室の場所を教えた。女性駅員は今のところいないので、女性用の快眠室が使われもせず空いたままになっていた。
そこにメグリを案内する。募る話はまだあったが、メグリが疲れていることを考慮して話はまた明日にしようとノボリは思った。
「私達にも、貴女に関する記憶というものがございまして負担にならない様にこれからゆっくりお話しして行きましょうね。」
無二の存在
翌朝、上への報告書類の作成で徹夜したサブウェイマスターの二人であったが、ライラの因子をもつ後継のメグリに出会えたことに心から歓喜していた。
それがわかったのはなぜかというとクダリの記憶の中には、ライラがどんな存在であったのか調べた記憶が残っていたためであった。
世界にはまだ解き明かせない不思議なことがある。その一つがライラという記憶の中にしかない存在の定めの振り子因子の覚醒者のことであった。
定めの振り子というのはどうも、この世界のポケモンを創ったポケモンの創造主(マスター)であり、その因子は資格あるものに継承され、
定めの軛と呼ばれる存在に近づくことで覚醒すると言われているというところまではわかっていた。
そしてその因子の覚醒者は、類稀なるポケモンの操り人の才能を開花させることもクダリは知っていた。
「ライラの後継だけあるね。あの子には才能がある。あの子ならバトルサブウェイ の新路線も任せられるかもしれない。」
「ええ、少し先になるとは思いますが、私達が補佐に回れば問題ないでしょう。十二分に実力は持っていると思われます。」
昨日メグリを案内した女性用仮眠室まで向かう。コンコン、とノックをすると中から控えめにどうぞ、と声がした。
ドアを開けると、身支度を終えたであろうメグリが、仮眠用の寝台に腰掛けていた。
「おはようございます。メグリ様。昨日はよく眠られましたか…?」
「おはよう、メグリちゃん。調子はどうかな?」
「はい、おかげさまでバッチリです。」
兄弟の言葉に二つ返事で答えたメグリの調子はすこぶるいいようだった。
「今日今から念のためにジュンサーさんのところにいくけれども、ジュンサーさんから今連絡があってそこにご両親がいらっしゃってるらしいんだ。」
さっきまで明るかったメグリの表情がみるみる陰りを帯びていく。
「何か心配事でもあるかな…?」
「いえ、何も言わず家を出てきてしまったので、両親はとても怒っていると思うんです。そこがとても心配で…。」
「大丈夫、僕たちがついてるから何度も言うけど悪いようにはしないよ。君の件で、ご両親にもお話ししたいことがあるから、僕たちとしても好都合でありがたいんだけど。ご両親に会う前に、君に話しておかなきゃいけないことがあってきたんだけど、いいかな?」
「…?」
メグリは不思議そうに、首を傾げた。
「君の今後に関してのことなんだけれど…」
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「すみません。うちの出来損ないが、サブウェイマスターたるお方にまでご迷惑をかけてしまって、本当になんとお詫びしていいか…」
社用車でジュンサーさんのところに到着した直後、書類手続きを終えたであろう両親が駆け寄ってきて娘の心配をするかと思いきや、放たれた言葉はあまりにも酷かった。
「この穀潰しが、他人に迷惑をかけてただで済むと思うな。早く帰るぞ。」
事情を詳しく知らない親が、憎々しげにメグリを睨み付けている。怒り心頭で上部を取り繕うことさえしていなかった。そんな有様に、ノボリはに我慢し難いという風に口を開いた。
「彼女は穀潰しでも出来損ないでもありませんよ。私たち二人をバトルで翻弄なされたのですから。」
ノボリとクダリは自らが彼女とのバトルで負けたこと、彼女のバトル施設の選りすぐりのトレーナー達に対し勝利を収めていったことを丁寧に両親に説明して行った。
また今回の家出の原因が、おそらくポケモン育成のために旅がしたかったであろうことも伝えてくれた。
そして、ポケモン達との関係も良好でかつ、その育成方針も筋の通ったものであることを明かした。
「ですが、この子はとレーナーズスクールにも十分に通えなかった落ちこぼれですよ…?それがどうしてこんな…」
この世界では、ポケモンバトルを制するものは人生を制すると言われる程にポケモンバトルは重要視されているものであった。それを両親は重々承知していたのであろう。
トレーナーズスクールを中退したメグリには失望したと言わんばかりの態度をとっていた両親だが、次の話で驚きを隠せない様相が明らかになった。
「我々はメグリ様をこちらのバトルサブウェイで是非雇用させていただきたく思うのですが…。」
「なんですって…!」
「……。」
「ですので、研修の為、しばらくメグリ様をお預かりできないかと思いまして。本人には了承をいただいております。」
会話の中でなんとなくではあったが、ノボリもクダリもこの両親のもとに今のメグリを返さないほうがいいのではないかと思っていた。
クダリに至っては見繕ったマンションか社員寮でも手配して、手早く自立させたほうがいいかもしれないとさえ思っている。
事実彼女は、キャンプを使って野宿することで旅を続けられているくらいには自立している。ジュンサーさんの目を掻い潜ってまでして。
「ええ、いいですけど…ご迷惑にはなりませんか…?」
母親が心配げにこちらを見てくる。そういうところは親子でよく似ているんだな、と少し感心する。
「いいえ、こちらと致しましては、嬉しい限りでございます。こんなに才能のあるトレーナーは他にはいませんよ。また、設備が揃っていない過酷な状況下で、よくここまでのポケモンを集め、手懐け、育成できたものだと感心するくらいです。」
「だから、彼女を僕たちに任せてほしい。こっちとしても、これだけの才能を、逃すわけにはいかない。」
単刀直入にクダリは言った。
「…わかりました。お役に立てるというのならいくらでも使ってやってください。」
「この子もいい歳してますから、自分で進ませるべきかもしれません。ですがそちらが決められたことに関してはこちらでは責任は負えません。」
思ったよりも簡単に、両親は折れた。
「それじゃあ決まりだ。」
クダリはメグリの両手を取ると、ブンブンと振り回して握手した。
「今日から僕、君の上司。社員研修期間があるから、その為に一旦社員寮に来てもらうことになる。
おうちの荷物荷造りしておいでよ。上にはもう書類で話を通してあるから大丈夫。最初はBP交換所で地下鉄のホームの雰囲気を掴んでもらう予定だからゆっくり慣れてやって行こうね。」
「は、はい!」
半ば押され気味に、メグリは答える。嬉しそうだ。
その後ろではノボリがBS職員に連絡を取っていた。
「ああ、トトメス、私です。新人のスカウトに成功いたしました。つきましては、研修のため社員寮に引っ越しをしていただくことになったのですが、誰か本日の人員に空きはあるでしょうか?ああ、カズマサですね、了解いたしました。彼女の所在地を送りますので、そこまで来て引っ越しを手伝いに来てくださるようにお伝えくださいまし。」
「メグリ様、ご実家までお送りいたします。我々がいなくなっても、すぐに代わりのものが参りますから、ご安心くださいまし。くれぐれもお心変わりなさいませんようにお願い申し上げます。」
その場はお開きとなったのであった。
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