マルチメディアってなんだ?

 

私がパソコンを始めた頃、20世紀の終盤はまだパソコン文化の半ばでもありました。

そこで出会った本があります。

【PCミリオンブックス】『Windows上に異常はありません』【技術評論社】1994年
古庄歩・大村淳・阿部典央・桝本輝樹 共著

 

これはまさにWindows95が出る直前、Windows3.1が限界を見せている時に、マッキントッシュやユニックスと比べて思い切りその欠陥を突き上げた本でした。

翌年出た95はその欠陥をだいぶ取返し、次第にマッキントッシュを脅かす存在になるのですが、当時はまだそんな未来があるとは思いませんでした。

 

この本の最後に「マルチメディアはお金がかかる」という一章があります。当時新進気鋭のITライターだった主筆の古庄歩さんの文章で、これを読むとあの頃に感じた絶望感が蘇ります。

 

当時、「これぞマルチメディアパソコン!」と謳って発売されていたパソコンがありました。

通称98キャンビーと名付けられたマシンです。

 

 

NEC PC-9821Cb(98マルチ・キャンビー)
 
●CPU:Intel i486 SX-33MHz
●メモリ:8MB
●HDD:210MB
●OS:windows3.1
●アナログFAXモデム搭載(14.4Kbps)
●アナログTVチューナー+キャプチャボード搭載

●1994年当時の新品価格(定価):355,000円

 

販売価格は定価の半分くらいでしたが、そのスペックは貧弱そのもの。

Windows3.1がやっと動く性能で、かろうじてCD‐ROMを内蔵し、テレビが見られるという程度の中身しかありません。

古庄さんはこれを嘲笑し、マルチメディアを名乗るならDTMやDTPをこなし、動画編集までやれる必要がある、とし、それにはこの程度のスペックが必要だ、として以下の内容を列挙したのでした。それが私の頭をクラクラにしました。

 

マルチメディアに必要なスペック!


PC本体:9821Anj(Pentium90mhz) 59万円


メモリー:16メガ 6~7万円(32メガ 14~15万円

(画像は仮のものです:以下同文)


ハードディスク:1ギガ 15~20万円(SCSI接続)


CD‐ROMドライブ:4倍速 10万円


17インチCRTディスプレイ:20万円(トリニトロン)


MOドライブ:230メガ 12万円


MIDI音源:5万円(Roland standard)


グラフィックボード:10万円(4MB)


サウンドボード:2万円

これを全部合わせると軽く100万円を超えてしまいます。
古庄さんも「しかし、いくらかかるんだあ?」と文章内で叫んでいます。

 

こうした批判はわかりますが、マッキントッシュだって当時本格的なDTM・DTP環境を整えようとすると100万では収まらなかったはずです。本体価格はともかく、イラストレータ15万、フォトショップ10万という世界だったのですから。

 

昔話でよかった?

Windows95になると海外製の安い周辺機器が提供され、マック関係のソフトがどんどん移植されてWindowsのマルチメディア環境は整っていきました。

今では安いノートパソコンでも動画編集ができるくらいです。

上のような記憶はもう邪魔になりそうな気もしますが、時代はいつまた変わるかしれません。その時のために教訓として残しておきます。