―Storys―

Prologue

 この春、都心の中学を卒業した春乃由樹と春乃椿は、今年から海外赴任する父親のわがままで、母親まで海外赴任について行く事になる。由樹と椿は日本に残りたいと言い張り、親戚が住んでいる田舎にある高校に入学することを決めた。
 そこには、幼少の頃に一緒に遊んだ仲間たちが待っていた。都心で染まってしまった心を、少しずつ癒し始める昔の仲間。そんな仲間たちの中には、昔には見なかった顔を見つける。芳野春妃・・・。幼馴染の成瀬香織に後ろめたさを感じながらも、由樹は春妃に恋心を抱く。ぎごちない動きの歯車は、ゆっくりと回り始め、加速してゆく・・・。

Amebaでブログを始めよう!

chapter.2 明日へ

■プロット

由樹、椿、祥子、篤史(祥子の夫)


...スタート


「本当に二人一部屋なんだな・・・」


部屋を見回した後、ガックリと項垂れて呟く俺。あぁ・・・、なんか頭痛くなって来た。

椿は俺とは対照的に、本当に嬉しそうに満面の笑みを浮かべて言う


「まぁいいじゃない、部屋広いし!」

「・・・まぁ、そうだな」


問題はそこじゃないんだが。


「これで毎日由樹と一緒だねっ☆」

「あ、あぁ・・・そうだな」


俺がこの町の小学校から、都心の小学校へ転向した直後、都心で入院していた椿の病状が良くなった。

双子の俺達は当然、同じ家に住んでいて、接している時間も他人より多い。

しかし、最初は、椿の人見知りの性格もあって(今ではその面影すら見られないが)、俺も苦労した。

でも、どのうちに、椿も俺を受け入れてくれるようになってくれた。

しかし、俺は兎も角、椿は小学校中学年までは殆ど俺と面識が無かった為、俺を”兄”としての認識しているかどうかが怪しいのだ。

体が弱かった頃の椿は、いつも一人ぼっちで、都心に帰った俺の時間の大半は椿の看病・・・つまり、遊び相手なのだが・・・に当てられた。

そのため、当時の椿にとって、俺とは”たった一人の友達”であり”初めての男性”らしい。

「むふぅ~♪」

「・・・」


荷物を置いた椿が、さっそく俺を後ろから抱きしめて頬をすり寄せてくる。

椿の頬の柔らかい感触を髪に感じながら、憂鬱な気分になるのだった。

なんとか椿を引き剥がしながら言う。


「ほら、離れろ椿! 祥子さんに荷物整理が終わったら、下に降りてくるように言われただろ?」


祥子さんの店は、3階建ての小洒落た洋服店で、

俺達は、祥子さんに3階の屋根裏部屋を与えられて、そこで荷物整理をしているというわけだ。

祥子さんは、一通り部屋の勝手を説明した後、

「あ、二人とも。荷物整理が一段落したら二階に降りて来てね☆」

と、言い残して、階段を降りて行った。


「えぇ~、もっとスリスリしてたいのにぃ~・・・」


椿は名残惜しそうに、絡めていた腕を解いて荷物を整理し始める。

これが家でだけなら良いのだが、油断すると人前でも甘えてくるから油断ならない。

はぁ~・・・。


■荷物整理がひと段落つく

■二階にて篤史(あつし)登場。

■椿が祥子と一緒に料理を作る事に。由樹は篤史と酒屋へ。

■酒屋にて、酒屋のおっさんと篤史が談笑。

■帰り道、篤史と由樹の会話。→「椿について」

■家に到着。

■食卓にて入学する学校の話に。由樹の心中描写にて昔の友達を回想。

■End

登場人物の外観

画像をクリックすると、ホップアップで少し大きい絵が見れます。


春乃 由樹 <haruno yuuki>

春乃 由樹


芳野 春妃 <yoshino haruhi>  

芳野 春妃


春乃 椿 <haruno tsubaki>

春乃 椿


成瀬 香織 <naruse kaori>

成瀬 香織


祥子さん <shouko>

祥子


今の所登場しているキャラクターは大体描き終えた事になりますね~v

chapter.3 縁 enishi

俺と椿がこの町に着いて三日目。

引越しの準備も済み、あさっては遂に入学式。

そこで、俺は学校が始まる前に商店街を散策しようと出かけることにした。


しかし、この町も変わってないなぁ・・・。たまには一人ってのも良いもんだ・・・。

椿の病気が治って依頼、椿が俺にベッタリなせいもあってここ数年は殆ど一人きりということが無かったからな。

そのお陰で、こないだの祥子さんみたいに彼女とかに間違われる事が良くあった。

それに、椿は少し困る所があるんだよな。俺が他の女の子と話してるだけでも、やたらと割り込んでくるし。


「はぁ・・・」


そう、ぼやきながら商店街を歩いていると、耳をつんざくような悲鳴が聞こえた。

「?!」


なんだ?とおもって声の発信源を探す・・・。

辺りを見回すと、ゲームセンターの前で不良らしき男達に絡まれてる女の子が二人。

周りに人はいるのだが、皆見てみない振りをして通り過ぎるか、遠巻きに見物しているだけだ。

ちっ・・・、しょうがないな。


俺は、不良たちのほうへ歩いて行く。すると、どこか聞き覚えがある声がした。


「ちょっと、あんた達、春妃になにすんのよ!」


驚いて、声の主に目をやる。


「あ・・・れ、香織じゃないか!」

「え、あ・・・由ちゃん!」


今まで不良たちを威嚇するように、鋭い目で睨み付けていた子犬のように小さな体格の少女が驚き目を見開いたまま、こちらを振り向く。ツインテールの髪の毛がなびく。

彼女は、以前ここに住んでいた時に良く一緒に遊んでいた・・・言わば幼馴染に当る成瀬香織(なるせかおり)。

不良に囲まれていた女の子のうちの一人が成瀬香織だったのだ。

じゃあ、もう一人の女の子は香織の友達か。

とりあえず、この不良たちをどうにかしないとな。と、思案を巡らせていると不良の一人がこちらに気が付き怒鳴りつけてきた。


「オイ、シカトぶっこいてんじゃねぇぞコラァ!」


俺は不良が怒鳴るのを無視して、香織に向かって


「ところで、なんでこんなことになってるんだ?」


と聞いた。すると、香織が良くぞ聞いてくれましたという表情で事情話す。

香織と友達で遊んでいると、無理やり遊ぼうと連れて行かれそうになった。と、いう事らしい。

まぁ、良くある『オイ、ネェチャン! 一緒に遊ぼうぜ、良いじゃねぇか。』というベタベタのハプニングにものの見事に巻き込まれたらしい。

まぁ、とりあえず。このままにするわけにはいかないか。こういうの面倒臭いんだよなぁ。

ここは穏便に・・・、そう決めた俺は、3人の不良たちに向き合ってこう言った。


「すんません、ここは手を引いてもらえませんか? この子達は、俺とここで会うって約束してたんですよ。

このまま引き下がって貰えれば、こちらも事を荒立てようとは思いませんから。お願いします」


あ、まずい。つい感情が先行して挑発的な言葉を・・・。


「あぁ? お前誰だよ。中坊が調子こいてんじゃねぇよ! やっちまえ!」


不良たちは、僕の言葉に頭に来たらしく、襲い掛かって来る。

あ~あ、やっぱりこうなるのね・・・。


「口が滑った・・・」


「ゴチャゴチャ言ってんじゃねぇよっ!!」

「あっ、由ちゃん危ない!」


状況を見守っていた香織が悲鳴を上げる。

俺はその悲鳴にも動じず、金髪で耳ピアスの不良が放ってきた右ストレートを、体勢を低くして避け、レバーに右掌をめり込ませつつ、腰を相手の左腰の側面に寄せ、左手で顎を掴み地面に叩き付ける。


「うごぁっ・・・?!」


俺に殴りかかって来た不良が、情けない呻き声を上げて地面を転がる。


「ぐっ・・・、よくもっ!」


次は、茶髪で長身の不良が背後から金属バットを持って殴りかかってきた。俺はバットの入射角を見切り、バットを持つ腕を右手で持ち、左手で相手の襟首を持つ。同時に、体勢を低くし腰を相手の腰の位置に持って行く。そして、相手の力を利用しつつ腕を引き、自分の腰を跳ね上げる。相手は宙を舞い地面に叩き付けられる。


「うわぁあっ・・・、ぐふぁっ?!」


それを見た緑髪の不良は、俺には敵わないと分かったのか脳震盪を起こした仲間を担いで口々に


「ちくしょー!」

「おぼえてろよ!」


等とベタベタな捨て台詞を吐きながら、窮鼠のように逃げていった。

それを見届けて、自分の服に付いた埃をはたき落しながら、地面に座り込んでいる二人に話しかける。


「立てる? 近くのファミレスで話でもしようよ」


俺に話しかけられた二人は、心ここに有らずのような表情でコクコクと首を縦に振る。




ファミレスに入ってからも、香織ともう一人の女の子はホケーとした顔で俺達を見ている。


「ふ、二人とも・・・ど、どうしたの?」


俺が話しかけるとようやく香織が話す。


「・・・ねぇ、君、本当に由ちゃん?」

「な、なんだよ。久しぶりに会ったってのに・・・。まぁ、髪伸びたしなぁ」

「だって、昔は泣き虫で何も出来なかったじゃない」

「お、おま・・・っ。いらない事ばっか覚えてるのな・・・」

「だって・・・、それが今や高校生の不良3人を簡単に伸しちゃうなんて・・・」


まぁ、判らなくもない・・・か。昔の俺は本当に泣いてばかり居たからなぁ。

まさか、あんな所で父さんから教わった武術が役に立つとはな。


「そ、それなのに由ちゃんったら、あんなに強くなってて・・・」

「・・・ん?」


な、なんか、香織の頬が赤く染まって・・・。


「僕、なんか惚れ直しちゃったかも?!」

「ぶふぁっ!」


香織がトンデモ発言をしたせいで、口に含んでいた水を噴き出してしまった。


「な、何言ってんだよ・・・! って、おわっ?!」


立ち上がった勢いで、水の入ったコップを倒してしまった。

零れた水が、向かい側に座っていた香織の友達の方に流れてしまった。

(二人掛けの椅子を向かい合わせた席に、俺と香織の友達が向かい合い、その隣に香織が座っている)


「きゃあっ!」

「ご、ゴメン!」

「い、いえ・・・」


俺は急いで自分のお絞りで、零れた水を拭き、椿のお絞りを彼女に差し出す。


「これで濡れたとこ拭いて」

「あ、ありがとう・・・ございます」


彼女は俯き加減の首の角度をそのままに、上目使いで俺を見ながら差し出されたお絞りを受け取り、スカートの濡れた部分を拭く。

そこで、俺は彼女の名前を聞いていない事に気が付いた。

彼女はその様子に気が付いたのか、自分から名乗る。


「わ・・・私は、香織の友達の・・・その・・・芳野春妃(よしのはるひ)です・・・。

さ、さっき・・・は、あ・・・の・・・その、あ、危ない所を・・・助けて・・いただいて・・・ありがとう・・・ございました・・」


なんだか、彼女の顔が真っ赤なのは気のせい?


「いや、いいんだよ。たいしたことなかったしね」


「ところで、二人とも怪我はない?」

「うん、おかげさまで!」

「春妃さんは・・・?」

「あ、は・・・い・・・な、ないです・・・お、おかげさまで・・・あうっ?!」


ふかぶかーとお辞儀をする。

ゴンッ

その拍子におでこをテーブルに打ち付ける。

わ、笑っちゃだめだよな・・・わ・・わらっちゃ・・・っ


「ぷっ・・・くくく・・っ・・!」


俺が我慢しきれず吹き出すと、連鎖のように香織も吹き出した。


「うくっ・・あははははは!」


それを見て、春妃さんも目の隅に涙を溜めながらも、くすくすと笑った。

そして、その笑顔は俺が見てきたどんな笑顔より、可愛らしくて素敵な笑顔で・・・。

その笑顔に目を奪われていたからか、香織が不安そうな瞳で俺を見ているのにも気が付かなかった。



なにやら桃色の香りがぷんぷんしだしたよっ!

これからの展開をお楽しみにっ☆

もう分かったと思うけど、この文章は次の話とは関係ないんだよね!


To be continued.

chapter.1 故郷

 晴れ、春の息吹を受けて花々の活気がありふれている・・・。囀る小鳥。白い雲が、絶妙なバランスで千切れ流れている。セロリアンブルーの空。柔らかに射す光が、何とも爽快とも云うべき山の風景に仕立てる。木々の間に人工の道がうねうねと白線を引いている。バスが二台通れるほどの二車線の道路、バスが砂埃を上げて走っている。

穏やかな揺れ、定期的な排気音が、眠気を誘う。眠るとまでは行かないが、瞼が痛い。
 目を覚ますように、バスの窓を持ち上げる。カラカラ・・・という咽喉を鳴らしたような音が、鼓膜を擽る。窓を持ち上げる毎に、外気が流れ込んで来る。俺達と運転手以外、誰も居ない車内に、慌しくも春の香りが、ふわりと漂う。
ちょっと無理をして、窓を持ち上げて出来たスペースに肘を掛けて、頬杖をついてみる。
 隣に居る椿(つばき)が、読んでいた本を膝に乗せて、顔を上げた。窓から流れ込む春の風に持ち上げられ、前髪がさらりと靡いた・・・気配がした。実際、俺は視線を窓の外に向けて、流れる緑の風景を眺めていた。中学を卒業と同時に、長かった髪を切り。心機一転、元気娘の路線で行くつもりらしい。

「・・・由樹、いい風だね~。」

目を細めて、呟く椿。

「だな。春になったんだなって感じだな。まぁ、もう四月だし、高校も始まる。」

流れる風景から目を逸らさない。

「・・・」

(・・・?)

 妙に元気が無い。ゆっくり振り向くと、沈痛な面持ちに表情を沈めた椿。俺に見られている事に気がついて、俯き肩を落とす。開いていた本のページに広がる、点々の染み。
な、泣いてる?! 俺、変な事言ったっけ?!

(あー・・・。もしかして・・・?)

 思い当たる節があった。出京する時、駅のホームで、椿が友達とドキュメント番組顔負けの別れを繰り広げたのを思い出した。男として泣けなかったが、俺も、何人か見送りに来てくれて、同じ気持ちだったから、判る。

「・・・なぁ。俺から見ても椿はいい子だし、可愛いと思う。だから、不安になる事無いと思うけどな。友達なんて、直ぐに出来るさ。中学の友達も、ずっと一生逢えない訳じゃないんだし。」

暫くの沈黙・・・。
バスのバルブが煙を吹く音と、タイヤが砂利を蹴る音。そして、椿の嗚咽する音だけ。
バスがカーブに差し掛かる。右足に力を入れて、左から掛かる慣性に耐える。

「・・・ありがとう。」

俯き肩を落としながらも、呟く声が聞こえた。
ふうっと、息を付き、出来るだけ明るい声で・・・。

「兄がこんな恥ずかしい台詞吐いてまで慰めてやったんだ。
千両箱の一つでもよこしやがれってんだ!あぁぁ~!恥ずかしっ!!」

「ふふ・・・ありがと!」

満面の笑顔。俺にとってのそれは千両箱にも匹敵する贈り物だった。

とくん・・・。

「・・・?」

「どうかしたの・・・?」

「い、いや・・・。」

「そう。」

椿は、そう相槌を打つと、膝の上で開かれたままだった本に目を落し、再びページを捲り始めた。

(・・・なんだ、今の・・・?)

 高鳴る胸の鼓動と、共に迫るこの不明な気分を振り払うかの様に、再び流れる風景に意識を向けた。そして、それは俺の期待通りに胸の動悸を静めてくれる。

 俺と椿は、都心の中学を卒業したのを機会に、幼少の頃から数年間暮らしていて、親戚の叔母さんが住んでいる田舎の、高校に入学することにした。そもそも、そういう事になったというのには理由がある。親父が、仕事の都合で海外赴任する事になり、家族全員で付いて来い、と切り出してきた。それに、俺と椿は猛反対し、叔母さんのいる田舎の高校に入学するという条件で、日本に残ることにした。何故、叔母さんのいる田舎でないといけないのかというと・・・。

「だって・・・、お父さん一人にしておくのは・・・可哀想でしょお?」

 ・・・。・・・因みにこれは母の発言だ。って、俺達は可哀想じゃないのかよっ?!そんな、俺達の突っ込みは、尽く無視され、二人はラブラブのまま意気揚々と、日本を飛び立って行った。全く・・・何て親だ・・・。

バスがカーブに入る。右から慣性が掛かる。左足に力を入れ、右側に身体を傾ける。

・・・とんっ。
軽く、柔らかい衝撃。

(おっと・・・?)

 右を向くと、いつの間にか眠りに入っていた椿が、慣性に耐える術も無く、俺の肩に頭を乗せて、すやすやと眠っていた。

(しょうがないな・・・。バス停に着くまで寝かしといてやるか。)

静かな寝息が耳元で擽る。心地よい音楽のそれに近い。




微かな振動と共にバスの扉を開くためのエアポンプが音を立てる。俺は立ち上がって荷物を確認し、眠っている椿に声を掛ける。

「おい、起きろよ、椿」
「ん・・・うぅ・・・。何? もう・・着いたの?」
「ああ、忘れ物が無いようにしろよ」

肩を揺すると、まどろんだ目を擦りながらも自分の荷物の確認をして、立ち上がった。

バスのステップを踏んで、アスファルトの上に降り立つ。

後ろでは、椿が降りた音がした後、プシュ~というドアが閉まる音がして、バスが走り出す。

アスファルトは太陽の熱を吸収して、火であぶられた鉄板のように熱くなっていた。


「う~~! 空気が違うなー!」


春の爽やかな風に頬を撫でられ、気持ち良く背伸びする。


「そうだね~。って・・・あちちちち!」

「うあぁ?!」


人が気持ちよく背伸びしていたのになんだ。と、思って振り向くと椿が楽しそうにケンケンしていた。


「・・・・。」

「あちっあついっ!熱い~~!」

「ついにおかしくなったか・・・。」

「あつっ・・・あっつっ! ついにって何よ、ついにって! 違うのよ、私サンダルだからっ。足の裏が熱いのよ~~~!」

「なるへそ。」


そう言ってくるりと向こうを向いて歩き出す。


「あっ?! 待ってよぉ! 可愛い妹が苦しんでるというのに、置き去りにするのぉ?」


椿が甘い声を出す。この甘い声に万人が言うことを聞くのだ。しかし、俺は・・・


「ったく、どうしろってんだよ。」

・・・俺も、その一人らしい。


「抱っこ♪」

「却下。」

「早っ?!」

「あったりまえだ、バカ。」

再び歩きだす俺。


「あぁ~ん、わかったよぉ・・・。おんぶでいいよ。おんぶで妥協するからぁ~。」


椿が懇願するような声を出しながら俺の背中めがけて飛びついてくる。

「おっと。お前な、危ないだろうが。」


俺は飛びついてきた椿を背中で受け止め、椿を嗜める。


「えへへー♪ 由樹の背中ひろぉ~い!」 

「うっせ、暑苦しいんだよっ!」

「おっ、乙女を捕まえて暑苦しいとはなによっ!」


ぎゅうぅぅぅっ


「っうぐぉおおっ、くっ首はやめっ首はっ・・・!」


俺の首をチョークしている椿の腕をタシタシと叩いてギブアップを告げる。

まじで死ぬかと思った・・・。


「失礼なこと言うからよ。」

「・・・・。」


背中に張り付いた椿と言い合いながら、荷物を持ってバス停から移動しようとした時、俺達が今立っている歩道に横付ける様に赤いオープンカーが止まった。20代後半の女性が一人乗っている。車のサイドブレーキを掛けた女性がこっちに向かって手を振っている。祥子おばさんだ。彼女は母さんの姉で、この町では洋服店をやっているらしい。今回、俺達が日本での高校入学を果たせたのも、彼女が援護射撃をしてくれたおかげだ。


「祥子さん、こんにちは。」


うっかり”おばさん”等と言おうものなら、家に入れてもらえなくなる。


「こんにちは、長いバス旅で疲れたでしょう? 早く乗りなさいな。」


祥子さんはそう言うと、車の後部にあるトランクを開けてくれた。俺達はトランクに荷物を詰め込み、車に乗り込む。


「わざわざお迎えにきてくれて、有り難うございます。椿、挨拶しろよ。」

「あっ、はじめまして! 椿と言います、よろしくおねがいします!」

「君は由樹ちゃんよね・・・、大きくなったわねぇ。」


そこで、祥子さんは”あれっ?”という表情をした後、頬を赤く染めた。

・・・?


「あらっ! まぁまぁ! 由樹ちゃん、彼女連れてきたの? 椿ちゃんって言うのねぇ、可愛いわねぇ☆」


頬に片手を添えながら、とんでもない事を言った。


「・・・は?」

「・・・え?」


俺と椿は二人してキョトンとしてしまう。あれ、祥子さんって椿のこと知らなかったっけ。

いや、祥子さんと会ったのは随分前だし、その頃、椿はまだ病弱だったから・・・。

俺がそう思案していると


「あらぁ、困ったわぁ・・・。お部屋、一部屋しか用意してないのよねぇ。」


最初祥子さんはそう言って困った顔でウンウン唸っていたが、やがて明るい声で


「ま、良いわよね。恋人同士だとそのほうが都合がいいでしょ? うふふふ♪」


そう呟くと、俺達に微笑みかけた。な、何考えてんだこの人はっ!


「っていうかまず、俺達は双子の兄妹なんですけど。」

「あら? そうだったの・・・? 残念・・・、彼女じゃなかったんだぁ・・・。」


祥子さんはそう言って心底残念そうだ。しかし、すぐ明るい表情になる。


「なら、二人一部屋でも心配ないわよね。ウチもう空き部屋ないし。」


祥子さんの満面の笑顔。


「「えぇぇぇ~~~~?!」」(由樹・椿)


二人の悲鳴が澄み渡る空気に吸い込まれて、山彦のように山が音を繰り返す。

清々しい春の雰囲気の中、赤いオープンカーが三人を乗せて走る。俺達は故郷に帰って来たんだ。


さてさて!イキナリ二人一部屋だなんてっ、なんてお約束でキケンな状況なんだ☆

っていうか由樹よ、妹にドキドキするだなんていろんな意味でヤバイね?!

もう僕は行き当たりばったりで書いてるから実際どうなるか判んないんだよねっ☆

由樹、ガンバッテ!


To be continued.