大人の決意
私は自分のことを大人だと思っている。
どれくらい大人なのかというと、人の決意というものが、そして自分の決意というものが、いかに脆いものかということを分かっている、という程度には大人なのだ。
知識としても自分の経験からも知っている。
あれは確か中学二年生のことだったと思う。
当時の私はおとなしく引っ込み思案な生徒だった(まあ今でもそうなのだが)。
スポーツ大会で表彰されるようなこともなく、頭は良い方ではあったがクラスで1番ということもなく、これといった目立つ特技はなにもなかった。
もちろん、クラスで皆の笑いを取るような才覚も無く、学校内で大きな声ではしゃぐこともない。クラスで大きい声ではしゃぐ人たちを少し離れたところから眺めているような男子生徒だった。
中学二年生ともなると多感な時期で、特に女子は早熟で、何々先輩がカッコいい、さっき廊下で何々先輩と目が合った、誰々と誰々は付き合っているらしい、などなど、そういったカラフルな話に溢れていた。
もちろん引っ込み思案な私には縁のない話だった。
あるとき、昼休みだったか掃除の時間だったか、女子も交えてクラスの何人かで話をしていた。正確に言えば、何人かで話をしているところに私も存在していて、その中で私も話を聞いていた。
その中の女子の一人、ハナさんが言い出したのだ。
「ユキ君って実はいいよね。みんなユキ君の良さに気付いてないと思うけど」
もちろん告白などではない。なんてことない雑談の中での取るに足らない話題の1つだ。
しかし、ハナさんのその言葉が中学二年生のユキ君、つまり当時の私にどういう影響を与えたのかは想像に難くないだろう。
――― 俺はもう一生ハナのことしか愛さない ―――
その日のうちに私は硬く心に決意した。
なんとういう崇高な中2ハートかっ!!!
今では笑えるが、当時の私は本気で決意したのだ。
限りなく透明な中2ハートには一片の曇りもなかった。
が、しかし、である。
物語をここで終わりにすれば、中学時代の甘酸っぱい想い出話として綺麗に完結するのだろう。
だが、映画や小説とは異なり、現実のユキ君の人生はその後も続くのである。
その数か月後には、ユキ君には好きな女の子ができていた。
意中の相手はハナさんではない。。。
今でも覚えているあの時の一生の決意とは何だったのか。
たった数か月(もしかしたら1か月程度だったかもしれない)しか続かない私の決意とは何だったのか。
その後も、学業や仕事、人間関係など様々な場面で私は決意し、目標を設定し、続け、時に達成し、ほとんどが挫折し、そしてまた決意し、を繰り返してきた。
そして大人になるにつれて私は学んだのだ。
自分の決意などあてにはならない。
決意した時の強い気持ちなど、継続できるか・達成できるかどうかに何の根拠も与えない。
そして、大人の私はまた新しい決意をしている。
――― 定期的にエッセイを書こう ―――
週1で、と言いたいところだが、ハードルを高くすると挫折しやすいことも知っているほど私は大人になっている。
最低でも月に1つはエッセイを書こう。
そうです、これが私の最初のエッセイです。
いつまで続けられますかね。。。
神山ユキ
2022.6.11