こんな形の「けじめ」もある、というお話・・・



死の床で、結婚式をして、皆に祝ってもらって。


大好きなアイスクリームを一口、二口食べて喉を潤し


「人生で最高のわがままキャンペーン」と称し、

「脚に触れてくれ」とか「背中に触れてくれ」とか言って。


「お前は、最高の女だった。

ありがとう!」と、殺し文句を吐き。


「ああ、楽しい人生だった。

ありがとう。」と、皆に感謝し。


モルヒネの点滴量を、自分の意思でアップしてもらい。


好みの女性の名前を聞くと、

一度泊まった心臓を動かして見せ。


酸素マスクをしながらも、目が合うと微笑み、

「ずっと笑っていなさい」と命令し。


ベッド周辺に集まった美女軍団(?)に

「俺は、女は美人しか知らないんだ」とゴマをすり。


静かに静かに息を引き取り。


あまりの見事さに、看護婦さんを号泣させ。


全てをそぎ落とした高僧のようなたたずまいで眠り。


棺には、友人に会うために選んだ着物と野袴を着用し。


大好きな真っ赤な薔薇の祭壇に、

秘蔵のウイスキーや焼酎を並べ。


お別れには、大勢の「自称兄弟・姉妹」や

「自称第二婦人」や「心の恋人」が並び。


新潟から駆けつけてくれたハンサムウーマンに

クリスタルボールを演奏してもらい。


友人のお坊さんが、自分の草履と棺に眠る個人の草履を交換し。


息子達の心のわだかまりをほぐし。


誰もが

最高の人生を送ったね!と笑顔で涙してくれる。


「あのさ、不謹慎かもしれないけれど、

楽しいお葬式だったよ」と、皆に言われ。



私の最愛の夫は

肉体を抜け出し、自由になりました。