歯医者さんの豆知識:歯周病になるまえに歯科に行く!予防医療の基本的な考え方 | デンタルケア神谷町の独り言 φ(.. ) Deep breathing of dental care Kamiyacho

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2012年7月よりスタートしました当院ブログ!!これからも歯科の豆知識から雑学!!スタッフの小言などジャンルを問わず気まぐれに記載していきますのでどうぞよろしくお願いします(^ ^)/

日本でもようやくこの頃少しずつ知られるようになってきましたが、「予防歯科」という考え方はまだ十分に一般的に浸透した考え方とは言えないようです。予防歯科とは、虫歯や歯周病にかかってから歯科医に行くのではなく、そもそも虫歯や歯周病にかからないよう、ふだんから歯科医と協力して予防するための治療のことです。欧米では、歯科は「美容室やエステに行くような感覚で、口元の美しさを保つために定期的に立ち寄るところ」という価値観が普及してきているようですが、まだまだ日本では「歯科医院は虫歯・歯周病になってから仕方なく行くところ」という考え方が根強いのではないでしょうか。しかし予防歯科によって、結果的には少ない費用で歯の美し さを保つことができ、治療に時間を要することもないといった多くのメリットが得られます。そこで「予防歯科って何?」「どんな治療をするの?」「痛くないの?」などといった、予防歯科に関する基本的な知識や考え方をまとめて知っておきましょう。

<<日本は予防歯科後進国?>>

歯磨き粉などオーラルケア用品大手のライオン株式会社が2014年に発表した資料【日本・アメリカ・スウェーデン 3ヶ国のオーラルケア意識調査】によれば、予防歯科の先進国として知られるスウェーデンとアメリカでは、予防歯科について「詳しい内容まで知っていた」「ある程度内容は知っていた」とする人の合計が約6割であるのに対し、日本では20.9%にとどまりました。また、スウェーデンとアメリカではすでに予防歯科を実践している人が約7割に達しているのに対し、日本では26.2%にとどまりました。 日本は世界的にも医療制度が充実した国という印象が強いのですが、予防歯科というジャンルに関しては先進国とは言えない状況のようです。

<<予防歯科とは具体的に何?>>

では、予防歯科とは具体的にどのような治療を行うものでしょうか。 予防歯科で行う治療は「予防治療」ですから、まずは検査によって、現時点ですでに虫歯や何らかの歯周病にかかっていないかどうかを検査し、もしかかっていれば、予防歯科以前の「歯科治療」を行います。「歯が痛くもないし、見た目にも異常がないのに治療を受けなくてはいけないの?」と抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、例えば虫歯の場合、歯がしみたり、痛みを感じたりするのは相当虫歯が進行してからの話です。できるだけ初期の段階で発見・治療したほうが身体への負担も小さく、また見た目も長年にわたって保ちやすくなります。ただし、これはまだ予防歯科の領域ではありません。予防歯科では、こうした治療を終えてから、まず唾液や口腔内の検査を行います。こうすることで、「虫歯にかかりやすい体質かどうか」「虫歯になるとしたらどの歯がなりやすいか」といったことが分かり、効果的な予防治療が行えます。次に、PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)という歯のクリーニングを行います。PMTCは文字通り、歯科医師や歯科衛生士などの手により、専用の機械や器具を使って歯垢や歯石を徹底的に除去する施術です。もちろん自分自身の手による日々のセルフケア(歯磨き・フロッシングなど)も重要なのですが、それだけでは落としきれない歯垢や歯石をPMTCによって除去することで、さらに効率的な虫歯・歯周病の予防ができるようになります。また、施術後には歯にフッ素を塗布するなど、虫歯になりにくくするための予防治療が行われます。

<<予防歯科はプロケア+セルフケアの連携で!>>

次は、歯科医師や歯科衛生士によるセルフケアの指導です。予防歯科とは、ほかの歯科のように歯科医院に行って受ける施術だけ が全てではありません。歯科医院で歯科医師や歯科衛生士などのプロフェッショナルに受けるケア=「プロケア」を受けることと、自分自身が日々行っているセルフケアがうまく連携してこそ最大の予防効果が発揮できます。そのため、「正しい歯みがきの仕方」や「デンタルフロスなどオーラルケア用品の正しい使い方」、そして虫歯・歯周病を避けるための生活習慣など、セルフケア全般に関する指導を専門家から受けることが大切なのです。こうして、定期的(3ヶ月~半年ごと)にプロケアを受け、歯の状態をチェックしてもらい、もし虫歯や歯周病の兆候が発見されたらすぐに治療を受けることで、治療を最小限度にとどめることができます。また、現在は病気になっていな くても、「この歯がよく磨けていない」「口腔内のコンディションが良くない」など、未病の兆候(病気に向かいつつあるサイン)などをいち早く見つけることで、病気にかかるのを避けることにも役立つでしょう。ちなみに、冒頭で紹介したライオンの資料では、スウェーデンでは68.1%の人が歯科医院でブラッシングの指導を受け、72.5%の人がデンタルフロスや歯間ブラシなどによる歯間清掃の指導を受けています。これに対し、日本では自己流で歯磨きをしていた人が44.5%、そしてデンタルフロスや歯間ブラシについても58.5%の人が自己流で清掃を行っています。日本人にとって、歯科医院はまだ「虫歯の治療」が主たる目的(66.6%:同資料)ですが、欧米人にとって は、「歯の健康状態の診断」が最大の目的でした(スウェーデン70.4%、アメリカ64.5%)。 予防治療先進国の人にとって、歯科医院とは「治療」ではなく「予防」をしに行く場所となっています。最近、虫歯治療は痛みもほとんどなく、歯科医院も怖いところではなくなりました。それでもできるだけ自分の歯を大切にし、削る部分は少なくしたいものです。そしてそれは、積極的に歯の健康を守ることは歯の美しさや口元・顔の若々しさ、そして歯以外の全身の健康を守るためにも大切です。
 
※ 冒頭で「美容室やエステに行くような感覚で歯科医院に行く」ということを書きましたが、それは決して大げさではなく、予防歯科先進国の人々の意識は本当にそのように変わってきているのです。 美容目的でも、健康目的でも、私たちも積極的に予防歯科を生活に取り入れるべきではないでしょうか?