近年、体にやさしい素材でアレルギーの心配がない「セラミック」という素材が修復物の主流になりつつあります。天然歯に近い自然な白さも人気で、「昔の治療で詰めた銀歯をセラミックに変えてほしい」というニーズも多いようです。しかし、良いところばかりのように見えるセラミックにも、実はいくつか課題があります。そのような課題を一気に解決し、「セラミックのかぶせ物を入れたい」という幅広い患者のニーズに応えられるようにしたのが「セレックシステム」という歯科治療システムを用いて行う「セレック治療」です。今回は審美歯科で新しく注目されているセレック治療について紹介します。
<<セレックシステムって?>>
セレックシステムは、コンピューター制御によって歯医者で歯の修復物を設計・製作するCAD/CAMシステムです。患部を3Dカメラでスキャンして、モニター上に歯列を再現したら、あとはコンピューターが自動で設計し、セラミックの塊から技工物を削り出してくれるという最新機器なのです。歯科医療先進国のドイツで開発され、ヨーロッパ諸国やアメリカでは「画期的な治療法」として多くの歯科医院で導入されてきました。日本で話題になり始めたのは最近ですが、症例は世界各国で1000万件を超え、20年以上の実績がある安心のシステムです。そもそも従来のセラミック素材 の課題としては、治療において歯を削ってから型を取り、歯科技工士に作製を依頼するため、長ければ10日ほど仮歯の状態でいなければならないということがあげられます。仮歯の期間の衛生面も気になりますが、完成まで何度も歯科医院に足を運ばねばならず費用も高額であるという点が大きなネックでした。もうひとつは、型取りをしなければならないということ。ピンク色の粘土状のものを口に入れ、固まるまでじっと待つ……という経験をしたことはありませんか? ピンク色のあの物質はアルジネート印象材といって歯の型取りに欠かせないものですが、「口に入ったときの、ひんやりとした質感が苦手」「化学物質っぽいにおいがして、あまり好きじゃない」という声をよく聞きます。特に嘔吐反射がある人にとって、口の中に粘土状の物質や金属の器具をいれる行為は「苦手」「嫌い」といった言葉では言い表せないほどの苦行なのではない でしょうか。
こうした従来の審美治療における課題を一気に解決し、「セラミックのかぶせ物を入れたい」という幅広い患者のニーズに応えられるようにしたのが「セレックシステム」なのです。
<<短期間で精度の高い修復物が手に入る>>
審美治療に対して、「何度も歯科医院に通わなければならない」「きれいになるまでには時間がかかる」というイメージを抱いている方がほとんどでしょう。セレック治療は、コンピューターを使って院内で修復物を作製するため、治療にかかる時間が劇的に短くなります。以下、セレック治療の流れを見てみましょう。
(1)撮影(スキャン)・設計
治療する部分を削ったら、3D光学カメラで口腔内を撮影します。撮影したデー タをもとに患部の歯列がモニター上に再現されるので、画面を見ながら形やかみ合わせを調整します。患者本人も画面を見ながら治療できるので、患部の様子がよくわかり安心感があります。なんといっても、型取りの不快感と無縁なのがうれしいところ。設計が済んだら、さまざまな色のセラミックブロックから最も天然歯の色に近いものを探します。
(2)修復物作製
以前は歯科技工士が受け持っていた修復物の作製を、セレックシステムではミリングマシンという機械が代行します。設計データをもとに、あっという間にセラミックブロックを削り出し、緻密に整えていきます。
(3)セットして完了
出来上がった修復物を口腔内にセットして完了! カウセ リングなどをのぞいて、(1)から(3)までの純粋な治療に要する時間は、なんとたったの1時間ほどです。
<<セレック治療の利点をまとめると、以下の3つです。>>
(1) 治療が短期間で終わる:前述した通り、従来に比べて非常に短い時間で修復物が完成するため、全体の治療期間もかなり短縮されます。
(2) 耐久性が高い:従来の方法で作製したセラミック修復物の15年後の残存率は約68%。約3分の1の修復物に何らかのトラブルが起きていました。対して、セレックシステムで作られた修復物の残存率は約93%。しかも、機能的にもほぼ問題ないというデータが出ています。(シロナデンタルシステムズ株式会社が公表している臨床研究データによる)
(3) 従来の方法よりも経済的:歯科技工士に外注しない分、費用が抑えられます。