歯医者さんの豆知識:歯医者さんが数ヶ月に一度のメインテナンスを勧めるワケ | デンタルケア神谷町の独り言 φ(.. ) Deep breathing of dental care Kamiyacho

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2012年7月よりスタートしました当院ブログ!!これからも歯科の豆知識から雑学!!スタッフの小言などジャンルを問わず気まぐれに記載していきますのでどうぞよろしくお願いします(^ ^)/

虫歯や歯周病の予防のため、歯の治療が終わった後も、定期的なメインテナンスを勧める歯医者さんが増えています。たとえ数ヶ月に一度でも、虫歯でもないのに歯科医院に通うのはなかなか面倒くさいものです。「予防に役立つのは分かるけれど、ついつい後回しになっている」という人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、歯医者さんがおおよそ3~4ヶ月に1度の定期的なメインテナンスを勧める理由を紹介していきます。

【そもそも、定期メインテナンスって何をするの?】

定期メインテナンスの目的は、口の中に何か問題が起きていないかを確認することです。
毎日体重を量り、「少し増えてきたな」と思ったら食事を控えるのと同じで、定期的に虫歯になりかけている歯がないか、以前の治療跡に不具合はないかなどを確認して、問題があれば早めに治療することで、きれいな状態を維持していくために行うものです。内容は口の中の状態や歯科医院によって多少異なりますが、おおよそ次のようなものになります。
  • 虫歯や歯周病になっていないかの確認
  • 専門の 器具を使った歯のクリーニング(PMTC)
  • 染め出し液などを使った磨き残しのチェックとブラッシング指導
  • インプラントや詰め物に不具合がないかの確認
  • 唾液や粘膜、噛み合わせに異常がないかの確認
 
予約制で所要時間は40分前後、費用は3,000~4,000円 程の クリニックが多いです。

【なぜ3ヶ月に一度必要なの?】

多くの歯医者さんが勧める「3ヶ月に一度」という頻度は、虫歯や歯周病の原因である「歯垢(プラーク)」のでき方と関係があります。

<歯垢のでき方>

  • 元々、口の中には善玉菌・悪玉菌共に400種類以上の細菌が存在しています。
  • 歯は常に、歯を保護する働きのある「ペリクル」という唾液の成分に覆われていますが、ここにまず唾液成分を好む善玉菌が付着します。ただしこの段階でできる歯垢は、白色で粘り気もなく歯磨きで簡単に落とせるもので、特に歯に対する悪影響はありません。
  • しかし、時間が経つうちに善玉菌の上に悪玉菌が積み重なり、「バイオフィルム」と呼ばれるネバネバした 歯垢に変わっていきます。そうなると、酸を出して歯のエナメル質を溶かすという悪さをはじめます。これが虫歯の原因となる「歯垢(プラーク)」です。バイオフィルムは隙間が狭いため、歯磨き粉などに含まれる殺菌成分も届きにくく、歯磨きでも落としにくいのが特徴です。
  • バイオフィルムはさらに時間が経つと石灰化して「歯石」という硬い物質に変わります。こうなると歯ブラシではとれなくなってしまいます。
どんなに気を付けて磨いても、歯磨きだけで歯垢を完全に落としきるのは 難しいです。きちんと歯磨きをしていても、だいたい3~4ヶ月できれいな歯に悪玉菌がつき歯垢が溜まりはじめてしまいます。3~4ヶ月に一度のメインテナンスで歯垢を除去し口内をチェックす ることが奨励されているのは、このためです。
ただし、口の中の状態には個人差があるので、定期メインテナンスは歯周病治療中などで1週間に 一度が適正の人もいれば、6ヶ月に一度でいい人もいます。3~4ヶ月に一度はあくまで目安の数字です。

【メインテナンスはどのくらいの効果があるの?】

定期メインテナンスを受ける一番のメリットは、なんといっても虫歯や歯周病にならずに 済むことです。もしなったとしてもごく初期の段階で治療することができるので、結果的に歯へのダメージも少なくなり、歯を長持ちさせることができます。定期メインテナンスの効果を示す具体的な数字としては、2004年に発表された、スウェーデン・イエテボリ大学 のAxelsson教授をはじめとする研究グループが1970年から30年間の研究結果をまとめた論文が有名です。その内容は、500人以上の被験者に最初の2年間は2ヶ月に1度、その後は3~12ヶ月間隔で定期メインテナンスを受けてもらい、メインテナンス開始年齢と30年間で虫歯になった数と抜歯した数を調べるというものでした。結果は以下の通りです。定期的にしっかりメインテナンスを受ければほとんど歯は悪くならないこと、定期メインテナンスは若い頃から受けた方がより効果が高いことが窺えます。
 
メインテナンス開始年齢   調査年齢   30年間の齲蝕(虫歯)数   30年間の抜歯数
20~35歳   50~65歳              1.2本            0.4本
36~50歳   66~80歳              1.7本            0.7本
51~65歳   81~95歳              2.1本            1.8本

ちなみに厚生労働省が2011年に行った歯科疾患実態調査によると、日本の場合、2011年時点での1人あたりの歯を失った本数の平均値は、60~65歳で5.9本、70~74歳だと11本、80~84歳で16.1本でした。これを考えると、上記の定期メインテナンスを受けた場合の抜歯本数がいかに少ないかが分かるのではないでしょうか。
 
※虫歯は悪くなればなるほど、治療にお金も時間もかかってしまいます。定期メインテナンスには費用がかかりますが、虫歯を予防できれば結果として治療費が抑えられるので、費用面からみても賢い選択だと言えるでしょう。