自主映画制作
昔、一度だけ自主映画を撮ったことがあります。シナリオからはじまり、絵コンテ、演出、撮影、編集と、友人のディレクターと二人で制作しました。今では笑い話ですが、当時はまさに七転八倒、映像制作がいかに大変であるかを思い知らされた一作でした。
一番、頭を悩ませたのは音声です。使えないシーンが続出して、再度、俳優さんを呼んでアテレコを試みました。それ以外にも、車のナンバープレートを消したり、自転車で走り去っていくオバサマを消したり……。千枚におよぶコマをフォトショップで一枚一枚消す作業を友人が一人でこなしてくれました。そして、靴音。これも後づけです。本当に、よく完成したものだと感心してしまいました。創作にはやはり情熱が第一の要素なのだと今でも思います。
カメラはSONYのPD150一台でした。肩ナメショット(肩ごしショット)は、俳優さんに同じ演技を何度もしてもらいました。ソダーバーグ監督がこの手法をとるらしいのですが、わたしにしてみれば、時間と金にいとめをつけない、もしくは、時間はあるが金がない、どちらかでないと使いたくない撮影手法です。
編集を終え、最終的にDVDにやきました。友人のディレクターがオーサリングをしてくれたDVDメニューをみたときは、感動の嵐でした。この瞬間のために数ヶ月間も苦労してきたのだと確信したほどです。また撮りたいのですが、映像制作はお金がかかり、とうてい何度も挑戦できるものではないですね。でも、一生に一度くらい、映画監督をやってみたかった。夢がひとつ叶ったわけです。これは、わたしの創作活動を、とても豊かにしてくれました。
最近、コンペ用のCM制作に関わることになりました。30秒の世界です。シナリオから絵コンテ、撮影、演出、編集、すべて任せてもらえるというので、今、企画を考えています。頭の中にあったイメージが現実となって画面にあらわれる時の感動はすてがたいもので、これは一種のウィルスに感染した感があります。でも、このウィルス、願わくば一生、居座って欲しいですね。