大森ヒデノリ氏のことを、自分は「大森先生」と呼んでいる。
個人的にレッスンをしてもらったわけではないのだけれども、自分にとっては不動の師匠だと思っている。
二十歳かそこいらだっただろうか、大森ヒデノリ氏に出会ってから、フィドルというものを知り、バウロンを知り、今日の自分があるのも「先生」のおかげに他ならない。
何もわからないままワークショップやサークルなどに参加したりしながら、彼のエッセンスをほんの少しずついただいてきた。
音楽的にも精神的にも、自分なりに(それがまた同時にダメなところなのだけれど)受け取って活かしてきた。
自分と同じく大人になってからフィドルを始めたという経歴からは想像もつかないほどの知識と経験から醸しだされるその音楽に憧れ、その人柄に常に畏敬の念を抱いてきた。
はじめの頃は接するときに本当に緊張していた。仕事として呼んでいただき初めてステージに立った時は、無性に脂汗をかいたものだった。
音楽に対して、人に対してのその向き合い方に、自分も応えようとすると、何人自分がいても足りないのがよく分かった。
あれから数多くの場所で演奏をさせていただきながら、まだ至らぬながらも成長し、根拠のない自信もまとうことによって、ステージではようやく先生を支えることができるようになってきたように実感するこの頃。
今回の大森ヒデノリ氏・八尾文化新人賞受賞記念コンサートでは、彼の歴史を紐解くステージになり、ありがたくもいろいろなシーンでご一緒させていただきながらここまでこれたことを回顧しながら、へつらいなく謙虚かつ大胆に演奏させていただいた。
そのすばらしい音楽を感じていただいた方には語らずとも分かっていただけることだろう。
直接本人に伝えることは大事と思いながらも、面と向かって敬意を伝えすぎてもしつこくなるので、今となってはあまり多くは話さないのだけれども、
大森先生はやっぱりすごいのである。
これからも後ろから師と仰ぎ続けながら、となりで同じ方向を向いていけるよう、精進あるのみ。