天ノ弱
僕がずっと前から 思ってたことを話そうか
それは真夜中の潤さんからの突然のメールだった。
≪友達に戻れたら もうこれ以上は望まない≫
・・・え?私何かしちゃったかな?
でも、潤さんが望んでるんだから・・・いいや。
≪わかりました。佐藤さん。それでは、おやすみなさい≫
これは、私と潤さんの4月1日のお話
朝、私は遅くに起きてしまった。
あ・・・学校間に合わないや。面倒くさい。休んじゃえ。
そういえば、今日バイトだな・・・
潤さんとシフト被ってたっけ、仕方ない行くか・・・
早めにいけば潤さんは学校だから大丈夫。
携帯を開けば
≪今日学校に迎えに行くか?≫
なんて佐藤さんからのメールが一件
私の返信は…
≪大丈夫です。今日は早いので、それにただのお友達ですから勘違いされても困ります。安心してください。佐藤
さんのこともう好きじゃないですから≫
嘘つきの私が吐いた"反対言葉の愛の歌"
そうだ、きっと佐藤さんは轟 八千代さん…チーフのことがやっぱり好きなんだ。
そう思うと、自然と涙が出てきた。
『あれ…?おかしいな?こんなはずじゃないのに…あはは』
メリーゴーランドみたいに回る
私の頭ん中はもうグルグルさ
お昼前に、ワグナリアへと重い足を運ぶ。
今日はこっちの地方はどしゃぶりの晴天でした
別に君のことなんて考えてなんかいないよ
扉を開ける時の手に気が付いた。
あ、右手の薬指・・・指輪外すの忘れてた・・・
『っっ・・・邪魔だからいーらない!!』
なんてどっかの誰かさんに聞こえるように、貰った指輪を笑顔で外す。
そして扉を開けた。
更衣室に入って、着替えて扉を開けるとそこにはタバコを片手に休憩してる佐藤さんがいた。
え・・・?嘘・・・っ?!
佐藤さんは外を見ていたようで、気が付いていないと思ったんだ。
そのままキッチンに行こうと休憩室から出ようとした。
「・・・野村。チョコ好きだろ。ほらよ。じゃあな」
そう言って佐藤さんは、私の頭を撫でた。
思わず私は更衣室に再び入ってしまった。
なんで?なんでなんでなんでっ?!
どうして、そんなに優しくするのっ?同情…?そんなわけないよね…
ああ・・・もう・・・
この両手から零れそうなほど 君に貰った愛はどこに捨てよう?
限りのある消耗品なんて私は
要らないよ…
更衣室でただただ泣きじゃくる私
数十分後に、気を取り直して私は更衣室を出た。
そして、厨房に入ろうとした瞬間――・・・
「佐藤くん佐藤くん!!聞いて聞いて!杏子さんがねっ―――」
「はいはい・・・」
嬉しそうに、佐藤さんに話しかけるチーフ八千代さん。
少し頬をゆがませた気がする 佐藤さん…
姿は見えないのに言葉だけ見えちゃってるんだ
「楽しそうだよね~。轟さんホント呆れないよね。ね!ゆたちゃんっ!」
そう声掛けて来たのは、相馬さん。
『そうですね。相馬さん。』
「そういえば、今日のこと知ってる?」
『・・・え?』
「しらないの?」
『いえ、別に知らなくていいです。倉庫から物取ってきますね。』
そう言って私は倉庫に向かった。
私が知らないことがあるだけで気が狂いそうだ…
『ふぇっ・・・っっ・・・』
ぶら下がった感情が 綺麗なのか 汚いのか
『うぅっ・・・ひっく・・・っっ・・・』
私にはまだわからず捨てる宛てもないんだ…
なんとか落ち着かせて、深呼吸して頬をパチンと叩いて
厨房へと戻る。
「ゆたちゃんっ!あのねっ!・・・あれ?元気ないね?どうしたの?」
ぽぷらちゃんが私に駆け寄る。
『えー?そぉ?そんなことないよっ!ところでどうしたの?』
「ならいいんだけど…。あのねっ!お客さんに…「君、中学生?」って言われたんだよー!!ムキーッ!!私高校
生なのにっ!」
『そうだねっ!ぽぷらちゃんは高校生でお姉さんだもんね!!』
「わかってくれる?やっぱり、ゆたちゃん大好きぃっ!小鳥遊くんは、小学生って言うし・・・」
『あはは・・・。あ、ぽぷらちゃんこれから私ホール出るね?時間だから』
そう言って私は、時計を指さす。
「うんっ!まってるね!それじゃっ!」
そう言って走って行ったぽぷらちゃんの背中を見送った。
私は、更衣室に向かってった。
廊下と淡々と歩いていく。
・・・あ、今日学校行ってないな、休むの初めてかも。
休憩室に入ると、そこには小鳥遊くんが居た。
「あ、野村さん。どうしたんですか?」
『小鳥遊くん・・・。ううん。なんでもないよー?』
そうにへらーと笑うと、小鳥遊くんはコッチを見てニッコリ笑った。
「はぁ~~~…かわいいなぁ…野村さんは…小さくて…」
『えぇっ?!私そんなに小さい?!ま、まぁ平均以下だけど…』
「小さいからこそ可愛いんですよ!どんな野村さんでも可愛いです!!」
『え、あ、う…うん。じゃぁ、ホールの服に着替えてくるね~またホールで』
そう"笑顔"を貼りつけて、更衣室へと入って行った。
着替えが終わって、ホールに出てお客様の対応をいつも通りにきちっとする。
ここまでは完璧だったのに――……
『いらっしゃいま……「野村、お前今日学校休んでバイトなんてどうしたんだ。」……』
目の前に現れたのは、友達でも先輩でもなく担任だった。
どうやって此処が分かったんだろうなー…あぁ、友達か…
「こんなことして成績が落ちたらどうするんだ!今は1位をキープしてるからいいが、バイトなんかで――――」
ああ・・・うるさい・・・バイトなんかで?他に何が許されるんだよ…。
成績成績成績成績成績成績成績成績成績ってうるさいっっ!!
『でも、これは私がやりたいし、決めた事なので≪パチィンッ!!≫…』
言葉の続き位言わせてよ。はぁ……なんで担任なんぞに頬叩かれてんだろうな。
「こんなバイト辞めろ!!わかったな!!」
そんな捨て台詞吐いて帰っていく担任。
なんだよ。そんな事だけかよクズ野郎…
頬…痛いなぁ…口の中血の味する……最悪だ。
そう心の中でグチグチ言ってると、ぽぷらちゃんとまひるちゃんが寄ってきた。
「野村さん大丈夫?!今の人知り合いなのっ?」
『え、あぁ、うん。担任でね今日初めて休んだ…っていうかさぼっちゃって』
「もうっ!あんな人が担任なんて嫌だよね!ゆたちゃん本当に大丈夫?」
心配する2人に向かって笑顔で対応する。
もちろん、貼りつけただけの
頬が赤いと言うので、休憩室でしっぷを貼ってもらうことにした。
休憩室に向かっていると、佐藤さんと目が合ってしまった。
だけどすぐにそらした私……
言葉の裏の裏が見えるまで待つからさ
『っっ……私バカだな……』
待つくらいならいいじゃないか
「え?どうしたの…?野村さん」
『ううん。大丈夫だよ』
シップを貼ってもらって、私はお皿の片づけに移った。
――ガシャンッ!!
つい、お皿を落としてしまった。
しかも二枚。
あー……綺麗に割れたな、粉々。
「野村さん!大丈夫ですかっ?!」
駆けつけてくれたのは、小鳥遊くん。
毎度毎度ありがとう。って言いたいよ。
『うん。大丈夫だよ。あ、小鳥遊くん3卓様お願い。私片付けるから』
「はい!気を付けてくださいね!」
『りょーかいっ行ってらっしゃい』
なんてニコニコ見送る。
ああ……もう疲れちゃったな。帰ろう…
破片を片手に持って、細かいのでも拾って持って
ゴミ箱の前に立って、その手を強く握った。
グチャッ…ぴちゃ…ぴちゃっ…
手の肉が切れて、血が垂れてきたのが分かった。
またギュッ…と握って血が垂れての繰り返しだった。
その手を開いて、ゆっくりとポロポロと割れたお皿の破片をゴミ箱の中へと入れていく
進む君と止まった僕の
『……っ……ふぇっ……』
縮まらない隙を何で埋めよう?
『……うぅ……ぁぁぁぁぁっ!!』
まだ素直に言葉に出来ない僕は
『っっ……ケホッケホッ……ズッ……』
天性の弱虫さ
血だらけで、切れてて、骨が少し見えてて、
小さな穴が出来て、零れ落ちた血は床に水たまりを作っていた。
声を殺して涙を流して、目をぎゅっと瞑って
大好きな人を呼ぶ声を小さくして少し震えて、鏡を見てまた
笑って見せた。
……私、道化師みたい……
なんてぽつりと思いながら、杏子さんのとこに歩いていく。
ぽたぽたと…床に血が垂れていることなんて忘れて
杏子さんに言おう……今日はもう帰りますって…
そんなことを思って、杏子さんの前に立った。
「野村。お前手……包帯軽く巻いてやるからコッチこい」
『あっ!杏子さんっ!大丈夫だよ!』
「いいから、ほら手ェ出せ。」
『ありがとう。杏子さん。今日はもう帰るね。』
そんな簡単な会話を終わらせて、誰にも会わないように私は
帰宅した――――
0時前、ドアがガチャッと音を立てて空いた音がした。
少し怖くなった。
不法侵入者…っていうのかな?泥棒?
だんだん不安が積もって行った。
「野村……」
その声の主は――――…………
『さとー……さん……?』
「悪かった……相馬がエイプリルフールだからってのったらお前がこんなんになるとは思わなくて……」
この両手から零れそうなほど
『ふぇ……潤さっ……ぅゎぁぁぁぁぁぁぁんっ』
君に渡す愛を誰に譲ろう?
「ごめん……ゆた……」
そんなんどこにも宛てがあるわけないだろ
『潤さんのっ……ばかぁぁぁっ……』
まだ待つよ
泣きじゃくる私を優しく包み込んでくれた潤さん。
だから、私は―――
潤さんを好きになったんだ
もういいかい……
……もういいよ
-END-