前回の続き、後編です
(写真はイメージです)





東口に着いた昴
連絡通路を走り抜け改札から新幹線ホームへ









  





急いで階段を駆け下りてホームへ出た





 

『ハァハァ…え、駅員さん…スミマセン

まだいいですか?人を探してるんです』

 

 

『あと10分だよ』けげんそうに言われた

 

ホームを小走りに窓から中を覗く

 

『居ない、居ない、居ない、どこだ』

 

 

真理の姿は見えない、見逃してしまったのか?

不安になりながら両目だけが

尋常でない早さで中の人を確かめる

 

 



 

ー駅員のアナウンスー

 

『本日もこまち号をご利用頂き誠にありがとうございます。

さて令和の年 初めての

クリスマスイブとクリスマス

JRW東北が企画しました、お客様からメッセージを書いて頂いて各駅に張り出すというもの

先ほど乗務員が渡しました画用紙に

列車での旅の思い出、嬉しかった、楽しかった、悲しかった、寂しかったというような見送りお迎えの時の列車、駅に関する思い出を書いて頂きたくお願い申し上げます。

尚、メッセージを書かれた画用紙は最寄りの扉の横に設置した投入箱に入れて頂きますようよろしくお願い致します。

またもう1つの企画として

出発を知らせるメロディー音を、今日と明日の2日間のみ銀河鉄道999で鉄郎とメーテルの最後の別れの時に使われた金属ベルの音を使わせていただきます。

新しさと懐かしさを交えまして、この二日間

新幹線ホームの駅員一同頑張らせていただきます

 

それと…大変申し訳ありませんが、現在少々トラブルが起きまして3分程発車が遅れそうです。

ご了承頂きたくお願い申し上げます。

それではいつもは発車してからのご案内ですが

秋田~仙台間、こまち96号の停車駅をお知らせ致します

ここ、秋田の次は大曲、角館、田沢湖、盛岡、新花巻、北上、水沢江刺、一関、栗駒高原、古川、仙台となっております』

 

駅員さんがこちらを見てニヤリと笑った。

ごめんなさい、ありがとう



 

 

走ってきたので呼吸が荒い。

吐く息が白い

そんな寒さの中、

頭から湯気が出るくらい汗をかいて

流れた汗が右目に入る

 

『あっ!』折り返して次の窓を見ようとしながら体だけ反転しようとする

 

窓を叩く

 

『真理!真理!』

 

真理には聞こえない、向こう側の座席の所で

しゃがみこんで女の子と話しをしてる

 

『真理!気付いてくれ!』

 

あまり叩くものだから、

そこに座っていた老夫婦のおばあさんが

真理の肩を叩いて話しかけてくれてるようだ

 

『もし…お嬢さん。

外のあの方はあなたのお知り合い?』

 

振り向く真理

 

『昴…』

 

『真理!外に来て!』

 

『何?聞こえない』

 

聞こえてないようだ。車両の入り口に向かう

真理も小走りに窓を見ながら入り口に向かってる

 

 

おばあさんが

『あら、乗務員さん!ちょうど良い所に来たわ。

ほらあのお嬢さん、もしかしたら…』

 

 

…アナウンス…

 

『東京発秋田行き、スーパーこまち31号

到着予定時刻20時12分

まもなく11番線に入ります』

 

 

こまち31号が隣のホームへ入ってきた









 

…アナウンス…

 

『本日も御乗車、誠にありがとうございました

列車内でのお土産品やスマートフォン、スマートフォンの充電器、帽子、傘の忘れ物が大変多くなっております…』 

 

 

『真理、良かった。間に合った』

 

 

『昴…』

 

 

『今日言わないと…俺一生後悔する。』

 

 

『…えっ?』

 

 

『俺は…』

 

 

『…』

 

 

『俺は真理が好きだ!

ずっと…ずっと好きだった

だからこないだのように他の誰かが真理に告るのを見るのは嫌だった

すぐに断ってくれなかったから何でだよ!って自分勝手に怒っちまった

でも俺には真理しかいない

真理じゃなきゃだめなんだ!』

 

 

 『…昴…あの時はね、

誰であれ私を好きだと言ってくれた。

付き合う付き合わないは別にして、私を想って告白してくれた気持ちにありがとうと思いたかった。

彼氏が居ますとか好きな人がいますと言って断るのは簡単。でもそれじゃあ、その人の告白しよう!と思った勇気と想いはどうなるのかなって。うまくいえないけれど、ごめんね…でもありがとう。そんな気持ちを伝えたかったの』

 

 『どこまでも優しいんだな…』

 

『そんな事ない。もしかしたら誰にでもいい顔したい八方美人になってしまうものね…

ひどいかもしれないけど、付き合えないならごめんなさいとすぐに答えてあげる方が優しいのかもしれない。

だって1番の思い人を悲しませてしまったし』

 

『えっ?』

 

『私も昴が好きよ、大好き

私もあなたのことずっと好きだった』

 

 

『じゃあ、どうして?

急に怒って仙台に帰ろうとしたの?』

 

 

『同級会の昴の態度もある。でも昴が一昨日の日曜日にデパートの宝石店で可愛い女の人と仲良く宝石見てたのを見てしまったの。知らないうちに彼女出来てたんだと思ったの、だから…』

 

 

『はぁ?彼女?あっ、違う、違う。あれは会社の先輩の奥さんだよ。

多分、真理が見たのは先輩が子供をトイレに連れて行った時かも…俺と女性二人きりだったんだろ? 』

 

 

『…うん』

 

 

『じゃあ、やっぱりそうだ。俺、土曜日怒って帰った。だけどやっぱりそんなんじゃダメだって。自分の気持ち伝えるべきだって。

だから真理に指輪をあげたいと思った。

ちょうど宝石店に行ったら先輩夫婦が居て結婚指輪選んでたんだ。できちゃった婚で、子供が出来たけどお金無くて結婚式挙げずに籍だけ入れてたみたいで…

だけどようやく子育てにも生活にも少しだけゆとり出来たから、せめて指輪くらいは買ってあげなきゃって見に来てたの、子供がトイレに行きたいからって先輩が連れて行った時だと思うよ。二人で見てたのは、俺、そういうのさっぱりわからんから、女性って好みはあるけどどういうの買えばいいのかアドバイスもらってたんだ』

 

 

『…そうだったんだ、私の早とちりだったんだね』

 

 

 

『なんにせよ誤解が解けて良かったけど

サプライズが後になってしまったな…

サイズわからなかったからチェーンに通して

ネックレスにしてもらったんだ

安物だけど…貰ってくれないか』

 

 

『うわ~嬉しい…ホントに嬉しい

安いなんて言わないで

プレゼントって、高い安いじゃないよ。

慣れないお店で、どれにしようか、どれが私に似合うだろうって悩みに悩んで選んでくれたものだもの。

心がこもってるプレゼントだよ。

その想いが私には最高のプレゼントだよ』

 

 

『ありがとう…』

 

 

 『…どう?似合うでしょ?』

 

 

『自分で言うなよ(笑)』

 

 

『だって、私のために昴が買ってくれた物だもの。へへへ指輪、入んないかなぁ…ちょっと大きいかな』

 

 

 

ー駅員のアナウンスー

 

『秋田発、本日最終列車こまち96号仙台行き

3分遅れでございますので20時17分発、到着予定時刻は23時04分となっております。

そこの幸せいっぱいのカップルさん、そろそろ出発したいんですが、どうするのかな?』

 

 

『えっ、ごめんなさい。あっ、どうする?』


 

『今日は帰りたくないけど…荷物がまだ中に…』

 

 

『荷物はこれだけで良いのかな?』

乗務員さんが真理の荷物を持ってきてくれてた

 

 

『先ほど、おばあさんに『もしかしたら、あのお嬢さんこのまま降りるかもしれないから、その荷物一応出口まで持っていってくれないかしら』って言われまして』

 

 

『えっ?』

 

 

座っていた方を見た

おばあさんが窓越しに笑って手を振ってる

 

 

『今度は二人で列車の旅を楽しんで下さいね

またの御乗車、お待ちしております』

 

 

『すみません、ありがとうございました。

次は必ず乗ります』





 ー駅員のアナウンスー

 

『大変お待たせ致しました。トラブルも無事解消されました。こまち96号仙台行き、発車致します。お見送りのお客様、危険ですので黄色い線の内側まで下がってお待ちください』

 

 

(ここから曲を聴きながらどうぞ)




『あっ、雪…』 空から綿菓子のような大きな雪がフワフワと沢山降ってきた

 

 

『ホワイトクリスマスになったな…』

 

 

ーアナウンスー

『まもなく、12番線から秋田新幹線

スーパーこまち96号仙台行きが発車します。

閉まるドアにご注意下さい』

 

 

駅員

『JRW東北の

スペシャルジングルベルをどうぞ!

HAPPY Xmas』


ジリリリリリリ…と、けたたましく

発車を知らせるベルが鳴る





 

 

『乗降終了ドア閉め!側灯、滅!レピーター点灯!前方良し!しゅっぱーつ!』

と白い息を吐きながら駅員さんの指差喚呼、

そして

ピィーーーッと大きく笛の音が響く

 

ホームからゆっくりと、こまちが出て行く

 

 『こまちって、赤と白の紅白だから

サンタの服と同じ色、なんかいいね』




 

 

『そういえばそうだね。あれ?窓に乗客のみんなが画用紙を当ててる…何か書かれてる』

 

 

 

『カッコいいぞー!!』

 

 

『お似合いだ、お二人さん』

 

 

『クソーッ!羨ましいぞ』

 

 

『良い夢見ろよ!』

 

 

『幸せにね~』

 

 

『俺にも幸せくれ~』



『とっても素敵な夜』

 

 

『窓に張り付いて見ちゃいました』



『ステキなXmasイブ!JRW東北サイコー』

 

 

『あっ、おばあさんが…』

 

 

『お二人 いつまでも仲良くね』

 

 

『ありがとうございます』二人で頭を下げまくる

 

 

『ねぇママ、あのお姉ちゃん泣いてるよ。

どうして?』

 

 

『あなたも大人になって、その時がきたらわかるわ。あのお姉ちゃんにはみんなより少しだけ早くサンタさんが来たのよ』

 

 

『えっ、そうなの?いいなぁ』

 

 

『だから、あなたも素敵なレディーにならなきゃね』

 

 

『うん』

 

 

 

『映画のワンシーンを観てるようだったな

声は聞こえんでも、感動したわい』

 

『そうですね、おじいさん。素敵な旅の始まりになりましたねぇ…

私たちの若い頃を思い出しますわ』

 

 

『あんな風に見知らぬ人から祝福されるような結婚じゃなかったけどのぅ』

 

 

『フフフ。今どき、かけおちするカップルなんていませんよ』

 

 

『えー、おばあさん達、かけおちしたんですか?すごーい』

 

 

『ママ、かけおちってなぁに?』

 

 

『なんじゃ?聞きたいのか?わしらの恋話』

 

 

『おじいさんがしたいだけでしょ、恥ずかしいからやめてくださいな』

 

 

『聞きたい、聞きたい』

 

 

『そうか、そうか、じゃあ、仙台まで時間はたっぷりあるからな~。えーっ、ゴホンゴホン』



 

 

列車は素敵な夜の余韻を乗せて

雪の街を後にする

 

 





 

『さてと…帰りますか!』

 

 

『もしかしたら沙織達が待ってるような気がしない?』

 

 

『かもな(笑)そういえば…同級会の日、遅れて来たね。どうしたの?』

 

 

『そうでした!実はこれなんだけど』

 

 

真理がカバンの中から袋を出す

 

 

『仙台で編み物うまい人がいてね…やってみようかな~って、習って少しずつ編んでみたの。でも、上手くいかなくて、編んではほどきの繰り返しでギリギリまでかかって…

不細工だけど…よかったら…どうぞ』

 

 

袋を開けると中にはマフラーが入ってた

 

 

『うわ~、ありがとう。…こう巻くんだよな?

どうかな…』

 

 

『うん、似合うよ。良かった。渡せて…』

 

 

『暖ったけ~、でも心が1番暖ったけ~よ(笑)』

 

 

『もう、バカ!寒すぎ(笑)

ねぇ、腕組んでいい?』


 

『荷物あるからダ~メ!』

 

 

『あー、いじわるなんだから!もう』

 

 

 

 

 

駅員

『…3分遅れ…どう処分されるかなぁ…

始末書で勘弁してくれないかなぁ…』

 

 


『ええよぉ!』

 


 

『うわあーっ、びっくりした!深野駅長~!』

 

 


『列車は時間厳守は当たり前

1本の列車の1分の遅れはその後の何十本の列車の遅延になって、何千、何万人のお客様に迷惑がかかることになる。

しかしなぁ…あの二人には、ほんの数分の時間が必要だった。おかげで幸せになった。

そしてその場に居合わせた乗客の人達もその数分の遅れのおかげで今日、仙台に着くまでだけでなく毎年Xmasイブの日がくる度に

今日の幸せな出来事が思い出される。

それって素敵な事だと思わんか?

おまえさんのおかげだぞ』

 

 

『それって…許してもらえるって事ですか?』

 

 

『ええよぉ!まぁ最終列車だったし

始末書と謹慎3日くらいでね!ウフッ』

 

 

『そんなぁ~トホホ』

 

 

『それ、かなり軽くしての話しだぞ

実際どうなるかはわからん。ワシもお願いしてみるがな…まぁ、ワシの顔の大きさで何とかなるだろ!プププ( ´艸`)』←何か間違ってる

 

 

『すみません、ご迷惑おかけします。

駅長の顔が異常に大きくて良かったぁ』

↑かなり何か間違ってる

 

 

 

 

 

ご近所の駅員のおじさん

 

『ウッシッシ、いい動画が撮れた。昴の結婚式の時のサプライズに…』←極悪w