髪長私学2 第11話 | 人生は後半からがおもしろい‼

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人生の後半を自分らしく生きる。そして心身ともに健康で、満足いく人生を生きる。そんな自分の軌跡を綴るブログ。Since 9,January 2009

~第11話~ 新しい舞台へ

 

結を外に連れ出して、楽しい一日を過ごした坂本であったが、どうしてもあの言葉が心に引っかかっていた。

 

それは、結がポツリと言った「学校に行きたいなあ」という一言だった。

しかし、現実は厳しかった。学校に戻ると、またいじめに遭うのではないかというトラウマが結にはあった。

 

その原因は、身長よりも長い黒髪。学校では「みんなと同じ」という価値基準に合わず、それを快く受け入れてもらえる環境にもなかった。

 

   

かと言って、「みんなと同じ」基準に合わせるために、大切に伸ばし続けてきた髪をバッサリと切ることなど出来るわけがない。

 

このままずっと、結と個人授業を続けるしかないのだろうか? ショッピングモールで嬉しそうにはしゃいでいた結の姿が目に浮かぶ。坂本の頭の中から決して結のことが消えることはなかった。

 




休日のある日、本屋に立ち寄ると、見慣れた顔があった。向こうもこちらをじっと見ている。

 

お互いにすぐ分かった。坂本が勤務していた中学校の校長 (大城文雄) であった。

坂本 「校長先生、お久しぶりです!」

大城 「坂本先生、元気でしたか? 久しぶりだから、どう? お茶でも飲みながら」

坂本 「いいですね。じゃあ、ご一緒に」

坂本が大城校長に退職届を提出したあの日以来の再会であった。二人は本屋に併設されている喫茶店に入った。

 



大城 「本当に久しぶりだなあ。今はどうしてるの?」

坂本 「はい、私が頭から水をかけたあの女子生徒の家庭教師をしてまして」

大城 「えーっ、そうなのか?!」

 


 
坂本 「はい、あれから母親共々お願いをされまして、勉強を教えて欲しいと」

大城 「それでずっと面倒を見てるということか」

坂本 「はい、そうなんです。学校に行く気になった矢先にあのようないじめに遭ったので、再び学校に行けなくなりましてね」

大城 「そうだろうなあ。私も校長として、責任を痛感しているよ。それにしても、君を失ったことは痛手だよ」

坂本 「ありがとうございます。そのように仰って頂いて」

大城 「ところで、今後の身の振り方だけど、どうするつもりなのかなあ」

坂本 「春からずっとあの子と関わってきて、何とか学校にいけるようにしてやりたいと思っているんです。本人もその気持ちはありますから」

大城 「そうか。でも、今のままでは、またいじめに遭うかも知れないなあ」

坂本 「今のままと言いますと?」

 



大城 「あの長い髪だよ。校長室であの子と話をした時、生まれてから一度も切ったことがないと言って、長い髪を見せてくれたんだよ」

坂本 「そうだったのですか」

大城 「いやー、驚いたよ。あんなに長い髪の女子生徒を見たのは初めてだったからねえ。

 

長い教員生活でも、あの子みたいな生徒はいなかったなあ」

坂本 「そうでしょうね。私も同じくです」

大城 「あの子が小学生の頃に不登校になったのも、長い髪が原因だったそうじゃないか」

坂本 「ええ、ですから髪の長い子でも仲良くしてくれる学校があれば・・・と思うんですけどね」

大城 「長いと言ってもねえ。せめて普通の女の子みたいに、背中の辺りくらいまで短くできないのか?」

坂本は絶対にそんなことはできないという強い気持ちを厳しい口調で言った。

坂本 「校長、それは無理です! 人は誰でも自分が大切にしているものを失いたくありません。たとえ他人が平気で処分できるものであっても」

大城 「う〜ん、まあそうだが」

坂本 「それがあの子にとっては、長い黒髪なんですよ」

大城 「なるほどね」

 



坂本 「親子揃って髪を伸ばしているんです。そしてその長い髪を大切にしています。それに・・・」

大城 「それに、どうした?」

大城 「あの子と関わって、私自身が長い黒髪に魅了されてしまいまして。これが究極の女性美だと思うようになりましたよ」

大城 「へえー、そうなのか。 それなら良い話があるんだよ」

坂本 「良い話と言いますと」

坂本は姿勢を乗り出すようにして、大城の話を聞いた。

大城 「あの子の長い髪を見て思い出したんだけどね。ピッタリの学校があるんだよ」

坂本 「そんな学校があるのですか? どこにですか?」

大城 「京都女学院という学校だ。私立の女子校なんだが、とにかくユニークなんだよ!」

坂本 「ユニーク? どんな学校ですか? あの子も通えそうですか?」

坂本は矢継ぎ早に大城に向かって質問をした。

大城 「いやー、ピッタリだよ。逆にあの子でなければ通えない学校だね!」

坂本 「本当にそんな学校があるのですか?」

大城 「あるんだよ、それが。その学校の女子生徒たちは、全員が驚くほど髪が長い!」

坂本 「えーっ? 校長、それ本当の話ですか?」

大城 「ああ、本当だとも。この学校の理事長が、立派な方なんだ。以前に講演会があって参加したんだけど、すぐにファンになってしまったよ」

坂本 「校長がファンになるほどの方なのですか」

大城 「それがご縁で、今でも懇意にしてもらっているんだ。もし良かったらお会いしてみないか?」

坂本 「それはぜひお願いしたいところです!」

大城 「分かった。それなら私から理事長に話をしておくから、日程が決まり次第連絡するよ」

坂本 「校長、ありがとうございます!」

大城 「あっ、そうだ。もう5年ほど前のことになるけど、理事長にお会いした時、娘さんも同席されてたんだ。いやー、その娘さんには驚いたよ!」
 
坂本 「何がですか?」

大城はスマートフォンに保存してある写真を探し始めた。

大城 「あった。これだよ。ちょっと見てみるか?」

坂本 「はい」

 



写真には、とても綺麗な若い女性が写っていた。緑が広がる芝生の上で微笑む女性の姿があった。

坂本 「ああ、綺麗な女性ですね」

大城 「いや、それもそうなんだが、娘さんの髪だよ!」

最初は綺麗なルックスに目を奪われた坂本。彼女の髪は視界に入らなかったが、大城に言われて髪に注目してみると・・・。

 



坂本 「ええーっ、こ、これは!」

大城 「なぁ、凄いだろ!」

坂本 「信じられない!こんな長い髪の女性を見たのは初めてですよ。校長、この長い髪は本物ですか?」

校長は笑いながら答えた。

大城 「本物なんだよ。この娘さんは京都女学院のカリスマ的存在のようなんだ。

 

ハッキリと聞いたわけではないけど、私の見た目では、この長い髪は4メートル、いや5メートル以上あるんじゃないかなあ」

坂本 「すごいですね。度肝を抜かれましたよ。学校を訪問するのが今から楽しみになってきました。校長、どうか今後の事は宜しくお願い致します」

大城 「ああ、分かった。任せてくれよ」

坂本 「ありがとうございます! あの子が通える学校なのか、そして理事長さんがどのようなお考えの方なのか。色々と伺いたいと思います」

こうして、坂本は京都女学院を訪問することになる。理事長と坂本の対面に先立って、読者諸氏にお知らせしておかなければならないことがある。

 

これからは、京都女学院も舞台の一つになり、前作からの読者の方々にはお馴染みのキャラたちが登場する。

ただ、一部に大変悲劇的な登場の仕方をする人物がいる。特にこの人物のファンであった方々には大きなショックを与えてしまうことになる。それでも悲しみを堪えてお付き合い願いたいと思う。

 

 

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感謝 by Ryuta