自殺 1話
12月6日、ぼくは裏庭の柿の木にロープを結びつけることにした。
ロープは2メートル50センチほどの高さにしっかりと結び、首を入れる輪を作った。はじめてやるここなので、ずいぶ
んと手間取ったが、1時間もすると西部劇でみたようねな首釣りができあがった。
{家族への手紙も書いた、先生あての手紙も、ぼくをいじめていたあいつらにも書いてやった。 これでぼく の苦しみがみんなにわかるんだ!}
なんだか、涙がボロボロと落ちてくる。
台所から小さな丸いイスをもってきて上にのり、ロープに頭を入れようとするが、ちょと小さすぎてなかなか入らない。
やっとのことで頭を入れると、自分の重みでイスが沈んだのか、(柿の木の下は、畑になっていて、やわらかい)足がイ
スから離れそうになる。
{まだ早い! まだ心の準備ができていないじゃないか!}
なんとかもがいてもとの戻そうとするが、イスはどんどん傾き倒れてしまった。
{おわりだ! これで毎日苦しいいじめから開放される!}
首吊りじさつをするものではない、とはじめてそのとき思った。
ロープが、身体の重みでどんどんと首にくい込み、痛い! 息ができなくて苦しい!!
なんとか手で自分を持ちあげてみるが、むりやり入れたロープの輪からは、頭を抜くことはできなかった。
頭に血がのぼり、とてつもなくズキズキする!
はなと、よだれがたれていくのがわかる!
どこをどうしてやればいいのかわからなくなり、ロープをはずそうと、ロープの周りをかきむしる。
指先と、首の回りが、真っ赤に染まっていく。
ミシッ!! 柿の木から折れそうな音がした。
{そういえば、ばあちゃんが柿の木はすぐ折れるからのぼるな!と言っていたっけ!これでなんとかなるかも?}
なんとか、枝を折ろうと、苦しまぎれに体をゆらしてみるが、枝が折れるどころかロープがどんどんくい込んでくる。
手足がしびれ 、痛みと頭痛が頂点にたっした時、ぼくは息をひきとった。
ほんの数分の出来事が、まるで何日も苦しんだように思われた。
気がつくと、冷たく暗い部屋の中にいた。それも天上近くうかんでいるようだ。
{やぱり、死んだんだのか?}
かあちゃんも、とうちゃんも、妹も、ばあちゃんもいる。 とうちゃんが真ん中に寝ている人にかけてある白い布をはずした。
{ぼくだ!!}
かあちゃんと、ばあちゃんがぼくにしがみついて泣きだした。 とうちゃんはブルブルと振るえ、大粒の涙を流し、声を
おしころして泣いている。 妹は、「にいちゃん! ちにいゃん!」と叫んでいる。
{ぼくは、、本当に、死んだんだ!!}
その時、はじめて 家族がこんなにも自分を愛してくれたんだと、知った。
ドン!!!
大きな音とともにぼくは、テレビ局のアナウンサー室にいた。 7時のニュースの打ち合わせをしているらしい。
バタン!ドアが開き一人の男が飛び込んできた。{とくだね!とくだねですよ! 又、中学生が自殺ですよ!他のテレビ
局にはまだ知られていません! 」
{ぼくのことだ!! この前自殺した子のようにニュースにながれるんだ!}
「いそげ! 7時のニュースでながすんだ! やったぜ!視聴率があがるぞ!」
やつらは悲しむどころか、とくだねをとったことで視聴率が上がることで喜んでいる。
{ぼくの死は、視聴率に利用されるのか、、。}
ドン!!
又大きな音がした。 今度はぼくのお葬式らしい。
{いた! あいつらだ! ぼくをいじめたやつらが下を向いて泣いているらしい。後悔してるな!}
ぼくは、彼らの目の前に立ち、そと顔を覗き込んだ。
{ウソ泣きだ!!}
しかも、いじめるやつがいなくなったから 明日からいじめるやつをだれにしようかと、相談している。
{なんてやつらだ!!}
ドン!!
次は、学校の体育館の中にいた。 校長先生の話が聞こえる。「命をたいせつにしましょう。○○mくんは、、、。」
ぼくのことをはさしているらしい。ところどころですすり泣きが聞こえる。
{みんな、ごめんな。悲しませて、、、、}
体育館を出る生徒たちは皆、肩をおとし、下を向いていた。
ドン!!
ぼくは、空中にいた。しかも、3階の教室の窓の外に浮いていた。教室からは楽しい笑い声がする。まるでぼくの自殺などなにもなかったかのよに、、。
{なんだよ!あいつら!!}
トントン! ぼくの肩をだれかがたたいた。
振り返ると、、、、、。
つづく
緑の扉 4 (最終回)
スープのいいにおいで目が覚めると、入り口のドア(石)の隙間から少しだけ朝日がさしこんでいる。
ソファーから起き上がり、男の言うがままテーブルについた。テーブルには、温かなコーンスープとパンが用意してあった。
2人とも沈黙のまま、朝食を済ますと、男はおもむろに石のドアを開けた。
外に出ると青い海が広がっていた。(昨日は、森を出た小道だったのに、、)
男は、砂浜に置いてある小さなボートに乗るように言うと、私をのせたままそのボートを力いっぱい沖へと押し出した。
ボートに乗り込んだ男はオールを持つと、沖へ沖へとこぎだした。
穏やかな海は、波の音も心地よく、やさしい潮風が髪をゆらし、温かな太陽の日差しは、いつのまにか私をウトウトと眠りにさそっていった。
どれくらい眠っていただろうか?。ユサユサとゆらされ目が覚めると、小さな島の海岸についていた。男はボートを海岸の端につなぐと、すぐそばの砂浜に越をおろした。(ずっとこいできたから疲れたのだろう。)
だまって男の横に越をおろし、青く広い海をながめる。
ふと、気がつくと、目の前に少しずつではあるが、ドアらしいものが現れてきている。もう慣れっこになっていて、どんなことがおきようと、あまり驚きはしない。(こんどは、このドアの中に入るのかしら?)
[さあ、あのドアを開けるともうお別れだ。最後の食事をしようか。」そういうと、男はカバンの中から真っ白なテーブルと2つのイス、レースのテーブルクロスを出し、食事の支度をはじめた。
入れたてのコーヒーに新鮮な野菜サラダ、カリカリのベーコン。私は、最後の黒色のおにぎりを皿の上に置いた。
コーヒーーで乾杯をして食事をはじめると、なんだかむなしく、悲しくなってきた。(この男と別れることはけして悲しくはないはず。むしろ、ホッとしているのに、、、。)
テーブルの上の料理がほとんどなくなるころ、海に現れたドアははっきりと見えるようになっていた。(いよいよか、、。)
最後のおにぎりのひとかけを口に押し込み、コーヒーで流し込んだ。
男は立ち上がると、はっきりと現れた大きな真っ黒なドアに手をあて押した。ギーギー、、。ドアは地の底から響くような薄気味悪い音をだしてあきはじめた。
ドアが開くと、「さあ、こんどは一人でいくんだ!」 男の言葉を聞くか聞かないうちに、男の持っていたカバンをひたくると、いちもくさんにボートに乗り、沖に出た。
力いっぱいこぎ、男の叫ぶ声がはるかかなたに聞こえるまで、そんなに時間はかからなかった。
ボートはいつの間にかあの砂浜へと導かれ、たいしてこがなくても砂浜の上についた。
私は振り向きもせず、ひたすら来た道を走った。森を抜け、湖の横を通り、美しい花畑を抜けると、あの大きな扉があった。
男のカバンから鍵を見つけ出し、鍵穴に突っ込むと、扉はギーギーと開きだした。生臭いにおいが鼻をつく。
真っ暗な道をなるべくまっすぐに進むと、入ってきた時のドア(入り口)に着たらしいがノブが見つからない。カバンを探り、懐中電灯を見つけ照らしてみる。ドアの下の方に小さなノブをみつけた。
(あのふかふかした地面は何なんだろう、、?)ふと、興味がわき、「ふりかえってはいけないよ。」と言っていた男の言葉も忘れて振り返りじ地面」を照らす。
「あ!。」なんと地面は、見渡す限り人間の髪の毛が敷き詰められていた。あまりの恐怖で足がガタガタ、ブルブルと震える手でノブを回し外に出る。
ドアを開けるとアパートの玄関の中にいた。目の前には見たことのない男がたっている。「いやあ、待っていましたよ。さあ入ってください。」言われるままに上がると、女性が座っていた。
女性は、契約書に名前と印を押すと私に渡した。(え!これは、、、。)私はその契約書をもらうとカバンの中から札束を出し男に渡していた。「おじさん、よろしくおねがいします。」そう言われ、ガラスに映った自分の姿を見て驚いた。小太りで小さな男が映っていた。
その私は、女性を連れ、ヒルズの前を通り、あの緑の小さなドアの前に立ち、今そのドアを開けようとしている。
緑の扉 3
おにぎりの色は緑、赤、青の見たこともない色だった。
男は緑色のおにぎりを食べるように言うと、水筒から1杯のお茶をくんでくれた。
緑色のおにぎりを一口かじるとなんだか心が明るくなる気分だ。
おにぎりをかじるごとに心の中の悲しみがすこしづつ消えていくようなきがした。
男は、おにぎりを食べ終わるのを確認すると、おもむろに立ち上がり歩き出した。
残りのおにぎりを急いでカバンにしまい、後を追った。
小さな泉の岸辺を半周ほど歩くと、大きな木が茂る森の中へとつづく道へ進んだ。
森の中は日の光が所々に入り込み、真っ暗な森の中にかすかな光を与えていた。
地面には、緑のコケらしいものが生えていたが、踏むたびに にじ色の光を放った。(光ゴケってこんなんだろうか?)
あまりの美しさに歩幅をちぢめて歩く。
しばらくすると、胸のあたりがズキズキと痛みだした。
あまりの痛さに、道端でうずくまっていると、男は「コケをふまないようにあるくことだね。」と言い、足を止める様子もなく先を急いで歩いていく。
苦しい胸を押さえ、やっとのことで立ち上がりコケを踏まないように歩く。
森を出ると日はずいぶんとかたむき、まるでまだ森の中にいるかのように薄暗かった。
男は道端の大きな石にカギを差し込むと、(どうして石にカギ穴があるのか??)力いっぱいまわした。
石は、ギーギーと低い音をたてて動いた。(石のドア?)
ドアの向こうには、小さなテーブルとイス、暖炉が見えていた。
男はそそくさと中に入ると、テーブルの上に暖かなミルクと黒いお皿を出した。
そして、私に赤いおにごりを皿の上にのせて食べるように言った。
ミルクを一口のみ、おにぎりをかじった。
泉の時と同じようにすこし明るい気分になった。
さいごの一口をたべおわると、胸の痛みがうそのよに消えた。
男は、暖炉の前に自分のマント敷き横になった。
(ここで泊まるらしい。)
わたしは、小さなソファーに身体を横たえた。
あまりにも長く歩いていたので、足先がズキズキする。頭の上まで突きぬけるようだ。
パチパチと燃える炎をみていると、いつのまにか眠りにおちた。
