さて、本日紹介する本は、南海遊先生の「永劫館超連続殺人事件 魔女はXと死ぬことにした」です!!
本作を紹介するには、まず<あらすじ>を書いた方が分かり易いでしょう――。
<あらすじ>
没落貴族ブラッドベリ家の長男ヒースクリフは、母の危篤の報を受け、3年ぶりに生家、永劫館に帰ったが、母の死に目には会えず、葬儀と遺言状の公開を取り仕切ることになる。
そんな中、大嵐によって、陸の孤島と化した永劫館で、最愛の妹が密室で惨殺されたばかりか、母の友人のリリィという女性も殺害されてしまう。
だが――。
ヒースクリフが、絶命する間際のリリィの瞳を見ていると、二人は一日前に戻っていた。
リリィは、自らが命を落とすと、最後に目を見た者を道連れに、一日前に戻る『死に戻り』の呪いをかけられた魔女だった!!
同じ日を繰り返しながら、魔女のリリィと事件の真相を追うヒースクリフだったが……。
<館>×<密室>×<タイムリープ>の三重奏!!
読む前、「いやいや。盛り過ぎでしょ!!」と思ったのが正直なところです。
設定を盛り過ぎると、物語が重くなってしまうのはもちろん、謎がぼやけてしまうものです。
私なども、盛り過ぎていると感じたときは、敢えて設定を削ったりします。
しかし――。
本作は、私のそんな考えを、いとも簡単にぶち壊すだけの破壊力を持っていました!!
<館>ものの醍醐味でもある、複雑な人間関係の紹介を敢えてすっ飛ばし、冒頭に<タイムリープ>要素である「死に戻り」のシーンを投入することで、読者を世界観に引き込む構成の巧みさもさることながら、複雑な設定を過不足なく説明しながら、ストーリーテリングしていく表現力は、見事としか言いようがありません。
頭の中がどうなっているのか、一度覗いてみたい!!
さらに、登場人物たちは個性豊かで魅力的であると同時に、全員が何かを抱えていて、誰一人として信頼出来ない。主人公でさえ――。
現在進行形の事件だけに留まらず、三年前に起きた、ある一件についての謎まで絡んできて、翻弄され放しでした。
もちろん、<密室>の謎も熟考されていて、読者の知的好奇心をくすぐります。
正直、私には皆目見当もつきませんでした。
ネタバレになるので、多くは語れないのですが、本作の一番の魅力は、ラストの展開であることは間違いないでしょう!!
これだけ広げた大風呂敷を、いったいどうやって畳むつもりだろう? と少々心配になったのですが、「マジか?!」と思わず声を上げてしまうようなトリッキーかつ、芸術的な方法で、謎を解き開かしていくのです!!
おっと……これ以上は、ネタバレになる怖れがあるので発言を控えます。
バラバラだった謎が、一つに収束していく快感に酔いしれること間違い無しです!!
興味が湧いた方は是非!!