さて、本日ご紹介するのは阿泉来堂先生の「ナキメサマ」。
ある書店員さんがTwitterでオススメしていてのをみて、気になって購入した作品です。
あらすじ
倉坂尚人の家に、ある日一人の女性が訪ねてくる。
彼女は、倉坂の高校時代の恋人、小夜子のルームメイトで、地元に帰ったまま戻って来なくなった小夜子を一緒に捜して欲しいと口にする。
倉坂は、さっそく小夜子の故郷である北海道・稲守村に向かう。
小夜子の居場所を突き止めたものの、彼女はある儀式の巫女に選ばれていて、会うことはできないのだという。
倉坂は、しばらく村に滞在することになるのだが、神社を徘徊する異様な人影に遭遇して……。
あらすじからして怖いですねーー。
怖いのに、なぜかページを捲る手が止まらない。
新人離れしたリーダビリティーの高い文体というのもありますが、私は物語の勢いを感じました。
溜めや間を使って、じわじわと怖がらせるのではなく、ジェットコースターのような怒涛の展開で、読者を否応無しに作品世界に引き込んでいくーー。
そんな思い切りの良さと、力強さに溢れています。
だからこそ、因習を扱いながら古さを感じない。
疾走感のある怖さになっています。
と、これだとゴリゴリのホラーだと感じてしまうかもしれませんが、本作はそれだけに留まりません。
極上のミステリー作品でもあるのです。
しかも、そのミステリー要素が本当に素晴らしい!
読んでいるときに感じた若干の違和感ーー。
それら全てが伏線となり、物語を二転三転させ、最後の1ページまで読者を翻弄し続ける。
思考が追いつかないほどに、振り回されるのです。
ここの感情って、ちょっと不自然かもーーと思っていたら、見事にそれこそが伏線だったりするのです。
こういう違和感の出し方も上手いですね。
本作は、横溝正史ミステリー&ホラー大賞受〈読者賞〉受賞作なのですが、大賞でも良かったのでは??と個人的に思っています。
新人でこのレベルで作品を仕上げられてしまってら、もう追いつけない……(泣)
これから、ミステリー界&ホラー界を牽引していく逸材であることは間違いありません。
それだけに次回作が待たれますね。
皆さんも、今のうちに阿泉来堂先生の「ナキメサマ」をチェックしてみては??