「ねえ、好きな季節は?」
「俺? んー……春?」
「へー、なんで?」
「なんでってだって…………お前は好きな季節いつ?」
「夏、一番地球が生きてる感じがするでしょ? それに――」

 

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澄み渡った空に照りつける太陽。

アスファルトに反射した熱がさらに気温を上げる。

つまり何が言いたいかっていうと

 

「マジ暑い」

 

気温31度。向こうに見えるビルは、バカみたいにゆらゆら揺れてる。

つまり何が言いたいかって言うと

 

「何か腹立つ~」

 

……。

 

「腹立つ」

「痛い痛い痛い痛い痛い!! てめっ! ふざけっ! いtttttってえええええええ!」 

 

隣に居るバカの耳を引っ張って暑さを忘れようとしたけどだめだ。

汗は流れ落ちるばかりで、体中の水分なんかもう枯れてしまいそう。

 

「耳が痛い……」

「ていうか、あんたが赤点を取るから毎年毎年こんな暑い季節の折角の休みが無駄になってんでしょ。殴っていい?」

「っざけんな! この耳を見やがれ!」

「あ、耳たぶ柔らかー」

「ふふん、そうだろう。母ちゃんの遺伝だ。どーでもいいわ」

 

はぁ、とため息をつき外を見る。

空は青くて綺麗。入道雲は真っ白。常盤色の葉を生やした木は揺れる。

太陽はぎらっぎらと輝いて部活中の生徒や教師の肌を焦がす。

 

「あとどれくらい?」

「この一問終われば終わる」

「どの問題?」

「第4文型とかなんだよ! わかんねーよ!」

「第5文型との見分けがつかないんでしょ。前にも言ったけど、ここは……」

 

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必死の理解により、割と早めに終わった。

茜の差す校庭に、片づけを始める部活の生徒たち。

 

「部活かー、いいなァ」

 

そんな風につぶやくともきの横顔を、私はただ見つめた。

軽く返事もできない、それほどまでに、こいつのこの言葉は重いものなんだ。

 

幼いころから心臓に重い病気を抱えているともきは、外で遊んだりなんかできなかった。

家が隣で、親同士も仲がよかった私達は、打ち解けるのも秒だった。

というかほぼ、マッハ。

初めて交わした会話は

 

「からすがきいろだったらよかったのに」

「おれあかがいい」

 

何の会話だ。

しかし、これだけで仲良くなったのは事実。

小学校も同じだと知ってうれしくなったのをよく覚えている。

ああ、もうこの時から好きだったんだ。

未だかつていただろうか、カラスの話で恋に落ちる女なんて。

あいつはそのことを知っているし、あいつも私がすきだと思う。

89%くらいの確立で

でも付き合ってはないんだよなァ。

 

そして、小学3年のとき

体育の授業でともきが倒れた。

明らかにおかしな呼吸。止まらない汗。

救急搬送され、半年もの間入院した。

初めてともきの病気の重さを痛感した瞬間だった。

 

「私があんたを支えるから」

 

今思い返してもほぼプロポーズ。

ああ恥ずかしい。

しかし、ともきの答えは

 

「あ、じゃありんご食わせて」

 

無言で顔面にグーパンを食らわせた。

 

そんなことがあって、私はこいつにべったり引っ付いている。

なにがあっても、こいつを幸せにしたいから

 

「おい、おい! はる!」

「あ、何?」

「ドーナツ食い行くか?」

「あ! 行こ行こ行こ行こ」

 

珍しい、こいつから誘ってくるなんて

あれ?

 

「顔赤い?」

「暑いからかな~」

 

そう言って顔を背けるともき。

……こっちが恥ずかしくなる。

 

カバンで軽く殴ると「いってえな!」と口を尖らせた。

 

「バーカ」

「うっせバーカ」

 

顔が熱くてふわふわしたのはきっと、ぎらぎら照りつける真夏の太陽のせいだろうな。