「おかあさん、最近とこちゃんあそびにこないね。」
「学校や部活で忙しいんだよ」
「ぶかつ??」
「とこちゃん剣道やってるんだって、強いらしいよ~」
「けん…どう??」

とこちゃんは道を挟んで隣に住む
わるみぽが大好きなお姉さん。
いろんな楽しい事を遊びながら教えてくれます。

最近では近所の同い年のお友達と遊ぶのも
面白くなってきたわるみぽですが、
ここ何ヶ月もずっととこちゃんが
わるみぽのおうちに遊びに来ていないことが
急に気になりはじめました。

「おかあさん、とこちゃんどおしたんだろう??
 びょうきとかじゃないよね??」
「そんなに心配なら、隣なんだから行って聞いてきたら?
 でも道だけは気を付けてね~。」

二度目のとこちゃん家に、こんなきもちで向かうとは

細い道なのに車通りが激しいので渡るのがこわい

右見て左見て、わるみぽは渡った


「ごめんくださ~い、わるみぽともうします」

誰も出てこない…それだけでなんだか泣きそうです。

「と~こ~ちゃん!と~こ~ちゃん!!」
「と~こ~ちゃん!!!」


「はい、はい。」
「あっ」

出てきたのはとこちゃんのお母さん

「あら、わるみぽちゃん」
「あっ、あの…」
「とこちゃん??」

わるみぽはうなづいた。
なぜかもう、うまくおはなしができないのです。

「とこちゃんはもういないのよ。あらら聞いてない??」
「!!……。」

「高校卒業してバスガイドになるからって出ていってね。
 寮に入ったんだよ。」
「??……。」

「山田邦子がテレビでやってるでしょ??あれ」
「………………。」

「あ、の………いつ、かえってきますか?」
「最初は難しいみたいで、でも帰ってきたら伝えておくね。」

「さいしょにわかったら、わたしにもおしえてください!!」

ちからを振り絞ってお願いしました。


「あんなに仲良しでたくさん遊んだのに、
 だまっていなくなっちゃって。
 とこちゃん、ひどいよ。
 「ありがとう」も「さよなら」も言えないなんて…」


かなしくてさみしい。


わるみぽはガックリうつむきながらも
右見て左見て、車が通り過ぎるのを確認して
道を渡った。

振り向いて顔をあげた。
桃梨 上村美保子オフィシャルブログ-200812260151000.jpg

わるみぽのきもちとおなじように
とこちゃん家はぐにゃぐにゃにみえた。