モンスターカスタマーから学ぶ、高級店(美容室含む)と格安店とのカウンセリングの違いに関して | 船橋駅近く「Barber髪切り職人」

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 先日、カウンセリングに長時間割かざるを得ない、モンスターカスタマーがご来店されました。

 今回はこのモンスターカスタマーを例に取り上げ、高級店(美容室含む)と格安店のカウンセリングの違いに関して考慮したいと思います。

 

 

 

 

店主は青文字顧客は赤文字で表現しております。

 

 

「私、ここ初めてなんですよ!」

 と入ってくるなり、その方は言いました。

 

「そうですか、ありがとうございます」

 と店主は言い、お席にご案内致しました。

 

「今日はどうしますか?」

 と店主は尋ねました。

 

「私、今出張中でして、普段は丸刈りなんですけどね、ネットの口コミを見たらこちらのお店の評判が良かったので来てみたんですよ」

 この時点で、少し嫌な予感がしました。

 上手く言えないのですが、刑事の勘ならぬ床屋の勘とでも言うのでしょうか?

 こちらが髪型を問い訪ねている場合、通常はやりたい髪型を伝えると思うのですが、そうでは無く世間話で返す方は、おしゃべりをしに来ているケースが多いのです。

 細かい話の内容は失念してしまったのですが、思った通り、この方の一方的なおしゃべりは延々と続きました。

 仕方がないので、会話の適当なタイミングで店主は話を切らせて貰いました。

 

「あの……すいません。まずどんな髪型にするかお聞きしないと、作業が進められないんですよ」 

 

「あ、そうですよね。一言でいうと、ジョージ・クルーニー風なんですけどね」

 とその方。

 

「ジョージ・クルーニーってどんな頭でしたっけ?」

 と店主。

 

「ゆくゆくはツーブロックにして、上を伸ばして横に分けようと思ってるんですよ。とにかく横をさっぱりさせたいんです。こう、こんな感じでさっぱりと」

 と手振り身振りで、その方は言いました。

 ジョージ・クルーニーってそんな髪型だったかな?ツーブロックでは無かったような気がするし……。と?マークが沢山頭に浮かびました。

 今何枚か画像を検索しましたけど、やっぱりツーブロックの画像は一枚も見つかりませんね。ご参考までにこんな感じね。

 

 

 店主は再び問います。

「じゃああれですか?上は切らずに周りだけを刈る感じですかね?」

 

「こう、ツーブロックの部分に線が入っているような感じとかあるじゃないですか?もしくは上にポンっと髪が乗っている感じの、又は完全に上と下が段になっている感じの……」 

 技術者側はこの時、相手の話を聞きながらカットのイメージをしているんです。

 ぱっと見た目、ツーブロックにするには髪が短すぎたので、とりあえず周囲だけ刈り上げか刈り上げない感じで短くして上を伸ばす感じなのかな?とか、ツーブロックの線がとか、上が乗ってる感じとか言い出したので、ああ、そんな感じにしたいんだなと、イメージを膨らませながら聞いているとその方……。

 

「それは嫌なんですよ!」

 と……。

 この時点で、店主の頭の中の膨らんだイメージが完全に消し飛びました。

 

 やりたい髪型を聞いているのに、やりたくない髪型の話をされるとは思いませんでした。あまり無いパターンだったので、完全に脳細胞にダメージを負った気がします。

 この時点でカウンセリングに5分以上費やしています。ため息をつきたい気持ちを抑えながら店主は言いました。

 

「言われなければ、そんな髪型にはしませんよ。安心して下さい。で、上は伸ばすのは分かりましたけど、周りはどうします?刈り上げますか?刈り上げない感じにしますか?」

 刈り上げか刈り上げじゃないか。単純な二択です。

 店主の頭の中では、再び髪型の構築を始めました。

 とりあえず上は伸ばすって言うので決定だったので、とにかく後は刈り上げか刈り上げじゃないかを聞けば、何とかなるとこの時は思っていました。

 

「周りはさっぱりしていればそれで良いんですよ」

 

「いや、さっぱりしてるのは分かったんですが、どうさっぱりするか聞かないとやりようが無いじゃないですか?どうします?」

 

「うーん……じゃあ刈り上げで」

 

「何ミリとかは分かりますか?」

 

「私、髭の中央が6mmで、横の部分が3mmでいつもカットしているんですけどね……」

 この方のパターンなのでしょう。

 質問に対して直接答えるのでは無く、別方向から本題に入る感じなのでしょうね。

 ただ、この時の店主にはそんな事を考える余裕はありませんでした。髪型のイメージは再び吹っ飛び、髭のイメージに移り変わりました。

 再び頭の中も???マークだらけです。

 

「いや、うちは髭は同じ長さのバリカンで揃えるだけで、そう言ったデザインの髭カットはして無いんですよ」

 段々と頭がおかしくなって来ました。

 パッパッと話が切り替わるのに、付いていけない店主が居ました。

 

「いや、だからですね。髭と繋げて欲しいんですよ」

 

「繋げるとは?」

 

「だから横の髭が3mmなので、3mmで刈り上げて欲しいんです」

 

「……」

 いや、だったら最初から3mmって素直に言ってくれよ……。髭の話は今してないし……。と思いましたが、口には出しませんでした。

 

「じゃあ3mmで刈り上げて良いんですね。上はツーブロックで伸ばすって事だったので、刈り上げはあまり高く無い方が良いですかね?低めにしますか?」

 と店主。

 

「あ、じゃあもうツーブロックは忘れてください」

 

「は?」

 

「GIにしましょう!GIに!」

 

 店主完全にパニック状態です。

 ジョージ・クルーニーどこ行ったのよ?(苦笑)

 まあ、でも仕事ですからね。まだまだ頑張って付き合いますよ。

 

「じゃあ、ツーブロックは完全に無しにして、GIにするんですね?周囲は3mmで」

 と店主念押しです。

 この手のゴールポストが移動するタイプの客って、刈り始めてから急に方向転換する場合がほとんどなんです。

 なので念押ししないと、後からやっぱりこれはやめて、こうしましょうと言い出すのは経験上分かり切っていたので、店主は少し強い口調で言いました。

 

「じゃああれだ、ソフトモヒカンにしましょう!ソフトモヒカンで!」

 

 この時点で、ぷつっと頭の中で何かが切れました。

 ジョージ・クルーニーからの、ツーブロックからの、GIからのソフモヒ……。コロコロコロコロと、移り変わる髪型イメージ。どんだけイメージが出来てないんだよ……。

 耐えかねて店主はこう言いました。

 

「お客さん……、あのですね、髪型のイメージが出来てない状態でカットすると、結果思ったような仕上がりにならなくて、失敗するケースがほとんどなんですよ。なので、一旦自宅に戻って、きちんとイメージが決まってからもう一度来て下さい」

 

「じゃあ、ちょっと待って」

 とこの方、スマホをポケットから取り出し、検索し始めました。

 これだけイメージがブレブレの方が、すぐに希望の髪型が見つかるわけがありません。

 彼のもたもたした指の動きを見ている内に、店主はこのままだと先の見えないトンネルに足を突っ込む事になるなと、心の底から得体の知れない恐怖を感じました。

 とりあえずこの方は一旦帰すのが無難だ。店主はそう判断しました。

 

「いや、すいません。うちの店カウンセリングが始まってから、やりたい髪型を探すのはお断りしてるんですよ」

 と店主が言うも、全くこちらの話を聞かずに、スマホをいじり続ける客。

 

「すいません。僕の話聞いてます?申し訳無いのですが、一旦ご自宅にお戻りになって、そこでゆっくりとやりたい髪型を探した方が良いですよ」

 と、何度か促した後、やっと席を立ってくれました。

 

 ここで、店主の悪い癖が出てしまいました。

 お役に立てず申し訳ありませんでした。と頭を下げて丁重にお断りすれば丸く収まる所を、つい余計な一言をいってしまいました。

(´;ω;`)

 

 

 

 

 

「ジョージ・クルーニーって言われても、普通分かりませんよ」

 

「だから今探そうとしてたんじゃんか!」

 やや怒りながら、その方は言い放ちました。

 

※かっこ内は店主の心の声です。

(いやいやいや、後ろからのぞき込んでいたけど、ジョージ・クルーニーなんて検索してなかったよ。)

 

「え?あ……」

 と返答に詰まる店主。

 

「今ここでジョージ・クルーニー探したら駄目なの?」

 

「……いや、イメージがぶれぶれだったじゃ無いですか?なので、一旦ご自宅に戻られてゆっくりとイメージを固めてからの方が良いと僕は思いますよ」

(と言うか、最初からジョージ・クルーニーを検索してたら済む話だったし……あの長いやり取りは一体……)

 

 

「私は最初からジョージ・クルーニーって言ってたよ!」

 

 

(いやいやいやいや、そこからツーブロック→GI→ソフモヒに変化していったじゃんか!?)

 

「あ、分かった。私をやりたくないんだな?そうだろ?やりたくないんだろ?」

 店主を指さしながらまくし立てる客。

 

 当店のような格安店では、カウンセリングに時間をあまりかけられない事。

 そう言った無駄な時間を省くことによって格安なお値段を実現できている事などを、上手く伝えようと考えているうちに、お客さん、怒って帰ってしまいました。

 

 この方がお帰りになった後、店主しばらく放心状態でした。

 かなり精神が削られましたね。真っ白な灰になりましたよ。

 

 

 

 

 さて、本題に移ります。

 この方は極端な方で、ここまで酷いと完全にモンスターカスタマーなのですが、高級店(美容室含む)と格安店を、同じ髪を切る所だと思ってる方って実は凄く多いんです。

 

 

格安店は何故、値段を安く提供出来るのか?

 

 それはなるべく無駄な時間を割く事によって、カット全体の時間を削る事による企業努力の結果なのだと思います。

 カウンセリングを短く済ます、カット中の会話を控えて仕事に集中する、トニック・マッサージの簡略化等々。

 

 逆に高級店や美容室なんかは分かりやすい。

 カウンセリングは丁寧に、5分~10分以上かけて、ヘアーカタログなんかを一緒に見ながら、どうします?こうします?と長いやり取りをする。カット中も色々とおしゃべりしてカットに時間をかける。

 マッサージに時間をかけたり、施術後にお茶やコーヒーを提供する等。

 無駄な時間を無駄とは考えずに、それをサービスの一環と捉えて提供する。そしてその提供に見合った料金を頂戴しているわけなのです。

 

 つまり、高級店や美容室ではカウンセリング料金を取られているんです。なのでカット料金自体が4000円以上するわけです。

 格安店。カット専門店なんかだと、大体カット料金は1300円程度。当店では1500円です。

 

 高級店と格安店。

 料金が全く違うのに、同じカウンセリングが出来ると思いますか?

 お客様は神様なので、同じようにやって当然ですか?

 

 

 店主はこう思います。

 高級店や美容室に行くのなら、ノープランで行っても良いと思います。スタッフとヘアースタイルに関して長時間やり取りするのもありでしょう。

 ですが格安店に行く場合には、それではいけません。

 

 あらかじめやりたい髪型のイメージを固めておく、例に挙げた方なら、ジョージ・クルーニーの画像を予めダウンロードしておいてそれを見せる等の、利用する側にもそれなりのマナーや下準備が必要なのです。

 

 髪型って技術者だけが作る物では無いと思うんです。

 技術者と顧客の両方で作り上げる物です。

 

 技術者も自分の技術の押し付けでは駄目ですし、顧客は顧客でカットしやすいように協力する事によって、両者で最高の髪型を構築していく物だと店主は思います。

 

 カウンセリングもそう。

 長々とあーだこーだと、スタッフと長話をしたい方は、高級店や美容室に行けば良いのです。向こうはその分の料金を頂戴しているのですから、きちんと対応してくれます。と言うかむしろそうした方が良いです。

 でも格安店では、それは無理です。

 

 まず無い話ではありますが、もしも全てのお客様が例にあげたモンスターカスタマーだとすると、カウンセリング1人につき20分かかるとして、10人のご来店で200分の時間が余計にかかってしまうわけです。

 約3時間。たったの10人で実に営業時間の3分の1がカウンセリングに費やされる訳です。

 現実的に考えて、こんな客ばかりでは、薄利多売の営業を続けて行く事は困難なのは言うまでも無いでしょう。

 

 

 有難い事に、現在髪切り職人では、ほとんどのお客様がカウンセリングにご協力下さっています。

 ただ一定数、例に挙げたモンスターカスタマーのような方は時折いらっしゃいます。(ここまで酷いのは中々いませんが……)

 この手の方は、大体が新規客なので、リピーターになる事はほとんどありませんけどね。

 

 最後に一言。

 こういった記事を書くと、モンスターカスタマーには全く響かずに、床屋リテラシーのある常連客が気にしてしまう悪循環が生じるんです。

 

 店主の記事をお読みになって、え?じゃあ私のカウンセリングの仕方は悪かったのかな?どうしよう?今までちゃんと言えてたかな?店主に迷惑を掛けていたんじゃないか?こんな風にお考えの読者の方は、大丈夫です。あなたは全く問題の無いお客様です。これからも安心してご来店下さい。

 

 繰り返し書いておきますが、この手のモンスターカスタマーは、全員新規客でリピーター率0%です。例に挙げた方と同じく、一旦帰って再考してもらう場合がほとんどですが、再び来店する方は皆無です。

 何度かご来店されているお客様なら、なんの問題も無くカウンセリング出来ているって事になりますので、問題ありません。これからも安心してご来店して下さいねラブラブ

 

 

 

 さて本日は、モンスターカスタマーから学ぶ、高級店(美容室含む)と格安店とのカウンセリングの違いに関して考察する事が出来ました。

 この記事をお読みになって、高級店と格安店は、カウンセリングにかけられる時間が違うんだって事を分かっていただけたら、これ幸いです。