HERE , THERE AND EVERYWHERE 6 | BEAT

BEAT

ENDLESS FIGHTER

「彼女との一番の想い出は?」


「全てさ。彼女と過ごしたこと全てが大切な想い出さ」


「そうか」


「一緒に食べたもの。たいしたものじゃなくても、最高のごちそうだった」


「誰と一緒に食べるかが大事、か」


「そう。あれ以上に楽しくておいしい食事はそれ以後、無い」


「そうか」


「一緒に行った場所。どんなに下らない場所でも最高に楽しかった」


「一番好きな場所は、彼女の隣」


「そう」


「うん」


「僕の全てだった」


「彼女に会うまでにも、楽しいことはあったろう」


「いや、無かった。何一つ」


「本当に?」


「本当に」


「僕は彼女に会って、初めて生き始めたんだ」


「それまでのことは?」


「いつもろくな事がなかった。いじめにもあっていた」


「そうか・・・」


「僕はただ、いじめられているだけじゃなかった。人を憎みきっていた」


「憎みきる?」


「一人ずつ、闇討ちにしていった」


「・・・そうか」


「僕をいじめていた奴らが、日に日に学校に来なくなる」


「お前が闇討ちをするから」


「殺しても良いと思っていた。こんな奴らのために自分が死ぬのが納得できなかった」


「だから手加減なしで殴りつけた」


「奴らはクズだ。いじめておいて、相手の苦しみを理解していない」


「(無言)」


「何一つ後悔はしていない。ただ、おかげで人間を信じなくなった」


「悪い、出会いしかなかったんだな。良い出会いも消し去ってしまう」


「・・・そうなのかも知れない。でも、彼女との出会いがそれを消してくれた」


「幸せを初めて感じた」


「世界中の人が全員幸せになればいい、とさえも思った」


「憎みきっていたお前が」


「憎みきっていた僕が」


「彼女のおかげか」


「そうだ」


「なのに失ってしまった。お前の生命線だった」


「そうだ」





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