皆さん、今年のクリスマスは何を食べられますか?
ちなみ我が家は、おそらく今年も、定番の “チキン” “ピザ” そして締めは、“クリスマスケーキ” かと・・・
そんな、クリスマス料理の定番である “チキン” ですが、
元々は “七面鳥の肉” だったのは有名な話ですよね。
そこで、今回は
1.日本のクリスマス料理の歴史
2.なぜ、クリスマスに、“七面鳥” を食べるようになったのか?
3.世界のクリスマス料理
について、深掘りしていきます。
1.日本のクリスマス料理の歴史
ーなぜ、“チキン” “ピザ” “クリスマスケーキ” なのか?
ー
①チキン![]()
日本にクリスマス “チキン” の文化が伝わったのは、やはりアメリカの “七面鳥” を “鶏肉” で代用したのが始まりだそうです。
【クリスマスチキンの経緯】
明治時代:~クリスマスの伝来と七面鳥の壁~
明治時代以降、クリスマスが日本に伝わり西洋文化として紹介される。
欧米の定番料理「ローストターキー(七面鳥の丸焼き)」が紹介されるが、そもそも日本ではあまり飼育しておらず、高額で入手困難だった。
かつ、肉質・食感・味覚等が日本人の舌にも合わず、日本で広く飼育されている “鶏肉(チキン)” に代わって食べられるようになる。
1970年代:~KFCの登場とキャンペーン~
1970年に日本初上陸したKFC(ケンタッキーフライドチキン)が、アメリカ文化の象徴として急速に広まる。
ある時、日本在住の外国人が「七面鳥の代わりにKFCのチキンを食べに来た」と来店したことがヒントとなる。
これを受け、KFCが1974年頃から「クリスマスにはケンタッキー」というキャンペーンを展開。このキャンペーンが大成功を収め、「クリスマス = フライドチキン」という図式が日本で確立される。
②ピザ![]()
【ピザ伝来の経緯】
初期(1940年代):
日本にピザが伝わったのは、第二次世界大戦中の1944年頃、神戸のイタリアンレストランで提供されたのが始まりという説が有力とされる。
専門店登場(1950年代):
1954年に六本木で日本初のピザ専門店「ニコラス」が開店し、最先端の若者文化として人気を集めた。
家庭への普及(1960年代〜):
1960年代にはオーブントースターの普及とともに、冷凍ピザやピザトーストが家庭で親しまれるようになり、「西洋風お好み焼き」とも呼ばれた。
宅配ピザの登場(1980年代):
1985年にドミノ・ピザが日本初上陸し、大きなサイズのピザが家庭でも手軽に楽しめるようになった。
イタリアンブーム(1990年代):
“イタメシ” ブームが起こり、本格的なナポリピッツァも紹介され、さらに日本独自の進化を遂げた「テリヤキチキン」等の日本風ピザも生まれた。
【日本のピザの特徴】
アメリカ経由で伝わったため、当初はボリュームのあるアメリカンスタイル “シカゴ(風)ピザ” が主流でした。
照り焼きチキン、マヨネーズ、牛肉等、日本独自の具材が使われるようになり、家庭でも餃子の皮やフライパンで手軽に作られるようになった。
【クリスマスとピザの関連性】
日本独自の「手軽なパーティーメニュー」としての定着にあり、“七面鳥” の代替として “チキン” が食べられるようになった流れで、利便性の高い宅配ピザが年末の定番となった。
③クリスマスケーキ![]()
日本のクリスマスケーキの歴史は、
【クリスマスケーキ普及の経緯】
明治時代(1910年~):
不二家が創業時に「
大正時代(1922年頃~):
不二家創業者がアメリカで見た「
戦後~高度経済成長期(1950年代~):
終戦後、
現代:
イチゴと生クリームのショートケーキが定番となり、
近年では、ショートケーキだけでなくチョコレートやチーズ、ミルクレープやアイスケーキ等、色々なホールケーキがクリスマスケーキとして登場している。
【なぜ日本独自の文化になったのか?】
「紅白」の縁起の良さ:
赤いイチゴと白いクリームの色合いが、
メーカーの努力:
不二家等の老舗が「クリスマスにはケーキを」
欧米との違い:
2.なぜ、クリスマスに、“七面鳥” を食べるようになったのか?
諸説あるそうで、
①アメリカ起源説(17世紀頃)![]()
②イギリス起源説( 〃 )![]()
①アメリカ起源説
アメリカの祝日、感謝祭(Thanksgiving Day)の起源から来ているとされる。
1620年、イギリスの入植者グループ※ “ピルグリム” がアメリカ・マサチューセッツ州にあるイギリスの植民地(プリマス)に移住するが、この年の冬の寒さが非常に厳しく、イギリスから持ってきた作物が育たず、凍死や餓死等、多くの入植者が亡くなった。
※ピルグリム・・・イギリス国教会分離派で、イギリスからアメリカに渡った清教徒。巡礼始祖の意味。
⇒ 当時この地にアメリカ先住民(ワンパノアグ族)が住んでおり、困窮極まった入植者たちに同情し、七面鳥の肉やトウモロコシ(のちに育て方)や衣服まで提供したとのいわれる。
⇒ そのおかげで入植者たちは、翌年の秋には無事収穫を迎え、生き延びることができたといわれる。
⇒ 入植者たちは、ワンパノアグ族への感謝の意を込めて食事に招待し、共にごちそうを食べたのが “感謝祭” の始まりであり、その際に供されたのが、“七面鳥” だった。
⇒ それ以来 “七面鳥” は、お祝いに欠かせない肉となり、感謝祭だけでなく、クリスマス、結婚式等、大勢集まるパーティに供されることになった。
⇒ この習慣がヨーロッパにも伝わり、クリスマスの定番料理となったといわれる。が、イギリスで “七面鳥” を食べる習慣が始まったのは、16世紀(1526年)にアメリカから数羽の七面鳥を輸入したことに始まるとされており、年代にズレがあるため、真偽は不明。
⇒ また、現在の丸焼き(ロースト)風はイギリスが発祥とされ、アメリカに※逆輸入されたともいわれる。
※逆輸入されたと言われた根拠・・・1843年に出版された、イギリスの作家 チャールズ・ディケンズの『クリスマスキャロル』 に“七面鳥のロースト” が登場。アメリカでもこの小説が大人気となり、定番メニューとなった。
②イギリス起源説
クリスマス(キリストの生誕)を祝う日は元々違う祭事が起源で、古代ローマ時代の12月、農耕の神に翌年の豊作を願う「農神祭(サートゥルナーリア)」が行われ、のちにクリスマスへ転じたと言われている。
⇒ 本来の農神祭では12月17日からの7日間、奴隷にも自由が与えられ、身分の違いを忘れて楽しむ祭として親しまれ、4世紀にキリスト教が布教の一環として、12月25日をキリスト生誕を祝う日に制定される。
⇒ 農神祭の頃より、飲酒によるどんちゃん騒ぎをする日であり、酒がなくなればそれを求めて他人の家に不法侵入、店舗の略奪等が多発。酒に酔った者たちが教会を襲撃したり、裁判沙汰になった事件も多く、また食糧問題も深刻だった。
⇒ 13世紀(1213年)イングランドのジョン王時代の宮廷では、なんと、ワイン 6500ℓ、豚 400頭、ニシン 1万5千匹、ウナギ 1万匹といった量をクリスマスで消費したという記録まで残っている。
⇒ クリスマスによる多量の飲食物の廃棄処分(今でいうフードロス)が散見。14世紀になって、イングランド王(エドワード三世)がクリスマスに飲食する量を制限する法律を作ることになる。
⇒ 16世紀に入り、イギリスではどんちゃん騒ぎを嫌う※ “プロテスタント” の人たちの影響が大きくなり、イギリス国教会の大主教 トマス・クランマーが、牛やにわとりは、牛乳や卵等が取れる貴重な家畜であり、クリスマスに大量に屠殺するのは問題であるとして、クリスマスに供する食材を限定することを発令する。
※プロテスタント・・・別名 “新教” マルティン・ルターの宗教改革から成立したキリスト教宗派の総称。
⇒ そこで提案されたのが、食肉用途のみ「七面鳥、鶴、白鳥」のうちどれをクリスマス料理として使用してよいかを議論。この内、鶴や白鳥は肉の繊維質が非常に多く、肉質も固い、食べ過ぎると消化不良を引き起こしてしまうという問題が発覚。残る選択肢は七面鳥のみとなり、体長もにわとりよりも大きいため、一羽用意しておけばクリスマス料理はそれで十分という習慣が広まることになったといわれる。
【なぜ七面鳥とよばれるのか?】
七面鳥という和名は、オスの首や顔の皮膚が興奮した時などに赤、青、紫など様々な色に変化し、まるで七つの顔(面)を持っているように見えることに由来される。この色の変化は非常に特徴的で、感情や状態によってめまぐるしく変わる様子が「七面」という言葉で表現された。
ちなみに、英語名の「ターキー (turkey)」は、ヨーロッパに輸入された経緯による誤解から来ているとされる。元々イギリスには「ホロホロ鳥」がトルコ経由で輸入されており、「ターキーバード」と呼ばれていた。後にアメリカ大陸から七面鳥が持ち込まれた際、ホロホロ鳥とよく似ていたため、同じく「ターキー」と呼ばれるようになったとされている。
3.世界のクリスマス料理
■ イギリス:ローストビーフと “炎のスイーツ” クリスマスプディング
・イギリスでは現在、七面鳥よりも “ローストビーフ” がポピュラーである。
・名物スイーツとして、ドライフルーツたっぷりの蒸しケーキ、 “ クリスマスプディング” がある。 洋酒に漬けたドライフルーツやスパイスをぎっしり詰めた生地を蒸して作り、数か月前から仕込む。当日はブランデーをかけて “フランベ” して盛り上がるとのこと。
・その他に、クリスマスに欠かせない伝統的な小型パイの “ミンスパイ” がある。
(レーズン、オレンジピール等の)ドライフルーツ、ナッツ、(シナモン、ナツメグ等の)スパイス、りんご等を洋酒(ブランデー)で漬け込んだ濃厚なフィリング「ミンスミート」を、サクサクのパイ生地で包んで焼いたもの。
元々はひき肉が入って現代では現代では甘いデザートパイとして親しまれており、クリスマスの時期に食べると幸せが訪れるという言い伝えがある。
■ フランス:丸太のケーキ “ブッシュ・ド・ノエル”![]()
・フランスのクリスマススイーツといえば、丸太型ケーキの “ブッシュ・ド・ノエル”
ただし本場では、チョコやマロンよりも、メレンゲで作った “小さなキノコ” を飾るのが伝統的なスタイルである。
・その他に、伝統的な焼き菓子の “パンデピス” 「スパイスのパン」を意味し、その名の通り様々なスパイスと蜂蜜をたっぷり使ったケーキのようなお菓子である。
フランスでは特に冬の風物詩として、クリスマスシーズンに親しまれている。
・メイン料理では、牛や鶏のほか、獲れたてのウサギ(ラパン)や鹿等、“ジビエ料理” もクリスマスのごちそうとして登場する。
■ ドイツ:“シュトーレン” を “少しずつ食べ進める” 文化![]()
・ドイツのクリスマスを代表するお菓子が “シュトーレン”
粉砂糖が雪のようにかかったドライフルーツ入りのパン菓子で、クリスマス当日に食べきるのではなく、「12月に入ってから少しずつ食べていく」という習慣がある。
・ガチョウのロースト(クリスマスグース)もごちそうとして有名。
■ イタリア:ウナギの “カピトーネ” から “パネトーネ” まで![]()
・イタリア・ナポリのクリスマス料理では、 ウナギを食べる風習があり、“カピトーネ” と呼ばれる。
産卵前のメスの大ウナギを月桂樹と一緒に赤ワインソースでグリルし、“厄払い”として食べられる。
・シチリアやナポリ等の南イタリアの家庭でよく作られ、クリスマスのメインディッシュの一つ、“カンネッローニ” がある。
ひき肉やほうれん草とリコッタチーズなどをパスタに詰めて焼く定番のオーブン料理。特に家族の集まりで楽しむ料理として愛されている。
・スイーツでは、ミラノ発祥のドーム型発酵菓子の “パネトーネ” や、ヴェローナ発祥の伝統的なクリスマス焼き菓子で、「黄金のパン」とも呼ばれる “パンドーロ” が定番で、ドイツの “シュトーレン” と同じく、クリスマスまで少しずつ食べるのが伝統とされる。
■ 北欧(スウェーデン・フィンランドなど):豪華な “ユールボード”
北欧のクリスマスは“ユールボード” と呼ばれるブッフェ形式の料理。ニシンの酢漬け、サーモン、トナカイのソーセージ、豚肉のローストのユールシンカなどが並ぶ。
スウェーデン:クリスマスシーズンに食べられる、“ルッセカット”
サフランを使った黄色い菓子パンで、「ルシアの猫」という意味を持つ。
甘くてふんわりとした生地にサフランの香りがあり、12月13日のルシア祭の時期に食べられ、S字型に成形し中央にレーズンを乗せるのが特徴。
デンマーク:クリスマスの定番料理で伝統的なローストポーク、“フレスケスタイ”
国民食として親しまれている。最大の特徴は、皮付きの豚肉を使い、オーブンでじっくりと焼き上げて皮をパリパリ(カリカリ)に仕上げる点にある。
フィンランド:
・クリスマスの食卓に欠かせない豚肉の塊を塩漬けにして、低温でじっくり時間をかけて焼き上げた伝統的なメイン料理で “焼きハム(ヨウルキンック)”
パン粉やマスタード、クローブでデコレーションされ、数日間かけてスライスして食べられ、日本の年末年始の餅のように親しまれている。
・クリスマスに欠かせない、米や大麦、牛乳、クリーム、卵、(ナツメグ等の)香辛料で作る、甘みのある素朴な味わいのオーブン焼き料理で、“ポルッカナ・ラーティッコ”(ニンジン)と“ラントゥラ・ラーティッコ”(カブ)があり、肉料理の付け合わせとして、グラタンのように表面に焼き目がつくのが特徴。
・スイーツは、伝統的なクリスマスのパイ菓子の “ヨウルトルットゥ”
フィンランド語で「Joulu」が「クリスマス」、「torttu」が「タルト」を意味し、「クリスマスタルト」という意味になる。
星形のパイ生地の中心にジャムやドライフルーツを乗せて焼き上げ、粉砂糖を振るのが伝統的なスタイル。
・お米を牛乳でトロトロに煮込んだ、甘くて優しい味わいのミルク粥、“リーシプーロ”
朝食やデザートとして親しまれており、シナモンシュガーや溶かしバター、ベリーソース等をかけて食べ、特にクリスマスには、鍋にアーモンドを1粒隠し、それを当てた人に幸運が訪れるという伝統的な楽しみ方がある。
スウェーデンのブッフェ文化(スモーガスボード)が日本で “バイキング” 料理と呼ばれるようになった由来にもつながります。
■ カトリックの国々では「クリスマスイブは肉を食べない」
・チリやポーランドなどカトリックの多い国では、クリスマスイブは肉を避けるため魚料理が中心になる。
打って変わって、クリスマス当日になると、朝から肉料理を口にしてお祝いをするそうです。
・北欧ではちょうど旬を迎えるサーモン料理がよく食卓に並ぶ。
■ さいごに:クリスマス料理は「文化の鏡」
クリスマスの料理を見ていくと、
その国の歴史、宗教、季節、食文化がそのまま表れていますね。
・家族で丸ごとターキーを囲むアメリカ
・長く寝かせたスイーツで季節を祝うヨーロッパ
・魚を中心にするカトリックの地域
・そして、アメリカ文化を“日本流にアレンジ”したチキンとケーキ
クリスマスは、世界の食文化を知る絶好の季節でもあります。
今年はちょっとだけ国ごとの違いに思いを馳せながら、
クリスマスディナーを楽しんでみてはいかがでしょうか?
挿絵(画像)&カバー画像:「いらすとや」さん作 (ありがとうございます)

